表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

貮、少年はあり得ない現状に混乱する。

哀は病室で警察に事情聴取されていた。

「じゃあまず哀君。君が何故あの時間に学校にいたのか教えてもらおうか。下校時刻はとっくに過ぎていたはずだが?」

「はい。昨日は忘れ物をしてしまって、それを取りに学校に行きました。」

「何を忘れたんだい?」

「お守りです。白くて丸い石です。」

「これのことかな?」

そう言って刑事がポケットから取り出したのは白い石だった。

「...!...割れてしまったんですか」

がっかりして哀が言うと刑事は説明した。

「倒れている君の横にあったんだよ。その時にはもう割れていたよ。...しかし、この石はそんなに大事なものなのか?言っちゃあ悪いがこの石は価値のある宝石でもないし、言ってみればただの石ころだ。わざわざ取りに学校まで戻ったり、そこまでするほどの代物じゃないだろう。」

刑事は2つに割れてしまった石を哀に手渡した。

哀はその石をぎゅっと握った。

「この石は死んだ姉さんの唯一の形見なんです。」

刑事はしまったと思ったのか、

「それは悪いことを聞いたな。すまん、忘れてくれ。あー。じゃああの廊下で何が起きたのか教えて欲しい。」

そう言って話の軌道を元に戻した。

「すいません刑事さん。僕も混乱してて...」

哀は少し考えてそれから口を開いた。

するとずっとメモをとっていた部下の刑事が優しく言った。

「哀君。ゆっくり順を追って思い出してみよう。」

「...はい。昨日。僕は教室で忘れ物を取った後、妙に怖くなって廊下を一気に走ったんです。そしたら何かにぶつかってしまって倒れました。僕がぶつかったのは、どうやら人のようでした。」

すかさず刑事が口を挟む。

「その人の特徴は?」

すると哀の顔にありありと恐怖の色が浮かんだ。

「その人の顔は暗くてよくわからなかったけど、身長が高くて、男っぽくて包丁を持っていました。」

「それから?」

刑事が促すと哀はガタガタ震え始めた。石を握る力が強くなる。

「刑事さんは僕の言う事を信じてくれますか?」

刑事の2人は声を揃えて力強く頷いた。

「ああ、信じるぞ。」

「...その人は包丁で僕に斬りかかってきました。最初に左肩に包丁が入りました。そしてそのあと包丁が肩から抜けなくなって、その人は今度はのこぎりで僕の首を切り落とそうとしました。逃げたくても逃げられませんでした。それで首にのこぎりの感触がして...そして気付いたらここにいました。」

刑事の2人は哀の話が終わると、しばらく考えこんだ。

それから刑事の1人が口を開いた。

「哀君の話でおかしいことはまず哀君が今、怪我を負っていないこと、そして現場に足跡がないことだ。哀君の話が本当ならば...そろそろのはずだが?」

「そろそろ?」

哀が聞き返すのとほぼ同時に上司の刑事の携帯が鳴った。

「もしもし?...ああ、うむ、やっぱりそうか。連絡ありがとう。」

パチリと携帯をとじると刑事はポケットにしまった。

「たった今、現場にあった大量の血が孤愁哀のものであることが分かった。つまり、哀君の証言が事実であることが分かった。それはいいことなのだが...またあいつらか」

部下も言う。

「またあいつらですね。」

哀は自分の証言が事実であるならば、何で無傷なのだろうかとまた混乱し始めた。

「哀君。これで事情聴取は終わりだ。しばらくしたら今度は違う警察官がくるからよろしく。では、失礼。」

「ああ、はい。」

哀が返事をすると部下の刑事は一礼した。

そして2人の刑事は病室を去っていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ