想いの欠片
え〜、なんだか無理があった感がいなめませんιそれでも読んでやるって御方!あなたは神様です(ぇ)
パチパチ――木片の弾け散る音が闇にこだまし、冷たく、ビュウと肌に貼りつく風が男を包み込んだ。
男の名はフォウル――長身の背丈のてっぺんに有る青い長髪を尻尾のように束ね、ひたすらに目の前にある炎を見下ろしていた。
しかし、そのどこか少年のようなあどけなさを残したような顔には悲しみの色が浮かんでいた。
『大丈夫……夜が、包んでくれるさ。』
パチパチ――彼は炎に語りかけていた。
いや、赤く燃え盛る炎に包まれた棺に対して語りかけていたのだ。
棺の中には、彼の最愛の人間――ディアナが柔らかな微笑を浮かべたまま眠りについていた。二度と覚めない眠りは今、永遠の別れと変わる。
「今日は風が強いな。」
一人たたずむフォウルの背後に、若い男が語りかけた。宿場から持ってきたのか、両手に珈琲入りのカップを持っている。
『シアン……。』
フォウルは後から現われた男に視線を移す。
シアンと呼ばれた男は、炎に視線を軽く向けるがすぐにフォウルに視線を戻し、片手のカップを差し出しながら笑顔を見せた。
「なに辛気臭い面してんだよ、そんなじゃディアナに笑われるぞ?」
ディアナ――フォウルと共に旅をしていた彼の妹。不治の病で伏せていたが、今日の夕刻に容体が急変して天に召されたばかりだ。
『結局、守ってやれなかったな……。』
カップを受け取りながらも、フォウルの視線は炎に、いや、ディアナに向けられていた。
「治癒系魔法、魔法薬、試せるものは試した。他に、どうしようも……。」
同じように炎を見つめながらシアンは呟いた。
『わかってる、わかってるさ……。』
フォウルの頬をつたう涙が、カップの中の珈琲に波紋をたてる。
ゆらゆらと波紋が広がる、一つ、また一つ――
ディアナ――ぽつり、と零れた言葉は風の音に吸い込まれ、消えていった。
すると炎の中に一人の少女が現われた、金髪の可憐な少女は嬉しそうな笑みを浮かべている。
「――お兄ちゃん、ありがとう。」
『ディアナ!?』
急にびゅう、と風が強くなり。ディアナの姿は幻のように無散した。
ディアナの身体を天へと導く浄化の炎は、全てを灰と化し、自身の姿も消えていく。
再び強風――一陣の風が通った後には炎を呼び出した陣だけが残されていた。
「終わったな……。」 シアンは残された陣を見つめながらフォウルの肩をポンと叩いた。
『ディアナは、天に上れたと思うか?』
あぁ、そう言いながらシアンは空を見上げる。
「あの空の上で俺たちを見ているさ。」
『そう、だよな……。』
同じように空を見上げるフォウルの顔に悲しみの後は無かった。