第二決戦:漆黒と純白は美風に舞う
「しりとりの“り”とは、実に面白いお言葉ですわ。“り”から始まる高貴なお言葉は多々ございますが…わたくしの選択は───
【リュミエール】
光を意味するお言葉ですわ!
この曇天に包まれた暗く醜い争い、そこに差し込んだ光が如きこのわたくしが!見事制してご覧にいれましょう!
さあ、次は貴女のターンですわよ!リール様!」
『ふふ、リュミエールですか…それは貴女様ではなくわたくしにこそ相応しいお言葉ではございませんこと?
民には慕われず粗暴な行いが目立ち、まして国をも背負うこの決闘の場にそのような先の見えぬ夜闇を思わせる漆黒のドレスでいらっしゃるような貴女様になど、勿体ないお言葉でしてよ。
…まあいいですわ。この決闘が終わればどちらが光──すなわち“最高貴お嬢様“であるか、痛いほどお分かりになることでしょう。
せいぜい持ちこたえてくださいね。早く終わってしまっては退屈ですもの。
“る”でしたわね。
わたくしが最高貴お嬢様であることの証明の第一歩、華麗にキメさせていただきますわ。
【ルビー】
なんとも熱烈かつ美しく、痛いまでの強さと圧倒的な高貴さを放つ宝石。
見るもの全ての目に、脳に焼き付いて離そうとしないその深紅の輝き。
お嬢様のあるべき姿を体現したかのようなこの宝石こそ、わたくしの第一歩として申し分ないものですわ。
次は再び貴女様のターンですわよ。お嬢様おしりとりでは最後が長音の場合、そのひとつ前の文字で再開するルール。つまり“び”。
貴女様がこの濁音をいかにしてお返事になるか、見ものですわ。』
「…!なんて挑発的なお言葉の数々なのかしら!
貴女のような根の真っ黒い御方が“天降”などと、どうやら世の民衆のご慧眼はたいへん曇っていらっしゃるようですのね。
表面だけを見てその内、ウロコを隔てた内部の肉、ましては骨まで見ようとしないからこそ愚民なのですわ!
貴女のそのご様子から察するに、これまで散々愚民共に持ち上げられてきたのでしょうね。でもごめんなさいまし。その自身、慢心、驕り高ぶり、ひいては立場さえも!このわたくしが塵も残さず打ち砕いてさしあげましょう!
せいぜい持ちこたえてください。ですって?勘違いもいいとこですわ。勝利を手にし、最高貴お嬢様であると証明するのはこのわたくし、負けて地を這うのは貴女でしてよ!リール・ティントテール!
“び”、難しく思われることの多い濁音のお言葉ですが…わたくしからしたら紅茶を入れるよりも容易いことですわ。
わたくしのお返事は───
【美酒】
一見お嬢様らしくないお言葉に感じられますが、その実ただの酒ではなく“美”酒。汚らしい無頼漢などが飲み呑まれるような低俗な酒ではございませんわ。
わたくしのような高貴な者のみが嗜むことが許される至高の一口。
古来よりお嬢様というものは、美酒の美しくも妖艶な色と決して強くは無いものの微に、けれど確実に鼻先を撫でる香りと共に夜会の場さえ我がモノにしてきたのですわ。
そしてこの決戦の終結と共にわたくしがいただくのもまた美酒!
勝利の美酒に酔うのは貴女ではなく最高貴なるこのわたくしなのですわ!オーッホッホッホッホッホ!!!」
『美酒…ですか……なかなかうまいところに落ち着きなさいましたね。ただ、それだけで勝った気になっているようであれば笑止千万。笑いものになって然るべきですわ。 たしかに見事な濁音のお返事、そして拗音による締め、そして何よりも優先されるべき高貴かつ美しいお言葉、たしかに見事ですわ。わたくしがいなければ間違いなく世界一のお嬢様と言って差し支えなかったでしょう。
わたくしがいなければですが。
それほどのお嬢様力、お嬢様パワーを持ってしても越えられぬ絶対的な“壁”があるということ、大海原を知らぬまま身を投げた可哀想な貴女様に刻み込んで差し上げますわ。
わたくしのお返事は───
【珠玉】
真珠や宝石、また非常に優れているものや美しいものを指すお言葉ですわね。
真珠や宝石は言うまでもなく美しく高貴な存在。そしてさらにわたくしを表するかのように付随する非常に優れているもの、美しいものというお言葉の意味。
このわたくしが使うに相応しいとても素晴らしいお言葉だとはおもいませんこと?』
リールは微笑む
ディールの目にはその笑顔は底の見えぬ奈落であるかのように不気味にうつった
切って落とされた決戦の火蓋は確実に周囲を巻き込んで広がっている
一陣の風がディールの髪を後方へなびかせる




