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013_粉吹いてるとか言わないで

「アリシアー!」


 ベッドに倒れ込んだ私に覆い被さるように、リシェルも飛んできた。


「あははは! なに、もう! かわいー!」


 大笑いして私のほっぺたをぐにぐにとなで回す。


「ぷっ……くっ……くくっ……」


 レオンも自分の腕に顔を埋めて、堪えきれない笑いを抑えようとしていた。

 私はというと、なぜか笑いが取れたことで気持ちが落ち着き、顔のほてりもなくなった。


 なんだったんだろうな、さっきの。

 なんか、イケメンと会うと出る発作みたいな疾患かな。


「ごきげんよう。アリシア・シルベーヌですわ。

 この度はお目にかかれまして、光栄に存じます」


 私は気を取り直し、ベッドから立ち上がって深々と頭を下げた。


「くっ……ぷくっ……」


 もう笑わなくて良いのよ、レオン。


「アリシア。この際、気になってること、聞いて見たら?」


 ベッドに腰掛けて、リシェルは私を肘でつついた。


「……あの夜のこと、とか」


「んな!? なん、でございましゅか!?」


 やめて。疾患が出る。


「そ、そうだぞ、べ、別に話すことなど……」


 レオンまで顔を赤らめて顔を横に向けた。

 首の後ろに手をあてる。絵になる。でも今はやめて。


「そっ、そんなことより、証拠、証拠探さなきゃ!

 セレーナが私に一服盛った、証拠を探しに来たんだから!」


 リシェルはいたずら子っぽい笑みを浮かべた。


「わたくしも、そう言ったつもりよ……?」


 あー、もう! からかうなあー!


「ふむ……なるほど」


 レオンはなにか納得した顔でうなづいた。


「それでありんこに関して分かることないか、聞いてきたのだな」


 レオンの言葉に、リシェルは軽くうなづいた。


「来てくれてありがとね、レオたん」


 ……二人は一体、どんな関係なんだろう?

 いくら外国の賓客にしても、一国の王太子に対してちょっと距離が近すぎやしないか?


 そんな私の疑念は、レオンがおもむろにテーブルに置いたものを見て、ぶっとんだ。


「ちょうど、これの処理にも困っていたのでな」


「……うおぉ!?」


 私のドレス! レオンが持ってたの!?


「あとこれも」


 乙女のパンティを! 事も無げに取り出すなあぁ!


「んももちょっきり!?」


 私はレオンの手からパンティを奪い、そのまま全てを覆い隠すようにドレスの上に突っ伏した。


「あの日、残ったありんこの衣類をどうしたものか、困っておってな。

 一旦、王家の宝物庫にしまっておいたのだが……」


 人のパンティを宝にするなあ!


「あんな古いものばかりのところでは、いつかダメになってしまうんじゃないかと思ってな」


 あ、それでアンタ、部屋に来たとき埃っぽかったのか!


「もう! すぐに洗わなきゃ! いつかじゃなくて、すぐダメになっちゃうんだから!

 ほらそこ。シミになってる!」


 見ないでリシェル!


「フーッ!」


 恥ずかしさのあまり、威嚇する。


「そうなのだ。ちょっと青い粉が吹いてるところもあって……」


 レオン! ああもう! 忘れろぉぉぉ!


 ……って、青い?


 私は顔を上げて、うすピンクのドレスを見回した。

 たしかに、胸のところ、濃い赤紫の大きなシミが出来ている。

 多分、舞踏会で倒れたときに飲んだお酒……たしか、赤ワイン……が作ったシミなんだろうけど……


「青い、粉……?」


 シミの上、全面がうっすら青い粉をまぶしたみたいになっている。


「赤ワインって……乾いてもこうなんないわよね……?」


「多分……」


 リシェルは自信なさげにうなづいた。


「……セレーナを処するか」


「ちょっぃ! 極端!?」


「冗談だ」


 ホントに可能な権力持ってる人は、そんな冗談言っちゃダメよ!


 その時、この控え室のドアがノックされた。


「失礼いたします」


 ノックのあと部屋に入ってきたのは、リシェルの魅力をエサに調査を依頼した給仕係だった。


「こちらにおいでだと、うかがったので……のあっぷ!?」


 突然の王太子の登場にのけぞった。


 うん、まあ、そうだよね。


「いいから。なにか分かったことある?」


 そんなことより私は、給仕係の両手に持ったワイングラスが気になった。


「あ……はい」


 恐る恐る、給仕係はテーブルに2つのワイングラスを置いた。


「いろいろ聞いてまわったのですが……

 あの日、セレーナ・ルマンド伯爵令嬢から、奇妙な指定を受けて、ワインをお出した者がおりました」


「それが、このグラス?」


 私はその片方を手に取って、光にすかした。


 なんか、色、ついてる……?


 ワイングラスの上の方は透明だが、下にかけてだんだん赤色が濃くなっている。

 

「……赤いわね」


 このワイングラス自体は、そこまで珍しくないもののような気はする。

 多分、赤ワインの色が綺麗に映えるようになってるんだろう。知らんけど。


 手を差し出したリシェルにワイングラスを手渡し、私はもう片方のグラスを手に取った。


「……こっちは、青い……?」


 同じようなグラスだが、こっちのグラスは青い。


「赤と青の2色のグラスで、赤ワインを提供するように、と指定され、だいぶ苦労してこのグラスを探しあてた者がおりました」


 それはたしかに奇妙な注文だ。

 なにか、まるで片方だけ違う色になるお酒を誤魔化そうとするような……

 私はドレスに残った、青い粉に目を向けた。


「その粉、調べさせよう」


 同じ結論に至ったのだろう。レオンもドレスを見ていた。


「……冗談では済まなくなったな」


 ポツリと、悲しそうな目をしてつぶやいた。


「……」


 私は胸がギュッとなった。

 これは、本当に……幼なじみの悪行の証拠になっちゃうんじゃないか?


 そうに違いないと思っていたし、その証拠を探しに来たんだけど……

 いざ、本当に見つけてしまうと……息苦しい。


 少しの間、誰も口を開かなかった。


「……と、ところで……」


 重苦しい雰囲気に気圧されながらも、給仕係は声をあげた。


「その……なんか見つかれば、その、あの……」


 チラチラとリシェルを見ている。

 この雰囲気の中、要求を押し通そうとするなんて、根性のあるヤツだ。


「……なんの話かしら?」


「そんな!?」


「冗談よ」


 私は仕方なく、リシェルに耳打ちした。


「……え?」


 リシェルは驚きの声をあげてから、呆れ顔でため息をついた。

 そして、やや納得していない顔をしながら、給仕係の前に立った。

 小さくため息。

 そして意を決したように両手を軽く握って、片方を頬、もう片方を額まで上げた


「ありがと、にゃん」


「……」


 リシェルの猫ポーズを見て、給仕係はうっとりした表情を浮かべたあと落胆を見せ一瞬怒りを表してから、もう一度リシェルを見て最終的にニヤけた。


「またのご利用をお待ちしております」


 なんの商売を始めたんだ、お前は。




これは、アリシアの恋の物語です。

証拠が集まってきて、そんな思いはぶっとんでしまっていますが、恋の物語です。

だれがなんと言おうと、恋の物語です。


次回は、とうとうセレーナへの逆襲が始まります。


多分、恋の物語です。

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