それでも私はリューズを回すよ
こんにちは!
今回は初めての短編小説を書かせて頂きました。
本文に出てくる"リューズ"というのは腕時計のあの回す所です。(なんて言ったらいいのかな…笑)
読んで頂けたら嬉しいです。
お楽しみください!
チーン…
仏壇の音が部屋に鳴り響く。
「おはよう。今日も元気だよ。行ってきます」
「今日は散歩でもしようかな〜。」
私は宮本 葵
大学1年生で、いつも早くお酒が飲んでみたいと言っている。
文房具、時計が好き。
今日はいつも通っている時計屋に行く予定だ。そこではいつも、私が好きな腕時計を修理してくれる。
ガラガラと音をたてて古い扉が開く。
「いらっしゃい〜」
彼は時計屋の店主、坂上さん(さかがみ)、名前は不明。
いつも時計の部品を持ち歩いているらしい。
「坂上さーん、時計の修理お願いします。」
「また壊しよったんか。」
「はい…でも坂上なら直せるかなーって思って。」
「はい。直したよ。」
「えぇ!もう?あ、ありがとうございます!」
坂上さんはとても器用だ。
そこで坂上さんは普段見せないような腕時計を見せてきた。
「この時計には不思議な力があるんだ。」
「不思議な力?」
坂上さんは時計のリューズを指さしながら言った。
「リューズって分かるだろう?このリューズを回すと、過去へ戻れるんだよ。」
私は坂上さんのことだから冗談だと思った。
「またまたご冗談を〜。」
「いやこれは本当なんだよ。信じてくれたら無料であげちゃうよ。」
「ホントに本当ですか?」
「本当だよ!」
「ならください!」
「ありがとう。また来てね〜。」
ガラガラと音をたてて店を出る。私は貰った腕時計をじっと見つめながら家に帰った。
家に着いた。
(坂上さんの言ってることが本当なら…。)
私のお母さんは10年前に交通事故で亡くなった。私が公園で遊んでいたときにボールを公園の外へ蹴ってしまった。その時、横から車が来ているのを気づかずに、私は飛び出した。それをお母さんが庇ったのだ。
私は生き残り、お母さんは死んだ
葵の母、宮本 静香 (みやもと しずか)
文房具が好き
味噌屋の店主
それからはずっと後悔の日々だ。頭の中を悔という字が駆け巡っている。
だから、だから…
私は最初から腕時計を使うことを決めていたんだ。
忘れもしない。10年前の記憶を思い返す。
私はゆっくり腕時計のリューズを回した。
ゼンマイの音が鳴り響く。
カチ…カチ…
私はその瞬間、公園にいた。
「え!?本当だったの?」
私は涙が垂れ落ちた。目の前にいたのはお母さんだったからだ。
疑いの心は雲一つ無くなった。
「何驚いてるの〜?まだサッカーする?」
私は泣き声で言った。
「うん…。サッカーする…。」
「何泣いてるのよ。」
お母さんは泣いてる私をみて不思議そうに笑っていた。
私はあの方向へボールを蹴ってしまった。
何で動かないんだ。
まるで感情、身体それぞれジェットコースターに乗ったような感覚だ。
引かれたレールに従って、記憶を遡る。
身体は固定され、動かない。
(動いてよ!身体!何でさっきは喋れた!?)
急に喋ることもできなくなってしまった。
ボールが道路に転がった。私は餌に釣られたようにボールを追いかける。
気づいたら道路の上にいた。後ろから走る足音が聞こえる。
私は後ろから背中を押され、地面に倒れ込んだ。勝手に後ろを向く。
そこには倒れこんだ母の姿があった。
気がついたら私は家にいた。さっきので現在に帰ってきたらしい。
「何にも変わっていなかったじゃないか。」
「私は…何したって、全部お母さんに助けられて、失敗ばかりだ…。」
私はずっと、ずっと仏壇の前で泣いていた。
1日後
「お母さん、おはよう。」
昨日のことを思い出す。何で身体が動かなかったのか。
「坂上さんに聞いてこよう。」
時計屋に向かう。
「え!?」
なんと時計屋は無くなっていたのだ。理解ができなかった。
目を覚ます。気がついたら布団の上にいた。
「え?」
「夢か…。」
「はぁ…やな夢だった。」
仏壇の前でこう言った
「お母さん。おはよう。元気だよ!お母さんは元気かな?今日も味噌汁頂くね。」
味噌玉を作り、鰹節をつまんでお椀に入れる。そして熱湯をそそぐ。
今日も暖かい味噌汁を飲む
「あぁ…美味しいなぁ。」
私は気がついたら涙が出ていた。
読んで頂きありがとうございます!
初めての短編小説ですが楽しんで頂けたでしょうか?
お母さんへの感謝の気持ちを忘れたら駄目ということを伝えたく、この作品を書きました。
本当は母の日に投稿したかった笑
是非次の作品も読んで頂けたら嬉しいです!