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消える、消去シリーズ

消失した男の影響

作者: リィズ・ブランディシュカ




 その人物は、ある日突然世界から消失した。


 だからその人物の発した言葉もなかったことになり、その人物が行った行動もなかったことになった。


 誰がその男を消したのかは分からない。


 何がその男を消したのかは分からない。


 ある日突然、男は消えて、現実が改変された。


 ありとあらゆる痕跡が消えて、男のいない世界になった。


 過去は消えて、塗り替えられ、そのまますすみ、未来へ時間がすすむ。


 積み重ねられた時間が大きければ大きいほど、後戻りはできなくなる。


 後になって、数十年もたって、男の存在をとりもどせたとしても、もはや手遅れだろう。





 ともあれ、男は消えた。


 その現実によって、

 結果、とある組織が壊滅した。


 その組織には、とても立派な男性がいた。


 人々を守る自治組織を率いる、正義感あふれる男性だ。


 人々はその男性を英雄と呼んだ。


 鬼殺しの名前を宿した黄金の剣を振るい、凄腕の剣士として虐げられる人々を守った。


 鬼族に支配されていた人間たちを解放してまわっていた。


 そんな男性には、心優しい娘がいた。


 娘には力がなかったが、歌という才能があったため、人々の心を癒しながら過ごした。


 大切な人を失って涙がつきない者でも、その歌を聞けばたちどころに心が癒された。


 人々はその娘を、歌姫と呼んだ。


 歌姫はあまり頭がよくなくて、人の心の機微にうとかった


 そのため、何度かうっかり歌で世界を支配しかけたが、色々あってことなきを得たのだった。


 そんな英雄と歌姫には家族がいた。


 誰にでも気さくに接することができる、女性が。


 その女性は英雄の妻であり、娘の母親であった。


 誰かの背中を支え、傷ついた者たちに見返りもなく寄り添える彼女を、慕わない者などいなかった。


 人々は女性のことを守り神だといった。


 彼らは誰がどうみても、素晴らしい者達であった。


 かたく絆が結ばれている家族で、力強く前に進む不屈の者達であった。


 たまに喧嘩をしたり、衝突したり、互いに問題を起こしあって解決に奔走する事もあったが、大抵は笑い話で終わった。


 そんな彼らが作った組織は、大きくなり、人々を守る素晴らしい組織としてその名前は歴史に綴られていく。


 実は、そんな彼らを導いた隠れた功労者が存在する。


 その功労者の男性は、英雄の友人で、歌姫の師で、守り神の恩人だった。


 しかしそんな功労者の男性は、ある日世界からめっきり姿を消してしまう。


 原因は分からず、誰かにその予兆を察知されるわけもなく。


 男性が紡いできた全てと共に。


 そうしたら、一つの組織が壊滅した。


 英雄は友人と酒を飲みかわし、悩みを話す相手がいなくなったことで、心を病んだ。


 英雄の剣士という重圧に負けて、精神が壊れてしまった。


 歌姫は師匠をなくしたことで、自らの才能を正しく発揮することがなくなり、英雄の娘としてプレッシャーのある日々をすごした。


 そしてどこかで道を間違え、多くの人と家族の手によって討伐されてしまった。


 守り神は命の恩人と出会えなかったため、盗賊に襲われて死亡し、そんな彼女が支えるはずだった人々は立っていられなくなった。


 その結果、組織は立ち行かなくなり壊滅し、多くの人が不幸になった。


 組織の終わりの日、神様が情けを与えたのか、彼らに本当の記憶が与えらえた。


 しかし、偽物の記憶がすりこまれていた期間はながすぎた。


 彼らは元の関係にも、何かをやり直す事もできず、偽りの記憶をもとにして歩んだ時間に縛られながら、これからも生きていくしかないのだった。



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