第13話 ♬
十日後、三人はフラマリス王都に到着間近だった。
アスタリアは少し興奮して口を開いた。
「この前、カイスが海の見えるテラスのレストランに連れてってくれたよね。今度は、私が素敵なところを見せてあげたいの。
ただ、馬車でちょっと別方向に行かないといけなくて、往復で半日くらいかかる。
大通りはないけど、草地なら馬車で通れると思う。」
カイスは穏やかに微笑んで答えた。
「僕もアスタリアが興味を持った場所、ぜひ見てみたいな。」
「じゃあ、後でアレッサンドロに地図のこのポイントに向かうように伝えるね!」
アスタリアはそう言って、地図上の位置を指で示しつつカイスに地図を手渡した。
「うん、分かった。」
カイスは真剣に地図を受け取りながら見つめ、軽く頷いた。
アスタリアは窓の外を眺めながら、胸に小さな期待を抱いていた。
その場所は、道すがら小鳥が教えてくれた特別な場所だった。
フラマリス王都近くの高地で、そこからは遠くに王都や大海、海港、そして王宮が見えるという。
ただ、人がほとんど訪れないため、ちゃんとした道はないのだ。
数時間後、三人はその山の上の高地に到着した。
カイスとアレッサンドロは目の前の光景に言葉を失う。
そこはただの絶景が見える山の上の高地ではない。広大な花の海が目の前に広がっている。
一面に美しい花が咲き乱れ、花の海は淡いピンクや濃いピンク、淡い青や濃い青、そして金色が混ざり合い、宝石のように輝いている。
高地からは遠くに紺碧の大海が広がり、波間に金色の光がキラキラと踊っている。
広がる港には船が浮かび、薄灰色の埠頭が陽光を受けて貝殻のような光沢を放っていた。
遠くの皇宮は白と金の色合いで輝き、広大な庭園がその周りを取り囲む。
皇宮に隣接する王立学園の赤い屋根が、ひときわ目を引いていた。
街にはエメラルド色の運河が流れ、両岸には薄紫の並木と色彩豊かな建物が連なる。
小さな屋根が積み木のように密集し折り重なる街並みは、まるで絵本から抜け出したような愛らしさを湛えていた。
アスタリアの心は、まるで解放されたように軽やかになる。
「さすが私、プチ計画バッチリ!」と自分を褒めながら、こんな美しい場所にたどり着けた喜びに胸が弾む。
学園を離れ、新しい道を切り開くことを試みている自分に、ちょっとだけ満足していた。
アスタリアはカイスの方を振り返り、尋ねた。
「カイス、あそこが皇宮とフラマリス王立学園だよね?」
「そうだよ。皇宮の近くの通りは貴族の住宅街や繁華街になってるけど、郊外には貴族の大邸宅もあるんだ。皇宮から離れたエリアは平民の区画で、貴族区にも平民区にも大きな公園があるよ。あの緑の空地がそうだ。」
「見えるんだ、すごくかっこいいね。」
アスタリアは目を輝かせて頷いた。
貴族区には灰色や白色の大邸宅と庭園が点在し、繁華街の屋根は色とりどりに輝いていた。一方、平民区の屋根は少し落ち着いた色合いだった。
街から離れた場所には、確かに庭園付きの大邸宅がいくつも見えた。その中でも、ベージュと白の邸宅は特に広大な土地を持ち、小さな川のそばに建っているようだった。
アスタリアの髪が風に揺れ、数羽の小鳥が彼女の肩や手にひらりと止まる。陽光がアスタリアとカイスの二人を優しく包み込む。
アレッサンドロの目には、眼前の二人がとてもお似合いに見え、考えが少し変わった――彼らの出会いは、幸せな未来を予感させるものかもしれない。
カイスはアスタリアに止まる小鳥たちを見て、柔らかく言った。
「動物に本当に好かれてるよね。」
「可愛い動物が大好きなんだ。へへっ。」
アスタリアは笑いながら言った。
少し経って、カイスは少し真剣な表情になり、口を開いた。
「フラマリス王都に着いたら、しばらく離れることになるよね。少し寂しいけど、その後、どうやって連絡取ろう? 手紙を書きたいし、アスタリアの居場所を知りたいな。」
アスタリアは少し考えてから、明るく答えた。
「カイスが住所を教えてくれたら、まず私が手紙を書くよ。カイスは私の手紙を貯めておいて、私がちゃんとした家を借りたら、その後で一度に全部送ってくれればいいよ。そうなったら、カイスはいつでも私のところに会いに来られるよ。」
アスタリアはカイスとの友情を心から大切にしたいと思い、拳を握って元気よく応援するような仕草を見せた。
アスタリアは、カイスの金髪が陽光に照らされ、金の光を放つように輝いているのを見て、それがまるで王子のようだと感じた。
カイスはアスタリアのあまりにもまぶしい笑顔と美しい景色に、思わず少し顔を赤らめ、視線をそっと下げた。
「こんな素敵な場所に、アスタリアは本当に似合っている。ここに連れてきてくれてありがとう。」
「この高地の眺め、本当に美しいね……フラマリス国は、なんて素敵な国なんだろう。ここに来られて、私、本当に嬉しいよ。」
カイスは、自分の国を褒めるアスタリアの言葉に、軽い衝撃を受けたように、胸の奥がそっと震えた。そこには、自分の立場を思い起こさせる何かと、言葉にできない想いが静かに波紋を広げたようだった……
帰り道、三人は高地から直接フラマリス王都へと向かった。
アスタリアは馬車の側面に寄りかかり、少し眠そうに目を閉じかけた。
カイスは静かに囁いた。
「もしよければ、僕の肩に寄りかかってもいいよ。」
「え?」
アスタリアは驚いてカイスの深い青の瞳を見つめた。
カイスの声は穏やかで、どこか安心感があった。
「僕は眠くないから、アスタリアを守っている。」
「じゃあ、ちょっと寝るね。」
小さく微笑みながら、彼女はこう答える。
そして、カイスの肩にそっと寄りかかり、静かに眠りに落ちていく。
その日の夜、三人はフラマリス王都に到着した。馬車は普通の旅店前に停まり、アスタリアとカイスはここで一旦別れることになった。
「明日、フラマリス王都を一緒に散歩しようか?」
「いいよ。」
アスタリアはそう答えると、いつものように、朝日のような笑顔を見せた。
普段のアスタリアはこんなに笑わない。
カイスと一緒にいるとき、心から笑顔になれるのだ。
カイスは少し照れながら言った。
「明日、朝迎えに来るよ。」
「うん、楽しみ。」




