愛と孤独――この人を見よ
空想家は孤独を粧飾する
夢想家は愛を讃美する
かれらは人間を知らずに
自分をあやす絵筆にする
絞りだした妄想を捏ねあげて
断片をつないで塑像を作る
耽美に耽溺し、遊戯する
愛おしいのは自分とその妄想
現実家の知る孤独は奈落だ
実際家の感じる愛は激痛だ
かれらは人間を知っている
自分を映す鏡にする
あるがままと向きあっては
醜穢な己心の実像を見て
震駭し自棄して立ち向かう
一切の愛と孤独に畏敬し畏怖する
夢想家は愛と孤独を華麗に描く
現実家は愛と孤独の混沌に身を投じる
十二使徒も目を背けた
この人の愛と孤独を見よ
受難をしめす徴
永遠に流れる葡萄酒の色
この人の疵を見よ
愛と孤独のパンをその手にとれ