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第10話 真実を辿る道

 夕飯の後、僕はまた原田未来の家へとやって来た。

 彼女の部屋があるであろう二階の窓に明かりはない。

 昨日もそうだったが、照明が点いていないことで、どうしても彼女の存在を感じとることが出来なかった。

 リビングで食事中なのだろうか。それとも入浴中とか。

 ちょっと余計なことを考えてしまい、僕はその場から離れた。

 近くにあるコンビニに寄って、ペットボトルのジュースを購入する。

 この時間は意外と賑わっているんだな。

 あまり食後にコンビニに来たりはしないので、ちょっとした発見だった。

 そのまま少しブラブラして時間を潰す。

 適当に散歩していただけなのだが、気が付くと昔よく遊んだ児童公園に来ていた。


「懐かしいな」


 原田未来ともここで遊んだ記憶がある。

 当時は五人ほど遊び仲間がいて、彼女はその中の一人だった。

 ここに来て思い出したのだが、ブランコに乗った彼女のスカートの中が見えたのをからかった記憶がある。


「まてよ。なんだかエッチなことだけ憶えてる?」


 思わず口元に自嘲気味な笑いが浮かんでしまった。


「その後、怒った未来ちゃんに追いかけまわされたっけ……」


 今も残るブランコにお尻を乗せて、軽くスイングしていると、当時の記憶がまた少し甦って来た。


「男の子だけで変身ヒーローごっこをして、未来ちゃんを入れてあげなかったな……」


 仲間外れにして泣かせてしまった記憶が甦る。

 僕はあまり優しい友達ではなかったのかも知れない。

 彼女に好きになってもらえるような、そんな記憶は浮かんでこなかった。

 思い出はすぐに行き詰まった。

 懐かしさを揺れるブランコに残して、僕はまた彼女の家へと向かう。

 見上げた二階の窓には、やはり明かりは点いていなかった。


 土曜日の朝。

 いつもなら記憶に残らない夢の内容が、鮮明に頭の中に焼き付いていた。

 何故なら夢の中に、あの原田未来が出て来たからだ。

 いや、そうではない。

 僕は夢の中で彼女の家の扉を開けた。

 現実ではありえないが、僕はそのまま階段を上がって彼女の部屋の扉を開けた。

 僕の記憶には原田未来の顔はどこにもない。

 そこで僕を迎えたのは、あの新山日奈だった。

 僕はそのことにたいして驚きもしなかった。


「なんだ、君だったのか」


 新山日奈が原田未来と同一人物であるはずがない。目を覚ました今なら当たり前のことだが、夢の中の僕はそのことを簡単に受け容れていた。

 そして、新山日奈は何も言わないのだ。分かりにくいほどの微笑を口元に浮かべて、正解に行きついた僕をただ見つめていた。

 こんな夢を見てしまったのは、僕が原田未来の存在を確認できていないせいなのだろう。

 もう一歩という所まで迫りながら、僕は何も出来ずに手をこまねいている。

 本当はあの扉を開けて階段を駆けあがりたい衝動に駆られているのだ。


 その日の午後、僕は少し身なりをきちんとして玄関を出た。

 ほんの少し雨がぱらついている。

 透明なビニール傘を片手に、僕は住宅街の通りを歩きだした。

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