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ALO 〜Another Life Online〜  作者: 岡宮文良
第1章:ブルームシティ
2/7

1-2.暇を持て余す

 田舎の新居での生活は快適だった。


 前日にネットスーパーで注文した食料品などが、翌日、昼前に玄関脇の宅配ボックスに届く。

 誰にも会わずにそれを受け取り、届いたばかりの食材を使って自分で日に2回料理を使って食べる。

 食事前には必ず1時間ほどトレーニング室で運動して、シャワーを浴びてから食事をとった。


 空いた時間に掃除や洗濯をして、残りの時間は大体読書に充てた。

 テレビは朝の天気予報しか見ず、ネットやSNSも買い物を除いて利用しない。

 衣類は破れてしまった時なんかにネットで注文すれば良かった。


 美容院に行けないのでバリカンで髪を全部落としてから髭剃りで剃り落とし、スキンヘッドで過ごすようにしていたが、毎日髭剃りで髪を剃るのが手間で、そのうちバリカンだけになった。


 時間がとてもゆっくりと過ぎていき、何かに急かされる事もなければ、車を見てゲーゲー吐くことも無い。

 毎日がとてもゆっくりと穏やかに、極めて静かに過ぎていく。


 そんな生活を半年ほど続け、そして、俺はその生活に完璧に飽きた。


 先ず俺が試したのは音楽だった。

 音楽チャンネルをサブスクライブして、気に入った曲をリビングで流しつつ、いつもの紅茶を飲みながら読書する。

 これは直ぐに飽きた。


 次に、外に出る事を試したが、車の呪いは強烈で、何台かは耐えられたが、結局、あの黒焦げの遺体がフラッシュバックして路上で盛大に吐きまくった。

 やはり、普通に外出は無理だった。


 その後、料理にこだわってみたり、好きだったプラモデル作りに熱中したり、何やかやと試して、辿り着いたのがVRMMORPGだった。


 俺が大学卒業後に入社したのが株式会社アナザーフロンティアというVRソフトウェアベンダーだった。


 アナザーフロンティア社は日本国内は勿論、海外でも高いシェア率を誇る様々なVRソフトウェアを主力商品とする超大手企業で、当時、俺は先輩社員だった立花さんの下で医療用の胸部心臓外科手術学習VRソフトを担当しており、ウチのソフトを導入した病院や大学、医療機器メーカーなどに様々なヒアリングを行い、フィードバックを取りまとめ、それを開発チームに引き渡す仕事をしていた。

 とは言え、入社後たった5ヶ月で退職してしまったから、正直、仕事をしたというよりも周りの脚を引っ張っていたという方が正しい。


 当時の俺は知らなかったのだが、アナザーフロンティア社はVRゲームの分野にも進出していて、新しい旗艦タイトルの開発を進めていたらしい。


 それがAnother Life Online、通称ALOと呼ばれる全く新しいVRMMORPGだった。


 今迄ゲームでは採用された事のない時間短縮技術を採用してゲーム内では現実世界の3倍の速度で時間が進むというのが最大の特徴だった。


 時間短縮技術以外にも、全編がムービー仕様かと思わせるほどに超微細で美しいグラフィック、本物と変わらず匂いや味まで作り込まれた触覚インタフェース、何処までも圧倒的に広いフィールドにプレイの自由度の高さ、練りに練られたシナリオやクエスト、高性能AIの採用によりプレイヤーと見分けがつかないほどに自然で感情豊かなNPCといった謳い文句が評判となり、オープンβ版の参加者募集の際は5,000人の採用枠に対して実に全世界から10万超の応募があったらしい。


 で、そのオープンβテストも無事に終わってサービス開始が10月からと決まり、初回ロットの抽選販売募集が4月から始まったと朝のニュースでやっていたのだ。


 暇を持て余していた俺は勿論即申し込み、凄まじい高倍率を潜り抜けてALO初回ロットを引き当てた。

 更に、同時に発売されたドーム型専用VR端末VDR-1000、お値段約¥200万円も購入して、リビングにそれを設置した。


 続いて自宅のネット回線を選択可能なものの中で最強の、推奨環境条件を余裕でクリアするものに変え、警備保障会社ソコムと契約し、回線をVDR-1000に繋いだ。


 その他、スマートホームインタフェースもVDR-1000に連携するようにして、最終的にVRゲームをしながら電気を点けたり消したり、風呂を炊いたり、訪問者や電話やメールに対応出来たりするようにした。


 サービス開始1ヶ月前からユーザ登録受付が開始されたので、VDR-1000の中に潜り込み、自身の外見のスキャニングや血圧や脈拍、血中酸素濃度やその他病気や怪我などの医療的ステータス情報の登録を終え、後は本番サービス開始を待つだけとなった。

なんちゅーか、リズムが悪いんかな…

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