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同居することになった美少女は俺が告白して撃沈された初恋の女の子でした~まずは家族からってどういう意味だよ~  作者: 滝藤秀一


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☆隣の席の男の子を見直した日

 きちんと対処法を考えていたわけじゃない。

 放っておけない。

 ただそれだけの突発的な行動だった。


「なに、怖い顔してどうしたの?」

「おいおい、こっちの子もイケてね。なあ、お茶でもしに行かね?」

「俺らと付き合いたいってか?」

「……」


 悪びれた素振りもなく、なんて図々しいのだろう。


 しつこくされていたのは物静かそうな印象の子だ。

 大げさな拒絶をできない子かもしれない。

 それをいいことに……。


 相手が嫌がっているにも関わらず自分のことしか考えが及ばないところに心底腹が立つ。

 体に力が入る。と同時に言葉も自然と崩れた。


「あなたたち鏡見たことある? あたしが付いていくようにみえるの?」

「……」


 あたしの態度と返しがよほど頭に来たのか、傍に止めてあったママチャリが高校生の蹴りによってガシャンと倒れる。

 それはけっこう大きな音で女の子と怯えるように顔を見合わせてしまった。


 なんて横暴なんだろう。


「……みっともない。壊れでもしたら弁償よ」

「あー、うるせえな、うぜえ女だ」


 あたしの蔑む視線に、一人が睨みつけながら距離を詰めてくる。

 どうやら気分をさらに害したらしい。

 悪いのは自分たちのはずなのに理不尽極まりない。


 やはりこういう人たちを見ると我慢ならない。

 抑えることが出来なくなる。

 心情が表情へと出てきて、これでもかとむっとした顔になってしまう。

 声を掛けた時から、あたしはカッと頭に血が上っていた。

 こちらも冷静ではなかった。


「お前、ちょっと来いよ」


(あっ……)


 強い力で手首をつかまれ引きずられそうになったとき、いかに自分の行動が軽率だったかを思い知る。

 武道の心得もない。こういう時、力で来られるとどうしようもなかった。

 声を掛ける前に、お店の人を呼ぶ選択肢もあったのに。


 自分への苛立ちに唇を噛む。


「おー、おー、さらに怒った顔もたまらねーな」


 1人の男がそんなことを言った瞬間、その手首を誰かが掴んだ。


(っ!?)


「女の子に力づくでなにをしようとしてるんですか?」

「な、なんだ、お前は……?」

「ただの通りすがりの買い物客ですけど」


 目の前に居たのは入間樹だった。

 初めてみせる不機嫌極まりないその顔と有無を言わせない凄みのある雰囲気に反射的に怖気ずいたのか、掴まれていた手が放される。

 彼らだけじゃなく、あたしも動揺してしまった。


「あー、日奈スペシャル2号が!」


 どうやら倒れてしまった自転車に乗ってきたのはこの2人らしい。

 妹さんの方は口を尖らせて高校生3人を睨むと、どこかへ駆け出して行こうとしている。


「人の物壊すのはいけないこと。ひ、日奈、お巡りさんに話してくる」

「待て、日奈。その制服、この近所の高校ですよね。そこの交番でゆっくり話しましょうか? 俺としては1度目なんで穏便に済ませたいですけど、うちの妹がそれじゃあ許してくれそうにないので……」

「わるいことしたら、ごめんなさい!」

「……」


 男たちは交番という言葉には怖気づかない。

 それほど頭に血が上っているようで、入間樹を殴るモーションに入っていた。


「誰か助けてー!! 変な人たちがいきなり暴力振るおうとしてる」


 それは入間樹の大きく情けなく聴こえる叫びだった。


「なんだ、なんだ喧嘩か」

「どこの学校だい? クレーム入れてあげるよ」


 その声に反応するように次々と買い物客が足を止め、途端に注目の目が集まる。

 そこでようやくナンパ相手たちも状況を理解したらしい。


「ちっ……おい行こうぜ」


 足を止める見物人が増えてきて恥ずかしくなったのか、妹さんの恨めしい目に怖気づいたのかはしらないが、高校生は顔を見合わせ舌打ちする。

 この場には居られないと思ったのだろう。そのままゆっくりと遠ざかって行く。

 一回りも年の離れた子に怒った目を向けられては立つ瀬もないか。


 何とも手際が良く鮮やかな幕引き。

 妹さんに怪我がない様に、声を上げる前に後ろ手で守っていたし、殴らせそうになった時に笑っていたような……。

 この男がどこまで計算していたかは知らないけど。

 あたしとは大違いで冷静でそう思うと少し恥ずかしくなる。


「あ、あの助けてくださってありがとうございます」


 あたしたちに何度も頭を下げ、絡まれていた気弱そうな女の子は去っていく。

 中学校の制服だったけど、あたしたちのとは違うしどこの中学だろう?


 周囲の人たちから歓声と拍手が起こる。

 そんな反応を受け、日奈ちゃんは満更でもないようで、えっへんとばかりに胸を張った。

 その可愛らしい様子を目にしていたら、イライラしていた気持ちはどこかへと吹っ飛んだ。


「さすが日奈のお兄ちゃん。おかあしゃんもきっとお空で鼻が高い」


(えっ!)


 この2人ももしかしたら……。

 そう思うと勝手に親近感が沸いた。

 入間樹はそんな妹の頭を撫で、肩を竦めるとこちらに視線を向ける。

 そもそもこの人あたしを助けてくれたんだよね。


「たくっ、殴られでもしたらどうするつもりだったんだよ? 美浜はいつも正しいけど、今度からああいう連中に声かけるのは気を付けろよな」

「……」


 余計なお世話だと言いたいところだが、その通りで言葉を飲み込むしかなかった。

 割って入ってくれなかったらと思うと……考えたくはない。


「……お兄ちゃん、このお姉ちゃん知ってるの?」

「クラスメイトだ」


 いい加減男は自転車が壊れていないか確認している。

 そんな中、日奈と呼ばれていた小さな女の子がそっと近づいてきた。


「いつもお兄ちゃんがお世話になってます。仲良くしてくれると、日奈とっても嬉しいです」


 ここまで年下の女の子に丁寧に頭を下げられたことなんてない。

 その行動がなんとも可愛くて、思わず抱きしめていた。

 すると何を勘違いされたのか、いい子いい子とでも言うように頭を優しくなでられる。


(なんてできた子!)


 ありがとうと離れ際にお礼を言う。

 それで終わりにするのはさすがに……不本意だがもう1・・にも助けてもらってはいるし。


「よし、日奈スペシャル2号異常なしだ。帰るぞ、日奈」

「はーい」


 不本意だ。

 助けられたということを認めたくないけど、認めざるを得ない。

 そんな消化しきれない感情を抱きながらもここを逃したら言えなくなると思い……。


「……ね、ねえ、いちおう、あなたにもお礼を言っておくわ、あ、ありがとう」

「っ?! な、なにをそんな悔しげな顔で?」

「……別にどんな顔をしてたっていいでしょ」

「……まあ、存分に感謝するんだな。これ以後俺を注意する権限はなくなったからそのつもりで」


 わざとそんなふうに言っているように聞こえる。

 内心はそんなこと気にしなくていいとか思ってそう。

 照れなのか、耳が少し赤いし。

 それはそれで気を遣われているようでなんだか腹が立つ。


「はっ、なくなってないけど。ありがとう言ったし、もうチャラだし。むしろあなたならちゃんと直せそうだから、がんがん言いますけど……」


 だからそれに煽られるようなやり取りになってしまった。


「いい性格してるな。なんとなく美浜がわかった気がする……なんか譲れないことでもあるのかもしれないが、ちゃんと相手はみて注意しろよな」


 偉そうに……。

 そんなに念を押さなくてもわかったわよ。

 妹ちゃんを後ろに乗せた自転車は何事もなかったとばかりにゆっくりと遠ざかって行く。


 この日が入間樹を少しだけ見直した日であり、その関係性が少し変わった日だったのかもしれない。

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