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ひとつの可能性の結末【第三の選択肢の世界線の結末】



【第三の選択肢の世界線の結末】

One of the future:One heart



 ふと、思った。こうして私がテオドールのことを考えているときが、テオドールも私のことを考えているときなのかもしれない。都合の良い思い込みかもしれないけれど、そう思いたかった。

 瑠果ちゃんと話したとき掘り出した私のあの気持ちはどうだろう? 自身に問いかけてみる。嬉しかったり楽しかったりしたことを思い返した時に、私のことも一緒に思い出してもらえたら嬉しい。側に居られても、居られなくても。テオドールに幸せになって欲しいのは変わらない。

 いつの間にか肩からずり落ちていた紐を戻して包みを背負い直す。弓道の弓と矢だ。あの世界から戻ってきて、改めてちゃんと弓を習い始めた。弓を引いていると気持ちが落ち着くし、色々なことが少しずつ思い出に変わっていってしまっても、思い出す足がかりになってくれるだろう。




 翌朝、目覚めると頬の突っ張る感覚がする……寝ながら泣いていたのかな、頭も少し痛い気がする。体を起こすと掌から何かが転がり落ちた。いつの間に何か握り込んでいたんだろう? 落ちたものを拾って、目を見開いた。

 複雑な掘り込みのある小さな榛色の石──間違いない、これはテオドールにもらったあの守り石だ。この世界に戻ってきた時に探しても見つからなかったから、持って帰れなかったんだと思っていたのに……

 ──ああ、そうか。もしかしたら昨日、夢でテオドールに会えたのかも。

 異世界に行ったなんて出来事を思えば、夢を通じてテオドールがこの守り石を届けてくれたのかもしれない、ということはすんなりと信じられた。それにしても、夢の内容を覚えてないとは、なんて惜しい!!

 守り石を陽の光に翳して覗き込むと、優しい色合いの光がキラキラと私の瞳に届く。あの眼差しを思い出して、何だかテオドールに見守られているような気持ちになった。

 皆との旅の思い出やテオドールと心を通わせたあの瞬間の気持ちがあれば──例えそれを正確に思い出せなくなっても──私はきっといつでもいつまでも、頑張っていられるような気がした。前を向いて、胸を張れるように。何やってるんだって呆れられないように。私は私の世界で、私に出来ることをやりながらちゃんと生きていきたい。

 どうか、テオドールが──そして皆が、幸せでありますように。掌の守り石に、そう祈りを込めて微笑んだ。


【One of THE END】


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