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第15話 東ノ山キャンプ場

遅くなりました

「結構いるね。60人位かな?」

琴音(ことね)さん、ずいぶん沢山の人を誘いましたね」

「はい。大勢いた方が賑やかで良いと思ったから、誘った人に友達とかもどんどん誘ってねって言ったらこんなに増えました」


 キャンプの参加者が一旦集まっている建物の中に入ると、当初聞いていた参加者のおよそ3倍の人が集まっていた。俺たち含めて5組位、同年代の子供が居るみたいなので、もしかしたらその人たちと話すこともあるかもしれない。

 これは賑やかで楽しいキャンプになりそうだ。


「それでは、東ノ山キャンプに参加する方々が全員揃ったようなので出発しますね~。少し山を上りますので、もし具合が悪くなったら近くの係員までお知らせ下さい。救護室に案内します」


 そうして係員を先頭にして、東ノ山に登り始めた。キャンプ場へ向かうための道の為なのか、安全対策がこれでもかと言うくらいされていた。

 歩く道には小さい石ころすらほんの僅かに落ちている程度、左右に急な崖がある場所には景観と安全を考慮したガードレールがある。


 通り道以外の対策としては、20人の団体ごとにトランシーバーが配られる・

 携帯電話の電波が通りやすいようにしてある等だ。


「凄いな。他の場所とは比べ物にはならない程の安全対策だけど、前に事故でもあったのか?」

「何でも東ノ山キャンプ場を運営してる会社の社長さん、超がつくほどの心配性らしくてね。自分の給料の3分の1を安全対策につぎ込む程だとか。そのお陰か、『事故が少なく安全、なのにキャンプ場としても良い』って感じで一定の人気が得られるようになったみたい」

「そんな社長さん居るんだね。私、その人の事凄いと思うよ」


 その社長さんはどんな思惑で自分の給料使って安全対策を強化しているのだろう。俺の予想だと、心配性らしいので恐らく対策の不備によって事故が起こり、会社が傾いてしまう可能性を減らすためだと思う。

 まあ理由は何であれ、結果的にキャンプが安全に出来ればそれでいいし、何より対策を自費でやっていると言うのが凄い。俺ならそこまでやることはないだろうし、世の中のほぼ全ての人たちがそうだと思う。


 そんな感じで、キャンプの安全対策に自費を出す社長さんの事を考えながら歩いていると先程までの山道とはうってかわって、かなり広い河原に出た。辺りにちらほらテントを見かけたので恐らくここでキャンプをするのだろう。


「はい、着きました。ここでキャンプをします。釣竿等の道具も用意しておりますので使いたい方がいれば自由にどうぞ。基本的にこのエリア内では何をしても構いませんが、決して1人で看板より向こう側にに入らないでください。迷いやすいですし、熊や猪等も出てくることがあるので危険です。では、これからは日が沈むまで自由にどうぞ」


 係員がそう言うと、集まっていた人たちが思い思いに散らばり、水遊びをしたり釣りをしに行ったりし始めた。ここから日が沈むまで自由に過ごしても良いらしい。

 それに皆が寝るためのテントは、係員がすべてやってくれるみたいだ。キャンプを良くする人ならともかく、誘われて初めて来てみたって言う人にとってはありがたいサービスである。


「おーい! 諏訪野(すわの)、こっちでバーベキューやらないか?」


 何をしようか3人で考えていたその時、このキャンプの計画者である岡本さんがバーベキューをしないかとこちらを誘ってきた。父さんと母さんも行こうとしていたので俺も2人についていく事にした。


「おう! 今3人で行くから待ってろよ」


 そうして岡本さんの所に3人で行く。他にも誘われた人も合わせて10人程居るので賑やかなバーベキューになりそうだ。

 食材持ってきてない旨を父さんが言ったら、牛肉や豚肉、トウモロコシや人参・ピーマン等の食材も岡本さん夫妻が全員分提供してくれるらしい上、どれもかなり高級なものらしい。


「よーし! 皆どんどん食えよ~。俺たちの事は気にしないで良いからな」


 側によると、肉のいい香りが漂ってきて食欲が刺激された。用意してもらった焼肉のたれを取ったいい感じに焼けた牛肉に掛けて食べる。

 流石に高級品だけあって凄く柔らかくて美味しい。あまりにも美味しい物だったので、欲のまま片っ端から肉を焼いて食べていたら、いつの間にか用意されていた量の半分を食べてしまう失態を犯した。


「皆ごめんね……」

「灼狐ちゃん良く食べるね~。流石狐の女の子だけのことはあるな!」


 その瞬間岡本さんが『あ、やべ』と言って顔をひきつり、発言を聞いたバーベキュー参加者の時がほんの一瞬止まり……


「「「狐の女の子??」」」


 どう言う事なんだ? って顔をしながら大半の人が口を揃えて言葉を発した。まあ、いきなりそんな事言われてもすぐには理解出来ない人が大半だろう。


「岡本があんなことを言ってたんだけどどういう意味だ? 狐の女の子って」

「良ければ教えていただけませんか?」

「おねーちゃんきつねさんなの?」


 そして案の定、狐の女の子と名指しされた俺に質問が集中してきていた。

 こういう場合は正体を隠し通してただの銀髪の大食い少女としておくか、それとも正体を全て晒すか迷ったものの、何かがあった時に力が使いやすくなるので便利だし、それに遅かれ早かれどこかでボロが出るだろう。ならばいっそのこと狐化してしまおうと思った。


「狐の女の子って岡本さんの発言は本当だよ、ほら」

「うおっ!? マジじゃねーか」

「きつねさんだぁ~」

「確かに狐の女の子のようです。まあ世界が幻想(ファンタジー)化しているみたいなのでこんなこともありますよね」


 その後、バーベキューのはずがまるで何かの発表会と化してしまい、夢中になって彼ら彼女らの期待に答えたり、少し離れた場所で釣りをしたり、キノコ採りをしていると辺りが暗くなり始めてきた。


「皆さん、もう日が暮れ始めたのでその辺にしてテントに入って下さい。夜にカブトムシ捕り等をしたい人はお知らせ下さい!」


 バーベキューを楽しんだ俺たちはもう満足しているので夜の虫取りに行かず、夜が明けるまでテントにこもることにした。



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