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第14話 いざ、山のキャンプ場へ

「この度は馬鹿なスタッフのせいで大変なご迷惑をかけて本当に申し訳ありませんでした!」


 夜月テレビ局の局員を妖術で撃退した後家に入ってすぐ、お母さんが鬼のような形相をしつつも、大声を出すことなく本部に電話を掛けていた。

 馬鹿やって逮捕された局員の話を聞いて信用に関わると判断したのか、こちらの話を即信じて上司が早速向かうと言う話になった。

 そして2時間後、夜月局長と逮捕された局員の上司が家に謝罪のために訪れてきた。


「それにしてもこんな犯罪行為に手を染めるような人だとは。今度スタッフ採用する時により慎重に考慮する必要がでてきましたね局長」

「ああ。それに今後、魔法とやらを使えるスタッフが出てこないとも限らない。社内の管理体制を上手くやらないとな。同じことを繰り返したら今度こそ信用が底をつく」

「それでは、本当に申し訳ありませんでした! 今後こういうことがないように気をつけて行きたいと思います!」


 最後にそう言い残し、局長と逮捕された局員の上司は俺たちの家を後にした。

 あんな局員が居るところなのだから上司も似たようなものだと勝手に思い込んでいたが、その日の内に謝りに来たのを見ると、あの局員だけがヤバい奴だったと言うことだろう。


「上司は予想以上にしっかりしてるのね~。今度はああいう人を出さないように指導してほしいと思ったわ」

「ああ、そうだな」


 そう父さんが言って少し経った後、何かを思い出したかのような顔をしながら再び話を切り出す。


「それで話は変わるが、山のキャンプに行くのは2日後の朝、現地集合だからその日はいつもより早く起きるぞ」

「「はーい」」


 謝罪に来た夜月テレビ局の局長も帰り、何もすることもなくなったので、キャンプ当日まで家族皆で家の中に居ることにした。


 そうして2日後の朝、まだ日が出始めた頃に父さんに起こされる。

 いつもより1時間半くらい早いのでまだ眠く、布団から起きるのが苦行に感じていた。もう少し早く寝れば良かった。


「おはよう灼狐(やこ)。まだ眠そうだな」

「お父さん……だってまだ4時半だし仕方ないじゃん。で、いつ家を出発するの?」

「集合時間が11時だから、7時に出発するぞ。ここからなら2時間ちょっと位で着くんだけど、渋滞とかに捕まったりしやすい道を通るから念のためにな」


 なるほど。キャンプ場へ行くには渋滞しやすい道を通らなきゃいけないわけか。集合時間もあるから遅れるわけにもいかないだろうし、納得だ。


「どんな人たちが来るのかなぁ~」

「ずいぶん楽しそうにしてるな、灼狐」

「へへ、まあね」


 転生前の時は毎日仕事に追われ、家に帰れば疲れから食事と風呂を済ませたらすぐ眠る生活を繰り返していたし休みの日だって、毎日の疲れを癒す為に家にいるばかりでどこかに出かける気力なんて殆んどなかった。


 仕事の事を考えなくても良い学生時代に戻りたいとすら思っていた矢先、自分に狐の少女に転生すると言う出来事が起こった。

 最初は仕事とかどうしよう、これから生活どうしたらいいんだと、半ば絶望しかけていた。しかし、この姿で生活していくにつれてとある感情が芽生えてきた。


『中学時代に戻ったみたいで楽しい!』と。


 更に運良く俺を養子として引き取ってくれる今の父さんと母さんにも出会え、諏訪野(すわの)灼狐13歳として戸籍と国籍を得ることができ、引き取ってくれた今の父さんと母さんと共に家族として行動する等、名実共に楽しい思い出一杯の中学時代に戻った。なので何をするにも楽しく感じているからだ。


「喜んでもらえているのなら、岡本の誘いに乗った甲斐があったもんだ。それより、早く朝食とって準備するぞ」


 そうして用意してあった軽めの朝食を皆で食べた後、持っていく物をリュックに詰め込む。出発まで時間が余ったのでその間は適当に過ごし、時間が来たら車に荷物を詰め込んで出発した。


「渋滞とかに嵌まるとは思ったが、この混みようは物凄いな。早めに出発しておいて良かったぞ」

「夏休みシーズンだからね、きっと」


 父さんが言っていた渋滞しやすい道に差し掛かってから少し経った頃、夏休みと言う事も相まって凄いことになっていた。何せ人が歩く速度と同じくらいの進み具合と言う状況の為、早く出たのに遅刻しそうな気がしてきた。


「流石にこの混みようは予想できなかった……遅刻かなぁ」


 そこから1時間半程時間が経つと、ようやく車が普通に進むようになってきたので法定速度ギリギリで走らせる。しかし、渋滞に長時間捕まっていたそのせいで集合5分前ではあったものの、間に合いはしたので良かった。


「着いたぞ。ここが『東ノ山キャンプ場』、今回の目的地だ」

「凄い、都会の中にこんなに自然が豊かな場所が……」


 田舎の自然豊かな町にも勝るとも劣らない程の緑溢れる山に見とれていると、誰かに声をかけられた。


「どうもこんにちは諏訪野さん。私、岡本陸斗(りくと)の妻、琴音(ことね)と申します。この度は誘いに乗っていただき感謝です」

「こんにちは琴音さん。俺たちも誘っていただいてありがとうございます。お陰で楽しい思い出が増えそうです」

「それは何よりです。所でそちらの銀髪のお嬢さんは?」

「養子です。かなり訳ありですけど、優しい性格の良い子ですよ」


 どうやらあの琴音さんと言う人は岡本さんの奥さんで、このキャンプに誘ってくれた人のようだ。

 なんか流れ的に俺が自己紹介しなければいけなさそうなので、琴音さんの前に立って自己紹介する。


「あ、こんにちは。諏訪野 灼狐です。よろしくお願いします」

「よろしくね、灼狐ちゃん」


 軽く自己紹介を終えた後、俺たちは今回のキャンプに参加する人が待機している建物へと一旦向かうことになった。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「村上さん大発見です! あの銀髪狐少女の灼狐ちゃんの血液にとんでもない効能が隠されていたのを発見しました!!」

「分かったから落ち着け。で、その効能とは?」

「それがなんと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うものでして……」

「何だと!?」


 あの狐少女の灼狐ちゃんから提供してもらった尾毛や血液と言った物をいつも通り研究していた時、部下の研究者が興奮した様子で私の研究室に入ってきたので何があったのか問うと、血液に毒物を分解する効能が隠されていたのを発見したと言う。


「もしこれを更に解析して大量生産にこぎ着けることが出来れば、血清のない毒を持った生物に対する対処が出来るようになり、更に劇物を扱う場所での事故も減らすことが出来るようになる……医学の進歩が目覚ましいものになるだろう。よしお前たち、他の研究を一旦凍結して血液の研究に全力を注げ」

「「「了解!!」」」


 こうして大発見をした私たち幻想科は、彼女の血液に関する研究を集中して進めることとなった。

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