第12話 しつこいテレビ局の人
「山倉警部に神林警部……」
「灼狐ちゃん、大丈夫……なのかな?」
「立って歩くぐらいが限界ですが、怪我とかは大したことないので大丈夫です」
俺が今の父さん母さんの家に引き取ってもらえたり、戸籍や国籍の問題を全て解決してくれた恩人の警察官2人だった。
今の様子を見て怪我の心配をされたので、体力の限界が近いものの怪我については不意打ちで吹き飛ばされた時と、魔法を砕いた際に出来た傷のみであった為大丈夫だと言うことを伝えた所、2人が安心したようで顔に笑みを浮かべていた。
「そうか、良かった。さて神林、腕が折れ曲がってる男たちと弾を当てて脚を負傷した女が居るから救急車を手配しろ。俺は店内を見てくる」
「了解です」
そうして神林警部が救急車を手配し、山倉警部は内部の探索に向かった。10分後、救急車がやって来て怪我をしている恐喝集団を全員病院へ運んでいき、更に15分後内部の探索に向かった山倉警部が戻ってきた。
「どうでした? 山倉さん」
「……軽い怪我人はそれなりに居たが、致命的な怪我をした人や死人は居なかった。店内、特にレジ近辺が酷い有り様だったぞ。ガラス窓に大穴、壁にヒビ、商品が天井にめり込んでる、他にも色々な」
なるほど。まああれだけ店内で俺と恐喝集団がやり合えばそんな惨状になるだろう。
ん? 待てよ。そうなると俺、一体これからどうなるんだ?
いくら恐喝集団から守るためと言え、商品だけでなく店自体に損害を与えたから、どう考えても器物損壊罪になる事は間違いない。事情を考慮されてそれがどうにかなったとしても、店に対する賠償金は……流石に帳消しにはならないだろうな。
「おーい。大丈夫か?」
「……あの、私これからどうなるの?」
「ん? 急にどうし……ああ、そう言う事か。まず、灼狐ちゃんがやったことだけを見れば器物損壊罪となるだろう。だが、やむを得ない状況だったと言う証言も取れているし、そもそも13歳の君は法律によって罪には問えないから刑務所行きにはならない。店内の怪我人の殆んどは恐喝集団のせいだと言うことが分かったし、一部の人たちだって君に対して恨みを抱いちゃいない」
それを聞いて少し安心したが、賠償金等については俺の家にもとんでもない額の請求が来るのかなぁ。そんな事を思っていると……
「それに賠償金の方は、こうなった元凶の奴等にするから大丈夫だって、店の中に居た店長に聞いたらそう言ってた。確かに狐の少女だって損害を与えたけど、彼女が動かなきゃもっと酷い惨事になっていただろうから。だそうだ」
「そうなんだね。店長さんたちに感謝しないと」
どうやら今回の件については実質お咎め無しということになりそうだ。何らかの罰を受ける覚悟をしていただけに、それを聞いた瞬間張り詰めていた緊張が解けた。
今回は運良くこんな結果になったが、次も同じ結果になるかは分からない。と言うか良く考えたら、対象者のトラウマとなる幻を見せる狐術・妖幻狐火を使えば店をめちゃくちゃにしなくても解決したのではないか。
もしかしたらそれ以外にも解決方法があったのかもしれない。まあ、終わった後に後悔しても後の祭りだが。
そうして最後の怪我人を乗せた救急車がここを出てすぐ、入れ替わるようにしてアルテマの駐車場に1台の白いワンボックスカーが入ってきた。良く見るとそこには、『夜月テレビ』の文字が描かれていた。
「テレビ局か……嗅ぎ付けるのが早いな」
そのテレビ局の白いワンボックスカーは、警部2人と俺たちの目の前に停車すると、中から3人が出て来て俺の方に近づこうとして来たが、警部2人に止められていた。
「お願いです! ちょっとだけでも取材を……」
「駄目です。お引き取り下さい」
「そこを何とか……」
「駄目です。神林、俺がこの人たちを止めている間に近くの署に連れていけ。そこで家族たちも待っているはずだからな」
「了解! 灼狐ちゃん行くよ」
「うん」
テレビ局の人間を山倉警部が何とか引き留めている間に俺と神林警部はパトカーに乗り込もうとした時、後ろから腕を掴まれる。
「貴方は、テレビ局の……警部が言ったように、取材は無理です。と言うか私自身取材が嫌です。なのでお引き取り下さい」
「そう言わずに、お願いですから少しだけでも!」
山倉警部を突破したらしいテレビ局の人が止められているにも関わらず、俺の腕を掴み取材を試みようとしてきた。その行為に対して不快感を覚えた俺は、その人を追い払おうと妖術を使おうとしたが、神林警部に止められた。
「今から警察署で待ってる彼女の家族のもとに送り届ける途中ですし、本人もそう言っていますので取材は止めてください。それ以上しつこく食い下がろうと言うのなら、貴方を公務執行妨害及び暴行罪で逮捕することも出来ますが」
「……はぁ」
現役の警官にそう言われた為か、テレビ局の人は意外とあっさり引き下がった。まあ、逮捕されて前科者となる危険を犯してまで強引に取材はやらないか。
そうしてテレビ局の人を追い返した山倉警部も合流し、パトカーの後部座席に乗って警察署に出発した。
「全く、あいつら諦め悪いな。後をつけてきてやがる」
「あれですね。灼狐ちゃんが僕たちと別れて警察署から離れたタイミングを見計らい、半強制で取材でもするつもりでしょう」
アルテマを出発して少し経った時、2人がそんな事を話していたのが聞こえたので後ろを見てみると、さっきの白いワンボックスカーがパトカーの後をつけてきているのが見えた。
これは警察署出た後、面倒くさい事になりそうだな。
「灼狐ちゃん、もしもアイツらが来て逃げるに逃げれない不味い状況になって撃退することになっても、出来るだけ手加減してな。本気でやったら多分相手が消し飛ぶから」
確かにそうかもしれない。今俺が放てる本気の攻撃は狐術・灼崩鏡だ。今日戦った恐喝集団のように強い人間や魔物に対してならともかく、普通の人間に使おうものなら確実に消し飛ぶだろう。
それに、他の攻撃妖術だって消し飛ぶまでは行かないものの、相手を殺すだけの力を秘めているので言われなくても普通の人間に使うつもりなど全くない。使うとしたら狐術・妖幻狐火位だ。
「うん、分かった」
この後ずっとつけられてはいたが、進路を妨害されることもなく父さんと母さんたちの待つという警察署に到着出来た。
「おーーい! 無事だったか灼狐!!」
「うん! 無事だったよお父さん。この通り、怪我も殆んどないし!」
「灼狐ぉ……良かったぁーー!」
「ごめんねお母さん……」
こうして無事に父さんと母さん・父さんの友人たちの誰も怪我をすることなく合流することが出来た。
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