プロローグ……でいいのかな?
ダメだこりゃ。どうしたって集中できない。
俺には小説家という本業にも趣味にもできる肩書きなど、どうやら夢のまた夢に相当する代物らしい。
思い立ったが吉日とばかりに、ネタを考えメモに箇条書きでまとめ、つらつらと下書きのごとくスマホで書き、サイトを通して丸ごとコピーアンドペーストした後、余計な部分を消してルビ振りや改行などを加え、何度か読み返して推敲しながら、いざ大衆に公開する。
昨今の小説投稿サイトの賑わいに便乗して、俺も何となく書き始めてはみたものの、ところがどっこいこれがてんでダメだった。
まず、これが最初にして最大の壁だ。
書かない。
書けないじゃない、書かない。
書けないだったら、物理的には無理だけど、意欲的には書きたくてたまらないという言い訳が透けて見える。
だが俺は違う。書かないのだ。
てこでもビクともしないだろう。支点力点作用点、どれも狂ってなくてもビクともしない。
動かざること山の如し、なんて言い得て妙だろうか。
そこまでしても書かない理由はただ一つ。
単純かつ非常にシンプルだ。頭痛が痛くなった人は聞かない方がいい。
しかし、あえて言おう。俺は誘惑に弱いのだと。
だってだってー。いざ書こうとする時期に限って、やってるソシャゲは限定キャラてんこ盛り、強力だが逃すと二度と手に入らないやつを山ほど実装するしぃ、気分転換に据え置きゲーム始めたら、エンディングまで辞めるんじゃないっていう強迫観念に襲われて、テレビの前から離れられなくなっちゃうしぃ、挙句の果てには明日になったら本気出すなんて思っちゃうんだもーん!
明日やろうは馬鹿野郎! てやんでぃ!
……コホン。えーというわけで、そんなクソッタレな底辺作家活動をしていた俺は、余裕のよっちゃんでランキング圏外。閲覧は低迷。ブクマオフ。評価ZERO。
それでも、たった今そのミソッカスから絞り出した、かつてないほどに儚くてちっぽけだけど純度だけはダイヤに匹敵する俺の集中力のひとしずくをひと舐めしたせいか、千載一遇にして空前絶後もありえるほどのまたとない機会に恵まれて、こうしてパソコンの前に座ることができたのだ。今なら死んだっていい。
だがここで第二の関門だ。これも中々手強いぞ。
設定、ストーリー、キャラクター、世界観、なーんも決まっとらんがな。
そりゃあそうじゃ。当たり前だのクラッカーじゃけぇ。
何せこれから執筆するけん。どないせいっちゅうねん。どげんかせんといかんばい。知らんけど。
まあ、習うより慣れろ。可愛い子には旅をさせよ。ライオンの子は崖からつき落とせと、お天道様からのありがたい教えにしたがって、書くしかないのだ。