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女子更衣室は過去へとつながっている  作者: 浅漬け
落とし物には気を付けて
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第8話 少年の得た力

 気がつくと雄一は、女子更衣室にいた。

 

 この文章だけ切り取ると、無自覚など変態のように映ってしまうかもしれないが断じてそんなことはない。

 雄一はきっちり自覚のある変態なのである。


「ゆーいち?」


 目の前では正也が顔を覗き込んでいた。


「正也、俺、今何してた?」


「何って、過去に行ってからのことの計画をしてたけど・・・・・・もしかして、ゆーいち」


「ああ。戻ってきた」


「・・・・・・驚いた。ほんとーにいきなりなんだね」


「そうみたいだ。過去に戻るときの光は、他のやつには見えねーんだな」


「そうだね。特に変わった様子は。それで、わかったことはある?」


 正也は目を輝かせて質問してくる。

 本当に、興味を持ったものはとことん知りたいんだな。


 呆れながらも、そんな正也が嫌いでもない雄一であった。


――――――


「あ、ありがとうございます!」


 ロッカーから取り出した消しゴムを手渡すと、役所朱鳥(やくしょあすか)はそう言って頭を下げた。


 これで今回の目標はひとまず達成だ。


「でも、どうやって見つけてくれたんですか? どこ探しても無かったのに」


「いやー、それは手品と言うか何と言うか」


「過去に戻った、とかですか?」


「・・・・・・え?」


「ごめんなさい。聞くつもりは無かったんですけど、さっき教室で話してるのが聞こえてしまって」


「……まじかよ」


 何たる失態、である。このままでは面倒なことに。

 

「あ、でも、他の人に言い触らしたりとかしないので! 安心してください」


 杞憂だった。いい人で良かった。


「その代わりと言っては何ですが・・・・・・」


 代わりに? なんだ?

 まさか、貧乏学生である雄一から金銭をむしり採ろうと言うのか。

 はたまた一生パシりか。それも恐ろしい。

 見た目に似合わぬその狡猾さに驚愕していると。


「何か困ったことあったら、お手伝いさせてくださいね」


 朱鳥は少し恥ずかしそうにそう言いながら微笑むのだった。


 

 杞憂だった。やっぱり杞憂だった。



―――――


「今回の実験でわかったことをまとめるよ」

 

 正也がノートに書き込んでいく。


 『今日解ったこと』というタイトルでノートを一面に使って読みにくい字で書き始めた。


『過去に戻るには、女子更衣室に入って過去に戻りたいと強く思うこと』


『過去から現在に戻る度に、過去に戻った時に大澤雄二として行動した記憶は他人の中から無くなる』


『恐らく再現可能である』

 

 そして、もう一つ。


『過去に戻った人間の存在はかなり薄い』

 

 他人から話しかけられることはほとんどなかった。


 まるでそこに誰もいないかのように。

 モブキャラのように。

 そう言った意味では高校生活において雄一は完全にモブキャラであった。


 誰から話しかけられることもなく。

 特にやれることもなく。

 教室の背景の一部であり。

 目立つ人間を外から眺めている。


 そしてそんなモブキャラに。

 小沢雄一に。

 特別なことをできるチャンスが来たのである。

 

 過去を変え、誰かを救うことができるチャンスが。

 その力は誰が為に。

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