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女子更衣室は過去へとつながっている  作者: 浅漬け
人混みは苦手
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幕間 待ち合わせ

 玄関にある姿見鏡で最後のチェックをしてから家を出る。


「……いってきます」


 部活に行くときよりも、幾分か小さく呟く。

 

 待ちに待った日。

 普段は大きなテニスバックを背負って歩く道も、今日は小さなポシェット一つ。

 着慣れない浴衣のせいか、履き慣れない下駄のせいか、荷物はないのに何だか足が重たい。

 嫌で仕方がない部活の練習より、何だか駅までの道のりが遠く感じた。


 どうしてだろう。

 ぼんやりとなら心当たりがある。

 まだ言葉にはできないけれど。


 お祭りの駅までは、電車で二駅。

 思っていたのよりも二本後の電車になってしまった。

 だけど、待ち合わせ時間にはまだ一時間くらい余裕がある。早めに家を出ておいてよかった。


 駅のホームには、他にも浴衣を着た女の子たちが何人かいた。みんなお祭りにいくのかな。

 少しパーマのかかった綺麗な茶髪に、慣れた様子のメイク、派手目な浴衣を見て、少し自分に自信を無くす。


 だけどあの子たちも、やっぱり心の中ではこんな風に緊張してるのかな。

 改札を出てすぐに、一生懸命メイクで整えたであろう顔を少し崩して男の子のほうに向かっていく女の子を見て、そんなことを考える。



 ゆーくん、なんか部活大変そうだったなあ。大丈夫かな。

 中学の時から部活に入っていなかったゆーくんは、最近始めた部活で忙しそうにしている。

 こーかい部、という部活で、困ってる人を助けてあげる部活らしい。たしかにゆーくんにはピッタリの部活だと思う。

 

 だけど、人のことになるとたまに無理することあるし、大丈夫かな。

 説明されてもよくわからなかったけど、過去に戻る? とか何だか危なそうなこともやってたし。


 私がお客さん第一号として依頼したときも、ゆーくんは危ない思いをしながら、やっぱり助けてくれた。


 いつだってそう。


 中学の時も、高校に入ってからあまり他の人と話さなくなっても、本当は変わらずに優しいってことを私は知ってる。

 他の人が知らないあの人を、私は知ってる。


 だから、そんなゆーくんがいつか報われたらな、って思う。

 高校に入ったくらいから、たまにすごく悲しそうにしていたり、何か苦しそうにしているゆーくんが、もっと元気になれたら、いいなあ。


 


 そのために、何かできたら。

 バカな私にも、何かできることがあれば。



 人で混み合う小さな駅で京奈がそんなことを考えているなんて、雄一は想像もしていない。




 監査終了まであと数十分。

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