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女子更衣室は過去へとつながっている  作者: 浅漬け
人混みは苦手
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第27話 呼び出されて怒られに行くときの職員室のドアはほぼ羅生門

 アラームの音で目を覚ましたが、何十秒かその音を止めずに微睡む。

 流石にもう起きなくては。ゆっくりとアラームを止め、雄一の朝は始まる。

 

 

 ――監査最終日の朝が。


――――――


「……俺、過去に戻る」


 監査が始まって一時間がたったであろうか。不意に、雄一はボソリとそう呟く。

 それにすぐに反応したのは、正也。


「戻ってどーするの? 今回ばかりは、考え無しに過去に戻ってもどうにかなる問題じゃない」


「たしかにそうだけど、何もしないよりは……」


「アニメ研究部の廃部を止めたところで、後悔部の廃部がなくなる訳ではない。そもそも、廃部を止める方法がわからないから、今こうして何も出来ていない訳だし」


 完全に考えを見透かされ、雄一は言葉に詰まる。

 たしかに、雄一は昨日の米田のことを考えていた。


「だけど、米田先輩あんなに泣いて……」


「その先輩からの依頼が、生徒会に負けない、ということだよ。ぼくたちはまず廃部を逃れなければならない」


 諭すような正也の視線に雄一は思わず目を反らす。


「お、落ち着きなさいよ。私も会長に掛け合ってみるから」


 雄一の焦る姿を目にして、おろおろとする優子。

 たしかに、後悔部の面々よりも優子が説得に行く方が可能性としては高いだろう。しかしそれも、ほとんど0なのが1になるかどうかといったところだろう。


「そうだ、ゆーいち。市丸ちゃんは今日学校へは来ていないの?」


「へ? 市丸?」


「そう、一応最初に依頼に来たのは市丸ちゃんだったよね」


 そうだ。これまで後悔部が解決した依頼の中で、雄一が過去に戻ったことにより無かったことになっていない、実績として残る依頼は京奈のものだけ。

 その事情は正也にも話してある。


「つまり実績を会長に見せようということね。たしかに有効な手段ではあるな」


「そう。具体的に記録を残してるわけではないから、本人に証言してもらうのが一番何だけど……」


 なるほど。生徒会からの呼び出しとでも言えば、厳しいテニス部でも中抜けくらいはできるかもしれない。


 が


「……あ。あいつ今日、休みだって言ってたわ」

 

 そうだった。

 そういえば今日夏祭りに行く約束だったのも思い出した。

 なんも準備してねえ!


 別にお洒落な服とか持ってないけど。


――――――


 生徒会室への廊下を後悔部の三人、そして優子を加えた四人は歩いていた。

 現在時刻は午後一時。

 外は今日も快晴で、少し大人しくなるかと思った蝉達も、相変わらず大声で騒いでいる。


 結局あれから二時間考えても他の策は浮かばず、正也の立てた案を京奈本人のいない中で行う形になった。

 とりあえずの策だが、何も無いよりは成果として報告するだけマシ……な筈だ。


 成果。後悔部の上げた成果。

 それはほとんどが無かったことになっている。

 他人の後悔を聞き、それを解決する部活。

 過去に戻ってその後悔の元を断つ。


 つまり、依頼そのものが無かったことになる場合がほとんどだ。

 その依頼があったことも、後悔していたことも、過去に戻った雄一しか覚えていない。


 それを語ったところで、理解してくれる者は事情を知っている数人だけだ。


 雄一はそれでも良いと考えていた。

 人助けは見返りを求めてやるものではない。見返りを求めるのは人助けではなく、自己満足の身勝手な行い。

 自分はそんな自己満足ではなく、本当の意味で他人のために。

 そんな風になりたい。変わりたい。


 だが、それを知っているのも雄一だけ。

 

――――――


 生徒会室の前に到着すると、正也がもう一度作戦のアウトラインを確認する。


「今回はぼくと畔上ちゃんの二人がメインで話すから。ゆーいちと役所ちゃんは話題を振られたときに答えられるようにしておいて」


 わかったわ、と頷く優子に雄一と朱鳥も続く。

 何だかんだでこういうときの正也は頼りになる。頭の回転も速く、話も論理的だ。

 後は会長のあの妙な威圧感に押されないか。


「それじゃあ、入るよ……失礼します。後悔部です」


 ノックをし、声をかけると


「どうぞ」


 前回同様、ぶっきらぼうな返事。ゆっくりとドアを開け、正也を先頭に中に入っていく。


「こんにちは。生徒会長の真中碧です」


 こうして、後悔部の面々と会長との話し合いは始まった。

VS 生徒会長 真中碧

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