幕間 ちょっと特別な日
今回は珍しく京奈視点でのお話です。
本当に短いのでサクッとどうぞ。
校門を入り、そのまま校舎の間にある通路を通って中庭を抜け、体育館の裏側までまっすぐ進んだところ。そこがテニスコートだ。
県立の高校なのでそこまで予算が下ろせなかったのか、狭いスペースギリギリに何とか土のコートが三面作られている。
市丸京奈は、そこで毎日テニスの練習に励んでいる。女子ソフトテニスの強豪校だということもあり、夏休みは朝8時から夜の9時までほぼ毎日練習。
部内で一番手の京奈と言えど、この夏休みの練習は中々堪えるものがある。
朝起きて、疲れの抜けきっていない体を引きずるように布団から這い出し、大きなテニスバックをなんとか背負って学校へと向かう。練習中はずっと投げ出してしまいたい気持ちとの戦いだった。
そんな、華やかとは言えない夏休みを過ごしている京奈。
しかし、今日はいつもと勝手が違う。
そうだ。今日は待ちに待った休日。
練習はなく、完全にオフだ。
しかも、夜には楽しみに待っていたイベントがある。
夏祭り。いつぶりだろう。
好きな男の子と行くのは、もちろん初めて。
ちょっと無理に誘っちゃったかな。でも、あれくらいしないと来てくれないだろうし……
「ゆーくん、少しくらいかわいいって思ってくれるかなぁ」
部屋の鏡で浴衣の着付けを確認しながら、そう呟く。
普段テニスウェアやジャージしか着ない京奈であるが、今日のために浴衣も用意し、短い髪も美容室で整えてもらった。
なんだかいつもと違う自分に少しくすぐったくなる。
だけど、頑張らなきゃ。
だって今日は――
「今日は、特別だから」