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Prologue

 チャイムが鳴る。その音は授業開始の合図と共に、ひとりの男の終わりの合図になった。


 適度に暖められた小さな部屋の中央。回転椅子に腰掛け、こちらを向いたまま項垂れる男の額に赤い筋が落ちていく。足元に転がっているガリレオ温度計は先端が折れ、破損した部分を補うように赤々とした血がそこを覆っていた。元の場所より飛び立った透明な鷹は翼を広げたまま床で眠っている。

 消えた脈を確認し、溢れた血液を間近に見て、僕は呆然と初めてだと思った。

 


 “(ほり)先生”らしき物理教諭は、いかにも死体らしくその最期を遂げた。



 僕の後ろで幾つもの息が短く吸い上げられるのが聞こえる。誰もが目の前の光景に目を背けることなく、ただ沈黙を貫いていた。皆が皆、何かを探っているように思えた。


伊岡(いおか)さん、校長先生にお伝えして警察を呼んだ方がいいでしょう」

「……警察……?」

「これは明らかに、殺人でしょうから」


 うろたえ駆け出した伊岡さんの足音が消え、聞こえるのは時計の秒針の音と、僕のやけに落ち着いた鼓動の音。入口を塞いでいる学生達は瞬きすら忘れているのかもしれない。

 そして聞こえてきた最初の声に、僕は背筋が冷たくなった。


「堀も、人間だったんだな」




 僕は“探し物探偵”だ。本当は何もすべきではないのかもしれない。

 ただ、何かが僕を内側から追い立てる。

 

 “探し物探偵”を名乗るなら、彼等に欠けた大事な部分を見つけ出すべきだと。


 

 

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