夢の中のアイツ~忘れもしない顔~
俺の名前は、柊 海志。私立聖南学園の3年生だ。
お年頃で、雨の中意味もないのに突如として傘を放り捨て投げたりする系男子なのだ。風邪を引くけどな。
そんな俺にはとびきり美人な昔馴染みに出会った。彼女の名前は、 金松 心。親しみを込めて、ここちゃん、と呼ばさしてもらっている。今日帰る際、可愛らしい後輩、 笠植 奈緒子に出会った。彼女は、真面目そうな外見だったが、野暮ったい眼鏡の奥に綺麗な瞳を隠していたようだ。今は、我が妹 柊 かなのお手製料理を完食し終え、これから床へはいる状態だ。
「今晩こそは、言わないぞ。正吉ほど隣に居て欲しい奴なんて居ないんだ。悲しい事は言わないでくれよ。
我ながら恥ずかしい言葉だな」
うつらうつらと気分が良くなってきた。海の流れのように俺は眠りについた。
「海志君。今夜も眠れないのかい? 君は甘えん坊さんだなぁ」
「正吉。ここって夢の中か。あぁ、お前と話したくて来てるんだ」
「嬉しいことを言ってくれるね。でも、もうすぐしたら君とは永遠のお別れだ」
「そんなこと言わないでくれよ。なぁ、正吉。また俺らは、一緒になれるだろう?」
「僕も、僕も、わ、わたっ、私もっ、海志君とずっと一緒にいたいよ。でも、運命は変わらない。
僕らのENDは、来ないんだ。君を付き合わせて、悪いと思ってるんだ」
「何言ってんだよ。一緒になれるんだろう」
「さぁ、朝が始まるよ。これからは僕も、君とは付き合わない。これで最後だ」
「やめろ。やめてくれよ。言わないでくれよ。一人は寂しいんだ」
「大丈夫。君には、沢山の暖かい人がいるんだよ。周りに目を向けてご覧。視えるでしょう」
「待って。待ってくれ。お前程の奴は居ないんだ」
『さようなら。海志君』
朝の光に、全細胞が反応して意識の復旧に務めていて、まだ少しぼんやりとする。
ふわふわとする意識の中、俺は自分の頬が濡れていることに気がついた。いつの間にや、泣いたんだか。今日は、正吉の夢は見なかったようだ。もうさよならは言われないのかな。少しだけ怖いな。
今日に限って学校が休みとは、正吉に会いに行くか。
服は、うむ。チェックの無難な奴で行くか。恥ずかしくないしおかしくもないよな。多分。
かなにも、見てもらうか。厳しいチェックが入りそうだ。チェックだけに。ふふっ。悲しくなってきた。
紺色のショルダーバックを装着して俺は家を出た。
「行ってきます」




