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哀れな羊に安息を
短めです。
違うか?
疑問形のわりにはもう確信している口調だ。現に、確信しているんだろう。僕が知っている以上に、こいつは【大罪】を知っている。
いや、僕を基準にするのは間違ってるな。僕はルシフェルさんから聞いただけなんだし、自分の知識じゃあ、ない。
ただ言えるとしたら事実である【虎】の、
「、!?」
ーーなんて、思っていたのだけれど。
どうやらそれは、甘ったれた考えだったらしく。
ぐちゃり、と。
あまりよろしくない音とともに背後から腹部を貫いた、見覚えのない白い腕に。
僕は、それを思い知らされるのだった。
「お疲れ様」
化け物の青い目が大きく見開かれ、その後ろで少女が口元を押さえていた。後ろから響いた声は、僕を『犬』と呼んでいた彼らと同じように冷え切っていて。
懐かしいとか、他人事みたいな感情が頭の隅を走って。
倒れこんだ硬い地面。
首に掛かったままの赤い宝石が。
サクヤ様から頂いた、『印』が。
僕の中から流れ出た同じ色の液体で、静かに汚れていくのが見えた。
ああ、勿体ないなぁ。




