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第25話:取り合えず集中砲火してみた。

 ソフィーとの奴隷契約が終った後、宿をとりその一室にアキヒトをハブって女達だけで集まった。


 そして、エメルダ、フランティーヌ、そして私の3人とソフィーは、彼女をハーレムに入れる事について話し合っていた。


「これも運命じゃと思って諦めたらどうじゃ?」

「お前を推薦した、わらわの立場と言うものもあるのですよ?」

「誰だっていつかは通る道だし、これも経験と思ってみてはどうかしら?」


 椅子に座るソフィーを取り囲む様にして立ち、それぞれ口を開く私達にソフィーは頭を抱えて叫んだ。


「これは、話し合いとは言いません! 強要です!」


「分からん奴じゃの~。3人で寄ってたかって説得しておるのじゃから、大人しく説得されたらどうじゃ?」


「「説得」に「寄ってたかって」なんていう「修飾語」をつけないで下さい!」


 ソフィーは肩に届かないくらいの短い茶髪を振り乱して叫んでおる。細かい事を気にする奴じゃの。しかしどうするかの? 説得は諦めるか? まぁ始めから料理が出来るという事が優先で、ハーレムに入れるのは絶対条件ではなかった事じゃし……。


 じゃが、私がそう思っていると、エメルダがソフィーの前に屈みこみ彼女と視線の高さを合わせて優しそうな声で話し始めた。


「あなたとても可愛いわね。あなたみたいな娘が奴隷になってしまうなんて、とても悲しい事だと思うわ」


 突然、優しい言葉を掛けられて、ソフィーは戸惑いながらも礼を言う。しかし可愛いと言われた事に照れておるのか少し顔が赤い。


「え? あ、そうですか? え~と、ありがとうございます……」


 そこにエメルダは

「でも……」

 と前置きして、さらに言った。


「あなたみたいな可愛い娘は、それだけにみんなどういう目的であなたを買おうとするか分かるわよね?」


「それは……。分かります」


 ソフィーもそれは分かっていたのか俯いて言った。まぁ当然と言えば当然かの。そこにエメルダがさらに優しい声で話を続けた。もっとも優しいのは声だけで、内容は結構えげつなかったが。


「いえ、分かっていないわ。あなたみたいな可愛い娘なら、よってたかって何人もの男に抱かれたりする事も考えられるわ。あなた初めてなんでしょ? そんなの耐えられるの?」


「そ……んな。いくらなんでもそんな事……」


 あまりの事に青ざめるソフィーを、エメルダは抱きしめてその耳元で囁く。


「でも、大丈夫よ。安心して。ここなら相手はアキヒトだけで良いし、アキヒトは優しいから……。ひどい事はされないわ」


「で……すが……」


 なかなか、うん、と言わぬ娘じゃの。しかし結構心は揺らいでおるようじゃ。さすがハーレム大臣じゃの。いつも通り見事な手腕じゃ。


 ソフィーはどしたものかと視線を泳がせておったが、ふとフランティーヌに目を止めた。そして、不意に首をかしげ、あれ? という表情をする。何か気にかかる事でもあるのか? と思っていると、フランティーヌに話しかけてきた。


「そういえば……。フランティーヌ様も、その……ハーレムの一員……なのですか?」


 ソフィーのど直球な言葉に、フランティーヌの顔が赤くなる。


「えっええ。そうです。わらわもその一員ですから……。お前も怖がる事は無いのです」


「ですが、フランティーヌ様は、隣国の次期国王サミュエル王子との結婚が決まっていたのではないのですか? それがハーレムの一員だなんて……」


 なに? そんな話があったのか? じゃあ順調にいけば、こいつどこぞの国の王妃じゃったのか。普段こやつと仲が良いとはいえぬ私じゃったが、それでも思わずフランティーヌに同情の視線を向けてしまうほどじゃな。


 じゃがフランティーヌは特に落胆した様子も見せず、腰に手をやって憮然とした表情をソフィーに向けた。


「あんな結婚、所詮お父様が勝手に決めた事です。わらわはもうお父様の決めた事に従うのはうんざりなのです。勝手に決められて王妃になるくらいだったら、自分で決めたハーレムの一員の方がずっと幸せと言うものです」


「フランティーヌ様……。ですが……」


「それに、アキヒトはとても優しくて強いのです。優しくても頼りなかったりする男や、強いばかりで乱暴な男達ばかりの中、優しくて強い男性などそうは居ません。わらわはアキヒトと一緒に居れて幸せなのです」


 いや、確かに優しいと言えば優しいが、あやつはかなり頼りないと思うがの。フランティーヌの中でアキヒトは、かなり美化されとるんじゃろうか? これが恋は盲目というやつか。恐ろしい事じゃ。


 じゃが、それはそうとして、ソフィーの心はさらに揺れ動いたらしい。俯いて、う~ん。と唸って考え込んでおる。


 しかし、それにしてもエメルダはともかく、フランティーヌもなにやらソフィーの勧誘に熱心じゃの。アキヒトの事が好きなんじゃったら、アキヒトが他の女を抱くという事は嫌がりそうなもんじゃが。


 とはいえ、そういえばそこは自分が彼女ポジションである「最後の番」になる為に納得したんじゃったな。となると、自分と気心の知れた者が入った方が気が楽という事もあるのかもしれんの。下手な奴を入れてライバルが増えても困るじゃろうし。


 しかし実際どうしたものじゃろうな? 今回は料理が出来る娘が欲しいという事でハーレムに入れるのは絶対条件ではない。じゃが入れられるなら入れるに越した事は無い。そう思って、エメルダに耳打ちをした。


「どうする? 私達3人で変わりばんこにずっと説得し続けるか? 3日3晩ほど寝かせずにずっと説得を続ければ、根を上げて、『うん』と言うかも知れんぞ?」


「何を鬼みたいな事を言っているのよ。そんなの駄目に決まっているでしょ。ハーレムに入れるなら、ちゃんと納得させて入れないと後が面倒よ」


「ふむ。仕方が無いの。それでは一旦ここで説得は中断するか?」


「そうね……。取り合えずそうしましょう。でも、最後に一つ言っておくわ」


 エメルダはそう言うと、改めてソフィーと向き合って、またもや優しげな目で彼女を見た。


「貴女の気が進まないのは仕方がないと思うわ。女の子にとってはとても重要な事なんですもの。アキヒトは優しいし、貴女の気持ちを無視して無理にどうにかしようなんて絶対にしないから、しばらくよく考えて」


「え? 良いんですか?」


 エメルダの言葉に、ソフィーの方が拍子抜けしておるな。渋っていたものの、なんだかんだ言って断りきれないと考えておったという事かの? じゃが、だったらもっと説得を続ければソフィーはハーレムに入ったんじゃないのか? しかし、エメルダはそれが当然の様にソフィーにさらに語りかける。


「貴女は私達の友達のフランティーヌの友達なんでしょ? だったら私達の友達よ。その貴女に無理を言うわけ無いじゃない。私、貴女と友達になれてとても嬉しいのよ」


「あ。はい! 私もエメルダさんとお友達になれて嬉しいです!」


 いきなりのエメルダの友達宣言に、ソフィーも嬉しそうに応じておる。そしてその後エメルダは、ソフィーとフランティーヌに、

「積もる話もあるでしょう。しばらく2人でおしゃべりすると良いわ」

 と、声をかけ私共々部屋をでる。


「あれで良かったのか? しばらく考えさせるなら、初めから説得などする必要なかったのではないか?」


「何を言っているの。飴と鞭は基本じゃない。始めに怖がらせておいて後から優しくする方が効果的なのよ。初めから優しくしたら単に舐められるだけだわ」


「ふむ。そういう意味があったのか。じゃが、ソフィーはなんだかんだ言って断りきれんと考えておったようじゃぞ? じゃったらそのままハーレムに入れてしまった方が手っ取り早かったのではないか?」


 すると、エメルダは少し目を細め、私を睨んできおった。


「言っておくけど、私だって鬼じゃないのよ? 気が進まない子を無理やりハーレムに入れたくないって言うのは本当」


「じゃあ、気が進まない娘をその気にさせる為、色々と仕掛けているって事か?」


「そうよ。始めに怖がらせて次に優しくして、そして最後にお友達になりましょうって言葉。彼女の心の垣根はかなり取り払われているはずよ。私達の仲間に入りたいと考え始めるはず。そしてその仲間と言うのは……」


「ハーレム仲間と言うことかの?」


「まぁそういう事ね。普通の女の子はハーレムの一員になるのなんて嫌悪感を抱くわ。私がさっきやったのはその嫌悪感を取り除く事。もちろんだからと言ってそのハーレムの主のアキヒトの事を、こんな奴に抱かれるのなんて真っ平! って思われたら最後だけどね。フランティーヌの時もそうだったけど、最後はアキヒト次第よ」


「ソフィーがアキヒトに好意を持たないとどうしようも無いって事か?」


「ええ。そういう事ね」


 ふむ。かなり絶望的な気がするの。始めに倒したドラゴンやその後のフェンリルの時の様に、アキヒトが活躍する場面でも見ればともかく、そうでなければ、ただのの○太じゃしの。


 じゃが、私が腕を組み懐疑的な表情をしているのに気付いたのか、エメルダが私に笑いかけてきた。


「大丈夫よ。神様が思うほど、アキヒトも捨てたものじゃないわよ」


 そうか? まぁエメルダは強い者フェチじゃからな。アキヒトへの採点が甘いんじゃろう。


 その後、一旦2人でアキヒトが居る部屋に入りソフィーの事に付いてししばらく喋った後、みなで集まって夕食を食べた。そしてさらにその後。



「アキヒト……。私はな。こ……この宇宙を作ったのじゃ……。お前が……住んでいた星もこの星……も作った。山々やき……ぎを作り、この私達が泊まっている宿……だって私が居なくては存在しな……しなかった。もちろんお前自身……もじゃ。私が居なければなにも……存在しなかったのじゃ……」


「そっか~。そう考えると、神様って凄いよね。神様が居なかったら僕は居なかったのか……」


「そう……じゃ。私の……凄さが分かったか? ふぅ……」


「うん。やっぱり神様って凄いよね」


「じゃ……からな、その神様に……こういう事をさせるのは……間違っていると……思わんか?」


 アキヒトの求めを、例によって「設定」の為断りきれなかった私は、アキヒトの腰の上に跨り、顔を赤らめ呼吸を乱しながらも続けた。


「え? でも前に聞いた時、神様こうするの好きって言ってたよね?」


 くっ。やはり前の言葉責めの時に言わされた事を覚えておったか。どうされるのが良いかを言わされるという、ある意味裸を見られるより恥ずかしい事をさせられた記憶がよみがえる。


 アキヒトに求められても常に拒んでいたにも拘らず、実は好きな……があると言うのはあまりにも恥ずかしい。私の顔はさらに赤くなり、喋る言葉も思わず歯切れが悪くなる。


「じゃから……。それは感情としての事と、理性での判断の違いと言うか……。これはちょっと不味いと言うか……。とにかく駄目じゃ」


「良いのに駄目なの? 僕よく分からないよ」


 どうして? と言う目で問いかけてくるアキヒトから思わず視線をそらす。そうせねば、またもや「設定」が働き素直に答えてしまいそうじゃ。じゃが、私が答えないのでアキヒトは再度問いかけてきた。


「ねえ。何が駄目なの? 神様これが好きなんじゃないの? 僕、神様に喜んで欲しいんだ」


 じゃがそれでも私が必死で口を噤み答えずにいると、アキヒトも繰り返し問いかけてくる。そして遂に私は「設定」に屈した。


「じゃから……。この体勢は私が駄目になるから……駄目じゃ」


「私が駄目になるって……。そんなに良いっていう事?」


 設定が発動している私は、その問いかけにも頷いて答えた。そして、あまりの恥ずかしさに涙目になる。そんな私にアキヒトは笑いかけてきた。


「そうなんだ。良かった。じゃあ動くね」


「ちょっちょっと。ま……て……って。じゃから……私はこの世界で最高の存在で……その私に……あ……こん……ぁ……こんな……事を……あぁ」


 じゃが、アキヒトは私の言葉が耳に入らないのか、サルの様に動き続ける。じゃから駄目だって言っとるじゃろう! もう、やだ~~!



 人のというか、神様の言う事をまったく聞かぬアキヒトの責めでくたくたになった私は、うつ伏せに寝そべりサルから顔をそむけ大きく肩で息をしていた。


 駄目じゃと言っとるのに……。しかもこやつサルじゃからこれで終わりじゃなく、この後しばらくしたらまた復活しおるし。じゃが、しばらくしたらまた……、と思った瞬間、自分の中にむしろ期待する気持ちがかすかによぎった事に、改めて背筋が寒くなった。


 人間の男相手に我を忘れるようでは、神の力が戻った時以前と同じ様に平穏に全宇宙を管理できるか心配になる。……本当に私大丈夫なんじゃろうか?


 そう考えていると、アキヒトが私を後ろから抱き寄せてきた。いくらなんでもさっき終ったばかりですぐに再開は早過ぎるじゃろう。


「アキヒト……。もう少し休ませてくれんかの。いくらなんでもサル過ぎるぞ」


 じゃが、アキヒトは私の言葉に構わずさらに強く私を抱き締めた。しかしどうやら再開と言うつもりではなさそうで、私に語りかけてきた。


「さっき神様、自分は凄い存在だって言ってたよね」


「ああ。言ったが。それが分かっておるなら、もう少し私を敬え」


 私を抱きしめるアキヒトの腕の力がまた少し強くなる。


「僕もずっとそう思ってた。この世界に初めて来た日、僕の理想の女の子の姿になった神様に、僕の彼女だから守れって言われてとても嬉しくて……。でも、それでもどこかで、神様は凄い力を持っているんだからきっと大丈夫なんだと思ってた。でも……僕が人を殺して……それで神様の事を見れなくなった時、神様言ったよね。ただの女の子になってしまってるって」


「ああ、言ったな……」


「神様が本当はどんなに凄くても、僕にとってはもうただの女の子なんだ。僕の大事な彼女なんだ。僕、神様を守るよ。絶対に守る。だから安心してね」


 私を抱きしめるアキヒトの腕の力がまた強くなった。それは少し痛いくらいじゃったが、不快ではなかった。私はその腕に自分の腕を添えた。


 本当は、もっと神様として尊敬し恐れ入ろと言いたかったのじゃが……まぁこれはこれでよしとするか。



挿絵(By みてみん)

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