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~2~ 元カレの甘い罠

「……わかりました…ご主人様が望むなら…」

おもっ苦しい喉から、少しかすれた声が漏れだした。

悪魔だ…悪魔に違いない…



そう思いながらも私は重りをつけたように思い口角を無理やり引き上げ、最高の作り笑いを浮かべる。まぁ、蓮は気づいているだろうが…


一つ、大きな深呼吸を吸って両手をハート形に合わせ、頭を傾かせてウィンクをする。

「萌え萌えキュン、萌え萌えキュン!ご主人様のためにおいしくなぁ~れ!えぃやぁ!」


最上級に恥ずかしい。穴があったら入ってそのまま土をかけてほしい。一生出たくない。



これを毎日、いや本当に毎日なのだ。ここ、キャラリンメイドカフェは年中無休、つまり土、日曜日も開店しているのだ。私は前記の通り仕事が大好きだったので毎日出勤していたのだ。いつの間にかそれが当たり前になり、逆に連続出勤記録が止まるのが嫌だった。だから今日もいやいや言いながら出勤したのだ。私、偉い。




「ふ~ん、ありがと。でも、元気が足りないね。(訳:げっそりしているぞ。)」


嫌味攻撃の反撃か?!


「すみません…実は最近嫌なことがありまして…(訳:お前のせいだ!)」


反撃を反撃で返す…まさに上級者の技だ。


私の勝ちよ!堂々と胸を張って逃げてやる!





自分で自分の勝利を確信していると、蓮が目少し細めて反撃してきたのだ。まさに余裕の顔で…

「じゃあ、話を聞いてあげるよ。あと、ティラミス追加で。」


「は…い?いや、でも…」


「悩み事があるんでしょ?相談に乗るよ?それに俺も相談したいことあるし。」


そう言って、肘をつき顔を少し斜めに傾ける、黒髪イケメン。前髪が少し目にかかり、色っぽさを演出している。その低音な声、女神さまが聞いても惚れること間違いなしのイケボイス。


…言葉も出ません。頭も上がりません。完全完敗です。



いくら元カレで、恨みがある人でもこの究極の美貌の前では無力だ。手足も出ない。



「…はい…じゃあ、お言葉に甘えて…」

やはり、蓮に挑むにはまだ早かったようだ。自分の未熟さを責めたい。いや、でも…別に私が未熟だからじゃなくて、蓮が異次元だからだよね?そうだよね?

この、性格底辺イケメンめ!サイテー男!心なし!






心の中で嫌味を連発(補足:イケメンは嫌味じゃありません)しながら私は注文品のティラミスをとり、超ゆっくりスピードで連の席へ向かう。私は負けない!反抗しまくってやる!今の私は反抗期の子供なんだから!



「ご主人様、ティラミスをお持ちしました。向かいの席にまた失礼しますね。」

そう言って腰を下ろす。下ろすといっても、さっきそこの席に座ったばかりでまだ温かい。


ティラミスを行儀よくフォークで切りながら蓮がしゃべりかけていた。

「じゃあ、みぃれの悩みは何?」

分かってるでしょ!とツッコみたくなるが、全力で止めた。私、頑張った。


そっちがその気ならこっちも手加減しない!(さっきのやり取りからずっと本気を出していたが完敗)



「それが…この店に迷惑客が来るんですよ。毎日いらっしゃいますし、特定のキャストだけをずっと独占するんです…そのキャストはとっっっっても困っているて言っておりまして…」


お前のことだぞ!とできる限りの圧をかけながら話を進めていく。



「それは、それは…そのキャストも大変だね。一回その迷惑客に話してみたら?店の中で話しにくかったらプライベートで会うのも全然いいと思うけどね…」


あ…だめだ。かんっぜんに利用されてる。何?これって誘ってるの?そっちから別れを言ってきたくせに?

少し腹立たしくなってきた。本当にこの人の性格がつかめない。顔がいいからって調子に乗るんじゃないわよ!



「プライベートで会うのは少し危険ですね。でも一応、そのキャストにもアドバイスしておきます。」


この話題を終わらせようと、全力で頭をフル回転させ、慎重に言葉を選ぶ。言葉一つでも間違えれば「勝」と「負」の割合が高くなってしまう。




「そこまで危険じゃないと思うけどな…普通に話をするだけなのに何がそんなに怖いいんだろうね?()()()()()も聞けるのにね…」




()()()()()とは何ですか?」

思わず聞いてしまった。頭より早く口が動いてしまったのだ。こういうシークレットがあればすぐに食いついてしまうという悪い癖は、本当に昔から変わらない。



「そのキャストが得をする事実だよ。多分、そのキャストもずっと知りたかったんだと思うよ?」


()()()()()…即座に私は釣られた。目の前にあるおいしい餌に目を奪われ、釣り竿で釣られた魚になった気分だ。



行ってはダメだ。そんな声が頭の片隅から聞こえるが、威力が弱すぎた。私は完全に行くモードになってしまったのだ。



それを察したのか、蓮は意地悪な笑みを浮かべながらそっとつぶやく。



「これは独り言なんだけどね…もしも、誰かと待ち合わせをするなら”あそこ”がいいと思うな。ちなみに時間は明日の午後2時くらいがちょうどいい。あ、これ独り言だからね?」


わざとらしい独り言…完全に蓮のペースに乗せられたことをいまさら気づく私だったが、もう遅い。手遅れだ。


「そのキャストに伝えますね。たぶん行くでしょうね。」


と、遠回しだが、下手なのかうまいのか微妙な感じの答えになってしまった。



一応、行くと遠回しで言ったつもりなのだが…



通じたのであろう、蓮はニコッと笑って(口角通常より5度くらい上がっただけ)席を立った。


「今日はそろそろ失礼するね。ていうか、客だからそんなにかしこまらなくていいか。じゃあ、また()()、みぃれ。」




その()()はメイドカフェで会うことになるのか、”あそこ”で会うことになるのかはまだわからない。おおよそ、後方だろうが…






そして私は連を出口まで送り、踵を返す。




明日は人生最大の危機に直面しそうだ。





ここまで読んでくださってありがとうございます!


もし少しでも楽しんでいただけたら、

高評価【★★★★★】、ブクマ、感想、シェアなどで応援していただけると励みになります。


第三話はこのあと30分後、3月12日の11時00分に投稿予定です。

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