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スチームパワード アドベンチャー ミアとビアンカ  作者: ELWOOD CRAFTWORKS
第一章 覚醒と陰謀

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第7話「要請」-ひとつの決断

https://50174.mitemin.net/i1108646/

挿絵(By みてみん)



工房の空気が、わずかに張り詰める。


「失礼。国家保安情報局の

サム・ウエストレイクです。

本日は蒼い蒸気の件で、お話を伺いに来ました。」


その微笑みは丁寧だった。

だが、どこか測るような静けさがある。


ビアンカは扉を半分だけ開けたまま、

視線を逸らさない。


「令状は?」


サムは懐から封筒を取り出した。


共和国紋章の封印。


「協力要請です。

強制ではありません。」


「“今は”でしょう。」


サムは否定しなかった。



工房の中。


コラージョが静かにライトを灯す。


ギヤ爺は腕を組み、サムを値踏みするように見ている。


ミアはブレスレットを無意識に触れていた。


反応は、ない。


「それで私達の事をどれくらい把握してるの?」


ミアが問う。


「今回の事故の件を含め、

あなた方の個人的な経歴も把握させて頂きました。」


サムはビアンカに顔を向けて続けた。


「ビアンカ・アンドリーニ 22才


ネオ・ジェノバ生まれ


父親は、ピエトロ王国陸軍に従軍。


除隊後、家業の靴職人を継いだが、新天地を求めてローマン共和国に移住。


この街で工房を開き、同じ出身の女性と結婚。


君は15才でパブリックスクール卒業後、17才でローマン共和国海兵隊に入隊。


射撃の腕を見込まれ、狙撃手として第3師団に所属。


海兵隊伍長として19才の時にイーストウォール諸島の紛争に従軍。


作戦遂行時の機転で大勢の避難住民

を救った事から、女性初しかも最年少で大統領勲章を受勲。


職業軍人として将来を嘱望されるも紛争終了後に除隊し....」

「もう、いいわ!........十分よ。」


ビアンカが遮る。


「あなたが私達の経歴を把握している事は十分に分かったわ。


あとはその事務的な話し方を辞めてくれない?」


ビアンカが苛立つ。



「.............了解した。

それではここからは率直に話そう。」


サムは椅子に座らず立ったまま言った。


「蒼い蒸気はイオン風の暴走だ。」


「イオン風?」


ビアンカとギヤ爺には

聞き慣れない言葉。


サムは説明する。


「航空機エンジンの浮力推進は知っているだろう?」


「ああ、蒸気石の余剰エネルギーだろう?」


とギヤ爺。

彼はこう見えて国家蒸気技術者1級の資格を持つ。


「今まではそれが定説だった。


だが蒸気石には負電圧を加えなければ、浮力を得られる程の推進は得られない。


最近になってその仕組みが一部、科学的に解明されたんだよ。


その浮力エネルギーがイオン風だ。」


「重力に逆らう風ね。」


ビアンカは理解した。


「そのイオン風はある程度の電圧なら制御は簡単だが、この間の事故の様に蒸気リアクターと高電圧が絡むと、容易に制御はできなくなる。


まさに暴走兵器になるんだ。」


サムの話にミアはずっと沈黙していた。


「そして、あの規模の暴走を、あの程度の被害で抑えた存在がある。」


視線が、コラージョへ。


「……君達のバイクだ。」


ビアンカが即座に遮る。


「偶然よ。」


「偶然では説明できない。」


サムの声は冷静だ。


「増幅炉中心部で観測された

共振波形。

それと酷似した周波数が、現場付近で検出されている。」


ミアの瞳がわずかに揺れる。


「……だから?」


「小型蒸気リアクターの存在を確認したい。」


空気が止まる。


ギヤ爺が低く唸る。


「国家が未承認の技術を調べに来たってか。」


「共和国の安全保障のためだ。」


ビアンカの声が鋭くなる。


「安全保障?

それとも、横取り?」


サムはわずかに目を細めた。


「私は企業の人間ではない。」


「違いがあるの?」


「ある。」


その一言に、わずかな重みがあった。



ミアの胸がざわつく。


小型蒸気リアクター。


資源管理局 開発部の研究者だった


父が命を落とした“その先の技術”。


あのとき。


研究所の前で泣き崩れる母。


新聞報道は言った。


“開発責任者の判断ミス”


父は、責任者ではなかった。


だが、責任を押しつけられた。


かつて幼い私にこう言っていた。


「お父さんの仕事はな、世の中を便利にして、皆に喜んでもらえる仕事なんだよ。」


父の笑顔がよぎる。


自分の技術は――


誰のためのものか。


ブレスレットが淡く光る。


だが音声はない。


沈黙。


まるで、選択を委ねるように。



「検査には条件があるわ。」


ミアが顔を上げた。


サムは即答する。


「言ってくれ。」


「現物は提供しない。」


「現時点で、その必要はない。」


「現時点では、ね。」


ビアンカが冷たく言う。


サムは続ける。


「私は内務調査が担当だ。

今回の暴走事故は、

アーリア・インダストリー社と局内の癒着が関係している。既に裏付けは取れている。」


ギヤ爺が鼻を鳴らす。


「やっぱりな。」


「小型リアクターがあるなら、

今後考えられる暴走事故を止められる唯一の技術かもしれない。」


サムは真っ直ぐミアを見る。


「だが同時に、戦争の引き金にもなり得る。」


その言葉は重かった。



工房地下。


ミアのスチームパックやコラージョにも使われている蒸気リアクターの小型モデル。


蒸気は白い。蒼くはない


白い蒸気が静かに循環する。


サムは息を呑んだ。


「……これは。」


「暴走しないわ。」


ミアは言う。


「共振制御波を重ねてる。」


「理論は?」


「未完成。」


ミアは古代文明技術の核心を伏せた。


「だが、成功している。」


サムは理解する。


これは兵器にもなる。


都市を浮かせることもできる。


そして――


落とすことも。


「検査報告は最小限に留めよう。」


サムは言った。


「だが、企業は既に動いている。」


「どういう意味?」


ビアンカが問う。


「政府や議会にロビイストが

資源管理局の民営化を呼びかけている。


更に外国資本参入の規制緩和もね。


共和国政府としては、現時点でグローバリズムの導入は時期尚早と考えている。


この国はまだ若い、西方大陸に比べるとまだまだ国内の企業が育っていない。


それに彼らの手段は強引で、

余りにも悪質だ。今後も同様の事故を画策しているかもしれない。」



「なんてこった!上の連中はわざと評判を落とす様な事を自作自演でやっていた訳か。」


ギヤ爺が憤る。


「アーリア・インダストリー社が入れ知恵をして、

資源管理局の乗っ取りを画策している訳ね。」


ビアンカが腕を組みながら言う。


ミアは考える。


私が動けば、父と同じ道を辿るかもしれない。でも........


ミアが決断する。


「……決めたわ、

今後同様な事案が発生したら

協力する。

私が持っている技術を

私自身が提供するわ。」


コラージョが低く鳴く。


ゴロ……


それは警告の振動。


ブレスレットが光る。


『観測完了。結果を保存します。』


今度は、はっきりと。


ミアはゆっくりと頷いた。


「ビアンカはどうする?」


「1人で全部受けるつもり?

当分、資源管理局からの仕事は無さそうだし付き合うわよ。」


ビアンカの心は決まっていた。


「俺もガラクタ作りじゃ無ければ手伝ってもいいぞ。」


「だからガラクタじゃないって言ってるでしょ!ジジイ!」



サムは帽子をかぶり直す。


「それでは改めて、

君達に国家保安情報局の臨時職員として、今回の事件の調査及び今後想定される事案の対処を要請する。


正式な命令ではない。

だが、国家の意志だ。」


「よろしくね。エージェントウエストレイク」

ビアンカは手を出す。


「サムだ、サムと呼んでくれ。」

「よろしく。エージェント・サム。」

2人は握手する。


「よろしく!サムおじさん!

     (アンクル・サム)」


ミアは飛び上がってサムの背中を叩く。


「!!サムおじ....?」


「慣れるこったな。若いの。」


ギヤ爺がフォローする。


コラージョは低く鳴いている。

不安を感じつつも、

ミアを見守っているようだった。


続く


 


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