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スチームパワード アドベンチャー ミアとビアンカ  作者: ELWOOD CRAFTWORKS
第一章 覚醒と陰謀

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第5話「蒼い蒸気の暴走」 ―坑道の底で目覚めるもの

https://50174.mitemin.net/i1108646/

挿絵(By みてみん)




ウーーーーーーーーーー!!


サイレンが砕石場全体を震わせた。


変圧塔の上空で、蒼い蒸気が螺旋を描いている。


白煙ではない。

光を帯びた、粘るような蒸気。


「……あれは普通じゃない。」


ビアンカは反射的にライフルへ手を伸ばした。


「精製所から出ろ!」

ギヤ爺の怒声が飛ぶ。

「圧力波が来るぞ!」


次の瞬間。


ドォン!!


衝撃波が建物を揺らした。

窓ガラスが砕け散る。


その前に――


黒鉄の猫が滑り込んだ。


尻尾排気管が展開する。

メモリニウムが扇状に広がり、盾のように変形。


衝撃を受け止める。


蒼い蒸気が弾け、霧散する。


「……守った?」


黒鉄猫の喉が鳴る。


ゴロ……ゴロ……


だがそれは安堵の音ではない。


低く、硬い振動。


“警告”。



「制御室がやられた!」

ギヤ爺の義手が高速で回転する。

「上の連中が無理に起動させやがった……!」


「何を?」


「新型増幅炉だ。」


ミアの表情が凍る。


「蒸気核を強制過活性化……?」


「成功すりゃ蒸気石一個で都市が回る。」


「失敗したら?」


ギヤ爺は答えなかった。


代わりに、坑道の奥から音が響く。


キィィィィン……


蒸気でも金属でもない。


共鳴。


黒鉄の猫のライトが蒼へ変わる。


ミアのブレスレットが赤く点滅する。


「……これ、古代式。」


ビアンカの背筋が冷える。


「古代文明の技術?」


「蒸気核に似てる……でも違う。出力が異常。」


変圧塔から青い稲妻が走る。


地面がひび割れる。


「このままじゃ暴走する!」


「止められるの!?」


「理論上は!」


「理論上!?」


ミアはスチームパックを起動した。


キュィィィィン……


一瞬浮き上がり、すぐに停止する。


「坑道の中まで行くわ! 出力源を止める!」


「死ぬぞ、嬢ちゃん達。」

ギヤ爺の声が低く響く。


「死なない。」


ミアは即答した。


黒鉄の猫が前に出る。


尻尾がうねる。


“行く”と。


ビアンカは跨った。


「……行くわよ!」


蒸気が爆ぜる。


坑道へ突入。



内部は蒼い光で満ちていた。


歪む蒸気管。

振動する床。


奥に、巨大な円筒装置。


その中心で蒸気石が異様に輝いている。


「……あれが増幅炉。」


ミアの声が震える。


「蒸気核じゃない……リアクター構造。」


誰かが古代技術を模倣した。


無理やり。


「止め方は!?」


「圧力バルブを逆制御!」


「どこ!?」


「上!」


ミアはスチームパックを起動させ

上昇する。


その瞬間。


ドォォン!!


冷却配管が破裂した。


蒼い蒸気が噴き上がる。


破片が飛ぶ。


ガンッ!!


金属片がミアのスチームパックを直撃した。


ジェットが乱れる。


「ミア!」


推進が途絶える。


落下。


「キャーーーッ!」


地面に叩きつけられ、

意識が闇へ沈む。


⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻



暗闇。


ノイズ。


「––は—この––惑星––友人—–」


映像が断片的に流れる。


重力補正室。


白いカプセル。


知らない空。


「猫は連れて来られなかった。」


声だけが残る。


「冷凍睡眠に耐えられないからね。」


重い世界。


三倍の重力。


医学的処置。


初めて出会った

二足歩行の猫族。


翻訳機。


会話はできる。


だが――


名前が、翻訳できない。


犬族は鳴き声。


猫族は。


ゴロゴロ。


喉鳴らし。


「彼は猫族、

黒毛の少年だった。」


森。


巨大なイノシシ。


庇う影。


黒毛の少年。


勇敢な少年。


「君に名前をあげたい。」


沈黙。


笑顔。


「君の名は――」


ノイズが消える。


「コラージョ。」


勇気。


元気。


そして、勇敢。


私の故郷の言葉。


ゴロ……


それは、名前。


⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻


「ミア!」


意識が戻る。


視界が揺れる。


ビアンカが自分を抱えている。


増幅炉はまだ唸っている。


蒼い蒸気が渦を巻く。


キィィィィィン……


共鳴が頂点へ達する。


その時。


黒鉄の猫が、吠えた。


ROOOOOOAR!!


蒼い蒸気が一斉に吸い寄せられる。


増幅炉とバイクが共振する。


制御。


蒼い光が収束する。


静寂。


増幅炉が沈黙する。


蒸気が消える。


「……止まった。」


ビアンカの声が震える。


坑道入口でギヤ爺が立ち尽くしている。


「嬢ちゃんら……何を持ち込んだ?」


黒鉄の猫のライトがゆっくりと通常色へ戻る。


ゴロ……


今度は、柔らかな音。


ミアは立ち上がる。


黒鉄の猫に触れる。


まだ微かに温かい。


「あなた……」


喉が震える。


「コラージョ、ね。」


勇気。


あの日の名。


ライトが、一度だけ強く瞬いた。


返事のように。


ゴロ。


増幅炉の中心。


砕けた蒸気石の奥で、古代紋様が淡く光る。


ミアのブレスレットが微かに反応する。


「観測完了。結果を保存します。」


小さな音声。


ギヤ爺が空を見上げる。


「上は黙っちゃいねえな……」


ビアンカは黒鉄の猫を見つめる。


「……あなた、一体何なの?」


蒸気の残り香の中。


黒鉄の猫は、ただ静かに喉を鳴らした。


続く。

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