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スチームパワード アドベンチャー ミアとビアンカ  作者: ELWOOD CRAFTWORKS
第一章 覚醒と陰謀

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第4話「ギヤ爺」 ―変圧塔の唸り

https://50174.mitemin.net/i1108646/

挿絵(By みてみん)



砕石場の門が軋んだ。


「……やっと着いたわね。」


ビアンカは肩を回した。


バイカーバンデットとの戦闘から半日。

回収した蒸気石サンプルを精製するため、

二人は北方採掘場へきた。


だが、門をくぐった瞬間。


黒鉄の猫のライトが、わずかに揺れた。


ゴロ……


低い振動。


「どうしたの?」


ミアがカウルを撫でる。


尻尾排気管が、ぴくりと反応した。


まるで――

空気の変化を探るように。


「止まりな! よそ者。」


背後から低い声。


振り返ると、白髭の大柄な老人が立っていた。


皮のロングコート。

左腕は蒸気駆動の義手。


無数の小さな歯車が露出している。


彼がギヤ爺と呼ばれる所以。


左腕を動かすたび、

キシキシと金属が噛み合う。


「なんだ、ハンターの嬢ちゃんか。」


「ギヤ爺!脅かさないでよ。」


ビアンカは息をつく。


「ジジイ久しぶり!」


「チビ猫も一緒か。

相変わらず口が悪いな。」


「あんたには言われたくないわ。」


ミアが頬を膨らませる。


「義手の調子は?」


ギヤ爺は一瞬、無言で義手を握る。


カチ、カチ、と歯車が正確に噛み合う。


「フン……まあまあだな。」


ミアがむっとする。


ビアンカが小声で囁く。


「それ、最高評価よ。」


だが。


ギヤ爺の視線は、すぐにバイクへ向いた。


「……なんだ、これは。」


しゃがみ込み、エンジン部を覗く。


その目が、わずかに細まる。


「こんな構造、見たことがねえ。

どこのメーカーだ?」


「メーカー? ないわ。」


ミアが胸を張る。


「この子は、わたしが組んだの。」


ギヤ爺の眉が、ぴくりと動く。


「……名無しの鉄屑か。」


「鉄屑じゃないもん!」


その瞬間。


黒鉄の猫の双眸が、赤く細く光った。


ギヤ爺は一瞬だけ黙る。


「……面白えカラクリだな。」


だがその声には、

警戒が混じっていた。



「今日は何の用だ。」


「新しい採掘ポイントを見つけたの。

サンプルの精製を。」


その言葉に、ギヤ爺の表情が曇る。


「……そうか。」


視線が、坑道奥へ向いた。


「また“上”が騒ぐな。」


上――資源管理局。


この若い国を動かす巨大機関。


蒸気石の埋蔵量は国の命綱。


それゆえに――

利権も、秘密も多い。


「精製所はこっちだ。」


歩き出すギヤ爺。


その背中は、どこか重い。



精製所に入ると、

機械音が反響する。


ビアンカはサンプル石を小型精製機へ投入した。


「十分で終わるわ。」


振り返ると。


ミアが窓の外を見ていた。


「……あんな建物あった?」


ビアンカも視線を向ける。


坑道入口の向かい。


以前はなかった建物。


屋根の上に、巨大な変圧塔。


無数の配線。


鉄箱の列。


「蒸気タービン?」


「違う。」


ミアの声が低くなる。


「変圧器……でも規模が大きすぎる。」


黒鉄の猫のライトが、ゆっくり青く変わる。


ゴロ……ゴロ……


今度は、喜びの喉鳴らしではない。


低周波の共振。


「……電圧が異常。」


ミアが袖を捲る。


ブレスレットを軽く叩く。


空中をなぞる指先。


だが今度は、

わずかに焦りが見える。


「ミア、それ何をしてるの?」


「……おまじない。」


言葉は軽い。


だが顔色は違う。


「この電力消費……蒸気核じゃ足りない。」


ビアンカの胸がざわつく。


蒸気核で足りない?


なら――


「まさか……リアクター?」


その瞬間。


黒鉄の猫のライトが一瞬、強く閃いた。


ブレスレットが、青から赤へ。


ミアの瞳が見開かれる。


「まずい……この出力は暴走する!」


次の瞬間。


ウーーーーーーーーーー!!


場内にサイレンが鳴り響いた。


地面が震える。


遠くの建物から、蒸気が噴き上がる。


だがそれは白煙ではない。


淡い青。


異質な光を帯びた蒸気。


「……あれは普通の蒸気じゃない。」


ビアンカが呟く。


ギヤ爺が制御室から飛び出してくる。


「クソ……やりやがったな、上の連中……!」


「何を?」


「聞くな!」


義手の歯車が高速回転する。


キィィィン……


坑道奥から、低い唸り。


蒸気でも、機械音でもない。


もっと深い。


黒鉄の猫が、尻尾を大きくうねらせた。


まるで――

“呼ばれている”かのように。


ミアが小さく呟く。


「……観測対象、起動。」


ビアンカは聞き取れない。


だが直感する。


これは事故ではない。


誰かが、何かを“動かした”。


そしてその何かは、


蒸気の時代を――

壊しかねない。


サイレンは鳴り止まない。


黒鉄の猫の瞳が、

静かに輝いた。


続く。


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