第17話「バイカーズホテル」ー束の間の休息
カステルッチオに到着した日の夕方。
昼食後、市内を散策した後、
郊外にある大きな通りを2人を乗せたコラージョが走っている。
後方には警護役の局員が乗った車。
「このあたりよ。」
ブレスレットを見ながらミアが叫ぶ。
「それにしても流石に首都の郊外よね。こんなにバイカーズホテルが並んでいるなんて.....あっ! あったわ。」
ビアンカは指定された宿泊先の看板を見つける。
2人を乗せたコラージョが駐車場に入る。
「ここね。サムおじさんが予約してくれたバイカーズホテルは。」
コラージョから勢いよく飛び降りたミアが建物を見廻す。
「うん、良い感じじゃない。」
2人は市内のホテルではなく、バイカーズホテルでの滞在をサムに要望した。
サムは手配後に警護の局員に連絡。
昼食を終えレストランから出て来た2人に伝えられる。
その際ミアは、車のグローブボックスから伸びた電話の受話器を局員が手にしているのに注目する。
「うわー! 何それ? 電話なの?」
警護の局員は、少し圧倒されながらも説明する。
「自動車電話です。当局の車両に標準装備されています。」
「初めて見るわ。これって市販されているの?」
ビアンカにも珍しいようだ。
「これは当局の装備開発部が発明したもので、市販されていません。」
警護の局員がそう言うと
「装備開発部?面白そうね。」
ミアの目が輝く。
ミアの技術者....いや発明家のスイッチがまた入ったと思い、ビアンカは苦笑いする。
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ホテルの受付に向かう2人。
バイカーズホテルは、バイク乗り向けに作られた幹線道路沿いにある宿泊施設である。
各部屋の前に駐車場があり、最近では車を利用した宿泊者も増えている。
2人の宿泊先はコテージタイプで、一戸毎に分かれている。
「ホテルの周りも賑やかね。」
ビアンカがホテル周辺を見廻す。
通り沿いに立ち並ぶ建物。
レストラン。
カフェ。
雑貨屋。
何台も駐車されてるスチームバイク。
周辺を歩く観光客。
「人通りも多いわ。」
「近くに観光名所があるのかしら?」
ビアンカが疑問に思う。
「わかったわ。これよ!」
ミアがホテルの受付脇のポスターを指差す。
「第10回ローマングランプリ ロードレース?」
ビアンカがポスターを見る。
世界各国のスチームバイクメーカーが集まるレースのようだ。
「近くにサーキットがあるみたいよ。」
ミアがブレスレットを見ながら言う。
「予選はもう始まっているみたいね。」
「決勝は来週か.....」
道理で人が多い事に納得するビアンカ。
「......見たい。」
ミアが呟く。
「ミア、観光で来た訳じゃないのよ。」
やんわりと窘めるビアンカ。
「うー分かってる.....」
不満顔なミアを連れて、ビアンカはチェックインを済ませる。
近くのレストランで夕食を済ませ、
警護の局員から明日の出頭時間を告げられる。
コテージで寛ぐ2人....
「そういえばギヤ爺に留守を任せたけど大丈夫かしら?」
ビアンカは本来、臨時職員として一緒に来るはずだったギヤ爺を心配する。
「ジジイなら心配ないわよー。」
ベットの上でクッキーの様なものを食べながらミアが言う。
「元々、休みを利用して自分のスチームバイクを弄りたかったみたいだから....んっ!このタラッリ美味しい!」
「ちょっとミア!食べ過ぎじゃない?」
ビアンカは半ば呆れながら続ける。
「もう......
でも、バイクを弄るならあそこは丁度良い場所ね。」
「そうよ!工具も基本パーツも揃ってるし.....あっ。料金取るべきかしら?」
ミアが悪い笑顔になる。
「まあ、その辺ギヤ爺はちゃんとしてるから心配ないんじゃない。」
ビアンカは思わず苦笑い。
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同じ頃。
ネオ・ジェノバ港。
ミアの工房。
工房の入り口前で大きな男が、別の男の首を背後から締め上げている。
締め上げている金属製の腕から聞こえる歯車の音。
「ウッ!グググッ....................。」
首を締め上げられた男は気を失う。
「フン。これで2人目か........」
大男はギヤ爺だった。
(.....この3日で、2人目のコソ泥だ。よっぽどこの辺の治安が悪くなったか..........チビ猫のモノに興味ある奴が増えたのか.......)
ギヤ爺は、気を失った男を肩に担ぐ。
(.....まあ、予想はしていたが、チビ猫に料金でも請求するか.....)
ギヤ爺はニヤリとしながら、この3日間で改造した自分のバイクに男を放り込む。
ギヤ爺のバイクは新たにサイドカーが取り付けられていた。
(......もっとも、あのカラクリ付きの扉じゃコソ泥は入る事はできねえだろうが......)
そう思いながら、ギヤ爺は警察へバイクを走らせた。
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ミアの工房内。
地下室の入口に、
かなり厚みのある鉄扉がある。
12桁の数字ダイヤルを合わせ、
蒸気圧で開閉する仕組み。
地下室には『未知の技術』が眠っている。
そしてその価値は、
まだこの世界の誰も、
本当の意味では理解していなかった。
続く




