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スチームパワード アドベンチャー ミアとビアンカ  作者: ELWOOD CRAFTWORKS
第一章 覚醒と陰謀

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第16話「報告」ー顛末と陰謀の経過


国家保安情報局

局長執務室


サムは重厚な扉を開け執務室に入る。


直ぐに目の前が白煙に覆われる。


その白煙は部屋中全体をうっすらと漂っている。


特徴的なハーブの香り。


嫌な香りでは無いが、ここまで充満していると流石に咽せそうになる。


白煙は部屋の奥、大きく重厚感のある高級な両袖机に座っている男の指先から立ち昇っていた。


年齢は五十代後半.....と言われている。


大柄な体躯。


スーツの袖から伸びた手は黒毛の体毛に覆われている。


同じく黒毛の体毛に覆われている頭からは耳がピンと伸びている。


そう。

一見、年齢がハッキリわからないのは彼が犬族(クー・シー)だから。


彼は右手の指に健康葉巻(ハーブシガー)を持ちつつ、サムの報告書にずっと目を通している。


「掛けたまえ。」


局長はサムを見ないまま、

机の前の椅子に座るよう即す。


「バーナード局長。

その前に窓を開ける許可を。」


サムは堪らず進言する。


「うん? ああ、すまない。」


局長はやっと顔を上げた。


サムはそのまま部屋の両開きの窓を開け、椅子に戻り着席する。


「サム。報告書は読ませてもらった。」


サムは軽く一礼する。


「さて、私の記憶が正しければ、


君は今頃ネオ・ジェノバで

資源管理局の研究所を内偵し、


対象者2名の監視を続けている筈だが…..


どういう訳か君は早々と内偵を切り上げ、監視対象者2名を臨時職員として雇ってここへ戻って来た。」


サムが答える。


「その理由と経緯は報告書に....」


「確かに、君の今回の判断は適切だと思う。」


「だが、その理由を含めた報告書の内容は、局内では私以外明かせない状況になった。」


バーナードはサムの一連の行動について、他の局員には事情を説明できない事を告げた。


サムが直感する。


「デアベルドミッテ側から何か?」


バーナードは眉間に皺を寄せ、


「外側だけでない。内側からもだ。」


「局内でも今回の君の行動に不信感を持つ者がいるだろう。」


サムは落ち着いた顔で答える。


「不信感を持つだけなら大丈夫でしょう。」


「但し、局内で妨害する者がいなければ.....」


「流石にそこまでするとは思えませんが.....」


バーナードは両肘を机に立て手を組み、


「申し訳ないが、それは私でも断言は出来ん。」


「実は民営化推進派の議員連中が、今回の極秘の内務調査に勘づいている。」


「おそらく

議員の息の掛かった局員が情報を漏らしているんだろう。」


バーナードは続ける。


「それからこの間の列車襲撃事件だが、陸軍と連邦警察から報告があった。」


「結論から言うと、事件とアーリア・インダストリーと結び付ける証拠は見つからなかったそうだ。」


「反抗に使われた装甲車の残骸を調べたが、製造元は勿論、ネジ一本に至るまでナンバー等の刻印も全くなかったらしい。」


サムは険しい顔で、


「クラインは釈放されたのですね?」


「ああ。君も予想していたと思うが、デアベルドミッテ大使館付きの国際弁護士が来た。」


「普通、民間人なら大使館の職員が来て対処するはずなのに有り得ない事だ。」


「余程の重要人物だと?」


「弁護士はその事は言及しなかったよ。」


「あくまでも自国民の人権を主張して詰め寄ってきた。」


サムは少し前に屈み、


「局長、いずれにせよ我が国の領土で軍隊並みに武装した集団が国民を襲って来たのは事実です。」


「調査は続行すべきかと....」


「無論だ、調査は続ける。」


「今回の事件は、大統領が懸念されている問題に繋がっていると私は推測する。」


バーナードは吸っていた葉巻を灰皿に揉み消す。


「ブリタニア共和国に対抗する、西方諸国の経済共同体の設立ですか?」


サムは連日、新聞で報道されている内容を思い出す。


「経済だけではなく軍事的にも画策している。」


サムはありえないと思った。


「軍事共同体は仮想敵国があってこそ成り立ちます。


ブリタニアをそこまで....?」


「ブリタニアだけではないだろう。」


バーナードの一言にサムは呟く。


「我が国もですか......」


「君の報告内容は、大統領と国防大臣に直接報告するつもりだ。」


「それから私自身の所見も報告したい。」


「.......と言いますと?」


バーナードは立ち上がり、窓際へ歩く。


カステルッチの街が見える。


蒸気塔。


電力網。


人の流れ。


「この国は若い。」


静かに言う。


「だが成長が早すぎる。」


サムは黙って聞く。


「エネルギー需要は増大。」


「蒸気石の供給は逼迫。」


「そこに“未知の技術”だ。」


振り返る。


「誰が欲しがると思う?」


サムは答える。


「……すべての国が欲しがるのでは?」


「違う。」


バーナードは即答した。


「“支配したい者”だ。」


空気が変わる。


「あの2人は、我が国にとって信用に値するかね?」


サムの表情がわずかに硬くなる。


「彼女達に当然支配欲はありません。」


「特にミア・デラ・フォルトゥナ。」


「私が見るに


彼女にとっての技術とは.....


『人の幸福』と


『守るため』の


『希望』だと思います。」


バーナードが静かに言う。


「彼女の技術。」


「小型蒸気リアクター。」


「共振制御。」


「……危険だ。」


サムは静かに言う。


「私も同意です。」


バーナードは続ける。


「だが同時に――」


「唯一の希望であり対抗手段でもある。」



沈黙。


バーナードの視線が刺さる。


「サム、明日2人を連れてここに出頭する様に。」


バーナードは直接この目で確かたいと思った。


「それから彼女達を

装備開発部のクエンティンに引き合わてくれ。


........以上だ。」


「.....解りました。では、明日。」


サムは頷き部屋を後にした。


続く

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