第14話「覚悟」-少女の決意
平原。
コラージョが立っている。
黒鉄の猫。
爆発した装甲車の残骸の前。
遠くから迫る蒸気バイク部隊。
十数台。
隊長が叫ぶ。
「目標確認!」
「捕獲する!」
コラージョのリアクターが唸る。
ヴォォォォ……
蒸気が漏れる。
だが。
操縦室の窓から見るミアの顔が曇る。
ブレスレットが光る。
『監視対象のリアクターに温度異常』
「……だめ。」
サムが聞く。
「何が?」
ミアは低く言う。
「リアクターが熱い。」
「連続共振の限界。」
サムが理解する。
「過負荷か。」
ミアは頷く。
「このままだと止まる。」
⸻
コラージョが振り返る。
列車を見る。
スチームライナーはゆっくり加速している。
蒸気が上がる。
黒鉄の猫は動いた。
線路へ向かって走る。
蒸気バイク部隊が追う。
ガガガガガ!!
蒸気エンジンが唸る。
隊長が笑う。
「逃げる気か!」
⸻
列車の後部。
貨物車。
急いで移動した三人。
ミアは後部扉を開けた。
貨物車の外は搬入用のデッキになっている。
ビアンカが叫ぶ。
「何してるの!?」
ミアは真剣だった。
「コラージョを戻すの。」
サムが止める。
「危険だ。」
ミアは言う。
「このまま置いていけないでしょ!」
サムは数秒考えた。
そして決めた。
「……わかった。」
ビアンカが笑う。
「ミアの事、理解してきた様ね。」
サムは冷静に続ける。
「だが一回だけだ。」
「失敗したら諦めろ。」
ミアは頷く。
⸻
列車は加速している。
平原の線路。
コラージョが追いつく。
蒸気バイク部隊も迫る。
ガガガガガ!!
銃声。
弾丸がコラージョの装甲に当たる。
火花。
ミアが叫ぶ。
「コラージョ!」
尻尾から高圧蒸気を噴射し、
黒鉄の猫が跳んだ。
ドン!!
貨物車のデッキへ。
だが。
蒸気バイクが接近する。
一台。
二台。
三台。
ビアンカがライフルを撃つ。
バスッ!!
先頭のバイクが転倒。
サムがリボルバーを撃つ。
バン!バン!
二台目が蒸気漏れ。
それでも追ってくる。
ミアは叫ぶ。
「コラージョ中へ!」
黒鉄の猫が車両へ入る。
その瞬間。
サムが叫ぶ。
「閉めろ!」
ミアがレバーを引く。
ガン!!
貨物扉が閉まる。
外ではバイクが並走している。
隊長が叫ぶ。
「撃て!」
蒸気弾。
ドォン!!
列車の後部に着弾。
車両が揺れる。
ミアが倒れる。
ビアンカが支える。
「大丈夫?」
ミアは頷く。
「うん……。」
コラージョは静かに座っていた。
蒸気が漏れている。
リアクターが熱い。
ミアが撫でる。
「無茶したわね。」
コラージョが低く鳴く。
ゴロ……
⸻
列車はさらに加速する。
蒸気バイク部隊が離れていく。
追撃は止まった。
サムは窓の外を見る。
「……退いた。」
ビアンカが息を吐く。
「やっと終わった。」
サムは一息ついて、貨物に囲まれたスペースを確認した。
一転し、サムは驚愕する。
「どうやらもう1人いた様だ。」
そこには拘束した2人組が、無残な姿で息絶えていた。
「!......」
ビアンカは驚きで言葉を失う。
「どうしたの?.......!!!」
ミアも驚きで声にならない。
同時に、恐怖感が襲う。
エージェントとしての具体的な現実が
そこにあった。
これは避けられない事なのか?
自分が下した決断に疑問が湧き上がる。
「ミア.......」
ビアンカが茫然とするミアを抱きしめる。
サムは横たわる骸を検分する。
2人とも眉間に銃創。
「ここまで厄介な相手だとは....」
軍隊を使った奇襲。
情報漏洩防止の徹底ぶり。
これは単なる企業の陰謀とは違う。
クラインの言葉を思い出す。
『この世界では、企業は国家より強いこともあるそうですよ。』
資源管理局の民営化工作。
更に、
ミアの技術が狙われている事がこれでハッキリした。
サムは2人に向かって言う。
「こんな時に酷だと思うが.....」
「これ以上この件に関わる覚悟があるか、君達に改めて確認したい。」
列車は走っている。
ガシャン……ガシャン……
一定のリズム。
だが、その中に緊張が混ざっていた。
サムが続けて言う。
「ここから先は、もう日常には戻れない。」
「それでも関わるか?」
列車の音だけが響く。
ミアはゆっくり顔を上げた。
「……戻れないのは、もう分かってる。」
小さく言う。
「コラージョが狙われた時点で。」
サムは何も言わない。
ミアは続ける。
「それに……」
少し迷う。
「私の技術も、狙われてる。」
ビアンカが横で頷く。
「そうね。」
ミアの目が少しだけ強くなる。
「だったら逃げても意味ない。」
一拍。
「向き合う。」
静かな決意だった。
サムはそれを見て、小さく頷く。
「……了解した。」
コラージョはミア達を見つめるように
低く鳴き続ける........
サムが言った。
「カステルッチに着いたらもう後戻りはできない。」
ミアは小さく頷いた。
コラージョが静かに座っている。
まだ熱を持っている。
ミアはそっと撫でた。
「……一緒に行こう。」
ゴロ……
低い音。
それは答えだった。
遠く。
カステルッチの灯りが、かすかに見え始めていた。
だがその光は安全ではない。
続く




