【第2話】異世界 ーリズとの出会いー
「私はリズ・ニヒリスター!うーんとね、この辺りの土地の領主?みたいな感じかな」
「りょ、領主?ってことは、君は貴族......?」
まず、天国じゃなかったことに少しがっかりした。言葉は通用するし、なんだかよく見る異世界転生って感じか。
不思議と驚かなかった。というより、驚きのリアクションの仕方が分からなかったというか......。
「私の話なんていいの!それよりあなた、どこから来たの?珍しい名前ね。タカハシ?」
"高橋 蒼空"という名前はこの世界じゃ珍しいようだ。まぁ、当たり前っちゃ当たり前だけど。
「え、あっと......僕、迷子で......この辺のこと、知りたいな......みたいな」
『どこから来たの?』という問いの答えとして、正しくないのは自分でも分かった。でも今はとにかく、この世界のことが知りたかった。
「迷子?あ、じゃあ屋敷においでよ!地図があるから、見せてあげる!」
「う、うん......ありがと」
リズは僕と同年代か1つ下くらいに見えるけど、その割に幼稚な喋り方だ。前の世界で会っていれば、きっと僕とは無縁だっただろう。だからこそ、この子との会話は少し楽しかった。
少し森に進むと、そこに大きな屋敷があった。お城と言うほどではないけど、そのあまりの雰囲気に今度はちょっと驚いてしまった。
「ここ!入って?」
「あ、うん......お邪魔します......」
(あれ、誰もいないな......まるで貸切だぞ)
「こっちこっち!えーっとね」
そう言うとガサゴソと物置を漁り始めた。僕はというと、屋敷を漂う独特な木の匂いに夢中になっていた。
「あ、これかな?はい、どーぞ!」
よく考えると、女の子と話すなんて何年ぶりだろう。いきなり恥ずかしくなって、黙って地図を受け取ってしまった。
「どう?どっちから来たか分かる?」
リズは優しく聞いてくれたけど、実際には僕は地図を見て、帰る宛てがどこにもないことを再認識した。
(どうしよう。なんてせっかく地図見せてくれたのに、なんて言おう......。それに、これからどうやって生きればいいんだ......。)
いきなり不安でいっぱいになって、涙が込み上げてきてしまった。事故のときと言い、よく泣くな。僕は。
そんな様子を見て、リズはまた優しく言ってくれた。
「帰り道が分からないの?もし良ければ、ウチに泊まる?数日くらいなら全然構わないけど......」
さっきまで"幼稚だ"なんて思ってたこの子が、途端に頼りに見えた。
「うん......い、いいの......?」
涙はなんとか引っ込んだけど、不安は膨らんだまま。でも同時に安堵して、また同時にあのときの、"死にたい"って考えが脳裏をよぎってしまった。
「あの......本当ありがとう......ごめん......」
「いいのいいの!私の村、子供が少ないからさ。タカハシの話、聞かせて?」
その喋り方は全然幼稚なんかじゃなかった。




