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71. 遊戯②

 「さてと、次は最初に見つかったガーランドが捜す番ね」


 「その前に提案があります!」


 アンネリーゼが2回戦目を開始しようとすると、最初に見つかり鬼役になったガーランドが手を挙げた。


 「何かしら?」


 「俺だけだと殿下とミレニア殿を見つけられる自信がありません!」


 「正直なのは良い事だけれど、諦めるのが早過ぎるのではなくて?」


 「だって前回も2人は最後まで見つからなかったじゃないですか…どんだけ時間が掛かると思ってるんです?」


 前回…リーゼロッテがアンネリーゼとの隠れんぼを嫌がる切っ掛けとなった日の事だ。

 その日も今日と同じように侍女達までも巻き込んで開催したのだが、夕方になっても2人だけが見つからず、結局夕飯前に自ら出てくるまで誰も見つけられなかったのだ。

 ちなみに、その日ミレニアとして参加していたのはターニャである。

 その日の隠れんぼは庭園ではなく皇宮内で行われ、ターニャは屋根裏、アンネリーゼは使われていない部屋にある暖炉の煙突内に隠れていたらしく、2人が埃と蜘蛛の巣、煤まみれで出て来た時は軽い騒ぎになってしまった程だ。

 それらを踏まえ、ガーランドは事前に制限をかけようと画策したのだ。


 「取り敢えずは聞いてあげるけれど、隠れる場所を制限し過ぎるのは駄目よ?私だって前回の件を考慮して屋内より隠れる場所が少ない庭園周辺だけにしたのだし、これ以上制限したら成り立たなくなるもの」


 「そこは大丈夫です…隠れる場所は制限しません。

 ただし、前回みたいに最後まで2人が見つからないなんて事になったら困りますので、見つかった人は捜す側に加わるというのはどうでしょう?」


 「私は良いけれど…ミレニアはどうかしら?」


 「私も問題ございません」


 アンネリーゼとミレーナが了承し、レベッカとジェラール以外の全員が安堵する。

 皆の反応を見ていたレベッカとジェラールは、これは一筋縄ではいかないと改めて気を引き締めた。


 「じゃあ始めましょうか?ガーランドは100数えてから捜しに来なさいね」


 「うっす!では数えます!」


 ガーランドが数え始め、全員がバラバラに駆け出す。

 アンネリーゼとミレーナはいつの間に動き出していたのか既にその場にはおらず、レベッカとジェラールは一瞬呆気に取られつつも皆から数秒遅れてその場を離れた。


 「さてと、捜しますかね…て、何やってんのカミラ殿…」


 ガゼボで100まで数えたガーランドが歩き出し目の前の生垣の裏を見ると、そこにはカミラが立っていた。


 「見つかってしまいましたね…」


 「見つかったって言うより隠れる気無かったよね?」


 「人手が多い方があの2人を早く見つけられるじゃないですか…また夕方になるなんて嫌でしょう?ですから協力して差し上げます」


 「あぁ、確かに…マジであの2人は別格だから助かるよ。

 じゃあ俺は向こうに行くからカミラ殿は反対側を頼んで良いかな?」


 「承知しました…あ、ひとつだけお願いがあるのですがよろしいですか?」


 歩き出したガーランドはカミラに呼び止められ立ち止まる。


 「どうかした?」


 「リーゼロッテ様がいると分かっても極力見て見ぬふりをしてあげてください…少しでも楽しんでいただけた方が良いと思いますので」


 「了解…たぶんリーゼロッテ殿下の近くには念の為侍女殿も隠れているだろうし、もし見つけたらそっちも見なかった事にしておくよ」


 「ありがとうございます…では、また後ほど」


 2人は手分けして捜すため、それぞれ逆の方向に向かう。

 まず、ガーランドはジェラールを目標に定めつつ他のメンバーを捜す事にした…理由はジェラールの身長だ。

 ガーランドの身長は180cm前後、ジェラールは190cm前後とガーランドよりも高く、隠れるられる場所が制限されるからだ。

 庭園を管理する庭師の小屋に着いたガーランドは周囲を確認し、木箱に乗って屋根の上を確認する。


 「この辺くらいしかなさそうなんだよな…よっと!」


 「む…見つかったか」


 「やっぱりね、ここしかないと思ってたんだよ」


 ガーランドはニヤリと笑い、ジェラールも諦めたように小さく笑って屋根から飛び降りた。


 「身体が大きいというのは騎士としては便利だが、こういうお遊びには向いていないな」


 「だよな!俺なんて真っ先に見つかったし…」


 「だが懐かしいものだ…こうして童心に帰れる時間があるのもアンネリーゼ殿下のおかげだろう」


 「それはそう…おかげ様で楽しくやらせて貰ってるよ」


 「さて、では私も他のメンバーを探そう」


 「じゃあ俺はあっち見てくるからまた後でガゼボで落ち合おう」


 ガーランドは手が振り去って行き、ジェラールも頷き逆の方向に歩いて行った。


 

 ***



 ガーランドが一通り捜し回りガゼボに戻ると、先に見つけて捜す側に回っていたカミラとジェラールの他にカミラに見つかったレベッカと、ジェラールに見つかったリーゼロッテとその侍女達がいた…要するにアンネリーゼとミレーナ以外の全員だ。

 

 「やっぱりあの2人が残ったか…予想通りと言ったら予想通りなんだけど、マジで何処に隠れてんだ?」


 「それが分かっていたら2人もここにいるでしょう…」


 「木の上にいないかと思い見て回ったがいなかったからな…後は何処を捜すか」


 「前回は何処に隠れていらしたのですか?」


 ガーランド、カミラ、ジェラールの3人にレベッカが尋ねると、帝国組の面々が渋い顔をした。


 「ミレニア殿は屋根裏、アンネリーゼ様は使われていない部屋にある暖炉の煙突内ですよ」


 「…皇女と侍女ですわよね?」


 「そういう方達なんですよ」


 「汚れる事も厭わないのであれば、お2人の身分を考慮して捜していては無理そうですわね…だとしたら、普通の人が隠れないような場所を捜した方が良さそうですわ…刈り取った生垣の葉を捨てている場所などはどうでしょう?」


 レベッカの提案に皆が頷き、再度捜索を開始する。

 まずは先程話に出たゴミ捨て場だ。


 「ジェラール殿も手伝ってくれる?流石に女性陣にここを漁らせる訳にいかないし…」


 「承知した」


 ガーランドとジェラールは腐葉土用の枯葉を作る為に集められた刈り取った葉や草が積まれた山を手分けして掘り返す…しばらく掘り進めていると人の手らしき物が出て来た。

 周りの葉を払い除けて確認すると中からミレーナが現れ、何事も無かったかのように立ち上がった。


 「お見事です」


 「いや「お見事です」じゃないからね!何てところに隠れてんの!?」


 「このくらいは普通だと思いますが…」


 「普通の基準とはだいぶズレてるの自覚しよう?」


 「そうですか…まあ良いでしょう。残るはアンネリーゼ殿下だけのようですし行きましょう」


 ガーランドの指摘を聞き流したミレーナは、集まる者達を確認し歩き出した…アンネリーゼの居場所に心当たりがあるようだ。

 皆がミレーナの後を追い辿り着いたのは、ガゼボの近くにある噴水の前だった。


 「まさかここ?」


 「ええ…身体さえ小さければ私もここにしようかと迷ったくらいです」


 「何処に隠れる場所があるんだよ…まさか噴水の中とか?」


 周囲を見渡したが隠れられるような場所は無く、ガーランドが冗談めかして噴水を指さすと、ミレーナがニコリと笑った。


 「ジェラール殿、靴脱いで…」


 「承知した…」


 2人がうんざりとした表情で靴を脱ぎ巨大な4層造りの噴水の中に入り確認すると、水の貯まった3層目の受け皿の中にアンネリーゼがいた。

 ガーランドはアンネリーゼと目が合い、尻餅をつく。

 

 「うわあっ!マジでいた!?」


 「末恐ろしいな…ただの遊びでここまでするか…」


 「見つかってしまったわね…あら、皆んないるという事は私が最後だったのね」


 悪びれも無く起き上がったアンネリーゼは噴水から飛び降り、濡れた髪と衣服を絞って水を落とす。

 濡れた衣服が身体に張り付き、それを見たレベッカやリーゼロッテの侍女達が顔を真っ赤にして慌て始めた…カミラとミレーナは何を言っても無駄と諦めているのか落ち着いている。


 「アンネリーゼ殿下、早く隠してくださいませ!」


 「タ、タオルを持ってまいります!」


 「別に私の身体なんて見て喜ぶ殿方なんていないでしょう…」


 「何を言ってらっしゃるのですか!?」


 「私もお水入る〜」


 「リーゼロッテ殿下もおやめください!」


 レベッカは噴水に飛び込もうとしたリーゼロッテを慌てて抱き上げ、アンネリーゼを非難するように見つめる。


 「リーゼロッテ殿下が真似をしますので早くこちらへ」


 「わ、分かったわよ…」


 「タオルをお持ちいたしました!」


 「ありがとう」


 急ぎ戻って来たリーゼロッテの侍女からアンネリーゼがタオルを受け取り髪を拭いていると、間が悪い事にヒルデガルドが現れた…アンネリーゼはヒルデガルドが現れた事に気付きヒュッと息を吸う。

 ヒルデガルドは濡れ鼠のようなアンネリーゼの姿を見て深く息を吐き、笑顔で歩いて来る。


 「何やら庭園が騒がしいと思い来てみればこれはどういう事なのかしら?」


 「あ、遊んでいただけですわ!」


 「噴水で?」


 「は、はい!」


 「私が無知なのかしら…噴水でどうやって遊ぶのか分からないから部屋でゆっくりと教えてちょうだいな」


 「い、いえ…着替えないと風邪を…」


 「返事は?」


 「…はい」


 「レベッカ王女殿下、少しアンネリーゼをお借りしますわね」


 「は、はい…どうぞごゆっくり…」


 レベッカが頷くと、怒りのオーラを纏うヒルデガルドはアンネリーゼの襟を掴んで引きずりながら庭園を後にする。


 「これはまた搾られるな…」


 「懲りないアンネリーゼ様が悪いんです…自業自得なんですから気にする必要はありません」


 カミラの言葉に皆が同意しそうになったが、流石に気が引けたのか聞こえなかったフリをする。


 「取り敢えず部屋に戻りましょうか…」


 「では少し早いですが湯浴みのご用意をいたします」


 「助かりますわ…それにしてもアンネリーゼ殿下は濡れたままで大丈夫かしら」


 「大丈夫ですよ…5歳の時に昏睡状態から回復して以降、体調不良になった事なんて一度もない超健康優良皇女ですから」


 「なら良いのだけれど…」


 辛辣なカミラに苦笑し、レベッカ達は皇宮に戻る。

 結局アンネリーゼは夕食前までヒルデガルドにこってりと搾られ続け、げっそりとした状態で戻って来たのだった。

 

 

 


 


 

 


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― 新着の感想 ―
『超健康優良皇女』 結局、読者間の二つ名は増えるのね。 女性アスリートは遥か昔から カメラ小僧の被写獲物ですよー! 皇女様、自分が女性だと覚えてますか?(爆笑)
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