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41. 歓迎

 「華やかね…実に華やかだわ…ガーランドもそう思わない?」


 「はぁ、そうっすね…単に俺の肩身が狭くなっただけのような気がしますが華やかなのは確かだと思いますよ」


 皇宮の一室…アンネリーゼの自室で、ご満悦な部屋の主に同意を求められたガーランドはうんざりとした表情でため息を吐く。

 今日からヴィルマとミレーナorターニャ扮するミレニアがアンネリーゼの専属侍女として登城したため、部屋の男女比がさらに偏り発言権がほぼ消失したガーランドは朝から元気が無い。

 そんな事には構いもせず、アンネリーゼは自分の専属侍女5人を一列に並べてくるくると回りながら踊っている。

 ちなみに、専属侍女5人はヒルデガルドと同人数である。


 歴代の皇女の専属侍女の数は皇后より少ない人数が通例なのだが、最近のアンネリーゼの行動に何かと不安を感じるヒルデガルドが帝室の威信を守るため特別に許可を出したのだ…要は馬や剣、読書などの趣味や、妹である第二皇女リーゼロッテにしか興味が無いアンネリーゼに、お茶会や公式の場で恥をかかせないようにするための苦肉の策だ。


 「あら、こんな見目麗しい美女美少女に囲まれて役得じゃないかしら?世の男達の嫉妬の炎で骨まで焼き尽くされてもおかしくないくらい羨ましい立場だと思うわよ?」


 「そんな美女美少女が俺に惚れてくれてるならそりゃあ喜びますよ…でも、皆んな殿下しか眼中に無いでしょ?

 普段の俺の扱い知ってて言ってます?殿下絡みじゃないと空気ですよ?そこに2人増えたら俺なんて空気以下になりますよ…たぶん壁のシミくらいの存在です」


 アンネリーゼの専属侍女として最初から勤めていたあどけなさの残る美少女寄りのカミラを始め、他2人も一般的に美女美少女の類だが、今回追加されたミレーナorターニャ扮するミレニアは砂時計のように出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるというスタイル抜群の妖艶な美女、ヴィルマは素朴な見た目だが整った顔立ちに眼鏡とそばかすという属性が付与されたマニアが好みそうな美少女だ…そして、そんな侍女達の主人であるアンネリーゼも人形のようとも称される美少女なのだ。

 だが、そんな見目麗しい女性達に囲まれてなおうんざりとした表情を浮かべられるのは、帝国中探してもガーランドくらいのものだろう…まあ、普段それだけガーランドに対する侍女達からの扱いが酷いという証明でもある。


 ガーランドがボヤき、アンネリーゼは意味深な笑みを浮かべる。


 「そういうのが快感に変わっていくかもしれないわよ?」


 「流石にごめん被ります…」


 「あの、アンネリーゼ様…お楽しみのところ申し訳ないのですが、私達はいつまでこうしていれば良いんですか?」


 集められてからずっと立たされ続けていたカミラが流石に我慢の限界と言わんばかりに声を上げる。

 アンネリーゼは一瞬ビクッと肩を振るわせゆっくりと振りと返ると、声を上げたカミラ以上にミレニアが非常に不機嫌そうなオーラを放っていた。


 「ごめんなさいね、嬉し過ぎてつい浮かれてしまったわ…あの、ミレニア…美人が台無しよ?」


 「こういうのが好きな殿方もおりますわ」


 「そ、そう?と、取り敢えずお茶をしながら色々説明とかしましょう?ねっ?えっとカミラ、ヴィルマとミレニアに教えてあげて」


 「はぁ…承知しました」


 「あ、2人は下がって良いわよ。せっかくの休みに顔合わせのためにわざわざ来てくれてごめんなさいね…」


 お茶の準備をカミラに任せ、アンネリーゼは他の侍女2人にお礼としてわずかばかりではあるが心付けを渡して下がらせた。

 深呼吸をし、振り返ったアンネリーゼは深々と頭を下げる。


 「ほんっ…とにごめんなさい!舞い上がり過ぎてたわ!」


 「初めて会った日とはえらい違いよね…」


 「あ、やっぱりターニャ?どっちから来るか聞いてなかったから気になってたのよ」

 

 「あ、やっぱりターニャ?じゃないわよ本当に…着せ替え人形にされるために受けたわけじゃないのよ?立場上強く言えないヴィルマが可哀想じゃない…ねえ、ヴィルマ」


 ターニャはヴィルマを気遣い同意を求めたが、当のヴィルマは恥ずかしそうに俯いて首を振った。


 「あ、いえ…私は別にアンネリーゼ様とご一緒出来るなら別に…」


 「あのねヴィルマ、ああいう手合いは優しくすると付け上がるのよ?言うべき事はビシッと言わないとダメよ!」


 「ねえターニャ…何でそんなにヴィルマと仲良さそうなの?」


 「え?だって今日まで3日間ヴィルマのところに泊めて貰ったしそりゃあ仲良くもなるわよ…あ、まさか嫉妬?」


 「初めて聞いたのだけど!?ヴィルマとのお泊まり羨ましいわ…」


 ニヤつくターニャの言葉に衝撃を受け、アンネリーゼはその場に蹲った。

 特別と思っていた同い年の友人との初お泊まりを図らずも横取りされてしまい、流石のアンネリーゼも平静を装うことが出来ないようだ。


 「ターニャさん、アンネリーゼ様を揶揄うのはやめた方が良いですよ…結構大人気ないので、とんでもない仕返しが待ってますよ」


 「え…なにそれこわい…」


 カミラの忠告にターニャがドン引きしていると、蹲っていたアンネリーゼがユラユラと立ち上がり恨めしそうに睨み付けた。


 「仕返しなんて子供じみた真似はしないわ…扱きよ…。覚えてらっしゃい…手合わせの時間が今から楽しみね?」


 「えっ…は!?手合わせって何!?聞いてないんだけど!?」


 「貴女は私の影武者であり、女性しか連れて行けない場所での護衛役でもあるのよ?もっともっと強くなって貰わないと困るの…。これから侍女として私の近くにいる間は、早朝ランニングと午後の剣の訓練は貴女もやるのよ?」


 「えっ…マ、マジ?」


 「あら、私は冗談を言ったり言葉の綾は取っても嘘は言わない主義よ?」


 張り付いたような笑顔のアンネリーゼを見たターニャは、初めて会った日に見たアンネリーゼの剣の腕を思い出しカップを持つ手が震え出す。

 

 「わあ!この本探してたやつです!アンネリーゼ様、この本読ませていただいてもよろしいですか!?」


 アンネリーゼの蔵書を見ていたヴィルマが本を抱き締めながら嬉しそうに駆け寄り、アンネリーゼはターニャに見せたものとは違う満面の笑みを浮かべて頷く。


 「気に入った本があったら何でも言って!好きなだけ読んで構わないわ!」


 「ありがとうございます!」


 アンネリーゼの許可を得て本の虫になったヴィルマを見て、1人寂しく紅茶を啜っていたガーランドがため息を吐く。


 「侍女って何なんだろうな…てか、やっぱり俺忘れられてるし」


 「忘れてませんよ?ただ単に花がなくて影が薄いだけですよ」

 

 「忘れられてた方がマシじゃねぇか…」


 テキパキと働いていたカミラは言葉の刃で容赦なくガーランドの心を切り刻み、アンネリーゼのカップに新しい紅茶を注いだ。

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― 新着の感想 ―
ガーランド君、愚痴れる内が華ですよ。 たぶん ・・・
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