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年賀状型に薄く伸ばされたギフトを自転車に乗って手渡しする話

掲載日:2025/12/02

 仕事終わりの帰り道。

私は自転車のペダルを回して帰路についていた。

ほとんど暗闇に包まれた空。

冬の空気は肌の水分を奪っていき、凍てつく痛みをもたらしてくる。

それが顔面に襲い掛かってきて辛い。

そんな気持ちを抱きながら自宅前に到着したら、玄関に靴を脱いでいく。


 鞄を床に放り投げ、身軽になる。

早く横になりたい。

そんな時、家に音が響き渡る。


『チンポーン』


こんな夕飯時にチンポンする人は誰だろう。

通販で何か頼んだ覚えはない。

風呂で体を労わる時間を後回しにし、来客の様子を伺う為に玄関に戻る。


 私は宅配業者の方から荷物を受け取り、部屋の中に運ぶ。

荷物は片手で運べるほどだけど、一体中に何が入っているのか。

そもそも、差出人が不明だ。

ちょっとだけ不気味。

不安と好奇心が入り混じった気持ちを抱きながら、持っている紙袋を開けていく。

その途端、中から美味しそうな香りが漂ってくる。

温めたら動物の油の香ばしさが強くなりそう。

その発生源を取り出すと、薄茶色をした揚げられた衣を纏った長方形の何かがあった。

その形状はまるで、ハガキと同等。

もちろん肉厚な厚さが残っているので、これをそのままポストに出しても無効になるだろう。


 怪しさ満載の荷物に嫌悪感を抱いていると、油を吸った手紙も入っているのに気がついた。

恐る恐る取り出し、内容を確認してみる。 


『年賀状型唐揚げに、“あけましておめでとう”とソースで記述した後、土曜日の日没までに受け取ってくれそうな人に手渡ししてください。達成されなかった場合、自室が油まみれになります。本当ですよ』


 これが本当の事なら大事件だ。

私の部屋が油まみれになることは避けたい。

誰かにこのことを相談したい気持ちが湧きあがる。

でも、一体誰に話せばいいのか。

頭の中が一瞬で不安で埋め尽くされる。

私一人でなんとかしなくちゃ。


 翌朝、身支度を済ませたら、肉の便箋にソースで文字を刻んでいく。

こんな経験は初めてなので、私のメッセージは非常に不出来なものに仕上がった。

でも、指示通りこなした。

私なりの全力。


 昨日の晩に急遽、この肉厚な便箋を受け取ってくれそうなヒロに、今日少し会ってくれるように約束を取り付けた。

あとは、自転車で全速力で向かうだけ。

あぁ、冷たい風がいつもより激しく顔に襲い掛かる。

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