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あなたの腕の中で性と向き合う  作者: 瀬戸 航帆
第6章 次のステージへ
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エピローグ

 大きな窓から降り注ぐ光の中で左手を眺めながら、あっという間に過ぎ去った今日までのことに思いを巡らせた。


 風俗嬢を卒業してから二年が過ぎた。転職先の医療介護機器会社で私は介護部門のインサイド営業として、なんとか結果を出せている。


 この仕事は予想以上に知識が求められた。介護業界に対する全般的な知識はもちろん、介護現場の実態、高齢者に多い病気、国が支援する補助金、そして、様々なメーカーが扱っている商材の特徴について等。入社したての頃は知識不足すぎて、自信を無くすことがあったけれど、やっとお客様から頼られるようになって、少し自信がついてきた。


 ちょうど1年前、絵麻と陸さんの結婚式に参列した時に、ゆずさんと再会した。私は何て声をかければ良いかわからず、戸惑っていると、意外にもゆずさんは親しみを込めて笑いかけてくれた。


「優太とはどう?」

「入籍することにしました」


 一瞬、正直に答えるかどうか迷ったが、ちゃんと報告しようと思った。ゆずさんは驚いたものの「おめでとう」と祝福してくれた。


 ゆずさんは自分と同じようなジェンダーの人と付き合っている、と教えてくれた。そして、優太との関係についてこう語ってくれた。


 愛が実らなくても、こんなにも心穏やかな関係が築けるのだと、優太との恋愛を通して知ったことは私の大きな財産になった。優太の彼女として付き合っていた頃よりも、一歩距離を置いた今の方が、ずっと居心地の良い関係でいられる。大事な人の恋人ポジションにこだわらなくなったら、気持ちが楽になった。


 その言葉を聞いた時、私は嬉しかった。優太が営業部から企画部に異動したことで仕事を通じてゆずさんと、ぎこちないながらも友人関係を再構築していることは、優太から話を聞いて知っていた。


優太が大事にしていた人を、私も大事にしたいとずっと思っていた。だから、ゆずさんの口から2人の関係性について、話してくれたことが何よりも嬉しかった。


 私はすっかり身なりを整えて、ウェディング姿の自分を鏡に映した。身につけているイヤリングは、投資詐欺の件以降、しばらく連絡が取れなかった鮎川先輩が制作してくれた。鮎川先輩がハンドメイドを続けていると知った時、私は嬉しくて涙が出た。


 ノックの音に振り返ると、ビシッと決めた優太が顔を覗かせていた。部屋に入ってくると、はにかみながらお互いの姿を見つめる。


言葉にできないほどの愛に、私たちは微笑み合った。


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