第44話 卒業に向けて
風俗嬢を卒業する日は十二月二十三日、事務スタッフを辞める日は十二月二十四日に決めた。もう少し早く辞めようかと思ったが、クリスマスイブは馬鹿忙しい。昨年のクリスマスイブは渋谷店も他の姉妹店も年間でトップ三に入る売上をたたき出し、終電間際まで働いた。SNSの更新をしている暇がないほど電話が鳴りっぱなしだった。
ちなみに渋谷店が年間で最も売上が上がる日は十二月三十日である。どうやら妻子持ちの旦那様の多くが日中は暇らしい。そして独り者のお客様からの問い合わせ件数が群を抜いてすごい。
昨年の十二月三十日は終電で帰らせてもらったが、店長達は閉店作業があるため終電で帰ることを諦めていた。しかし、打って変わって大晦日の日は暇だった。出勤しているキャスト人数が少ないこともあるが、お客様達は流石に家族サービスをしているのだろう。
優太と出会う前までは、大晦日に卒業しようとなんとなく考えていた。しかし、クリスマスは優太のためだけに時間を使いたかった。そして、待つと言ってくれた彼に、自分から告白したい。我ながら乙女な発想だと思う。でも、これくらいのご褒美は自分にあげてもいいはずだ。
私は店長にお店を辞める日を伝えて、写メ日記に卒業する旨を記載した。そこからの反響が予想以上にすごかった。今までずっと指名し続けてくれていた本指名のお客様はもちろん、以前、指名してくれた久々のお客様からのお問い合わせだけでなく、新規客からの問い合わせも増えた。
私は店長にお願いして一日にとる客を二人までにしてもらった。ロングコースのお客様が多いので時間的に三人までしか取れないが、体力的に三人はきつい。今までのお客様に感謝の気持ちを込めて、質を落とさず接客することを考えると、二人が限界だ。
そして、新規客ではなく本指名のお客様を優先的に予約に入れて欲しい旨を伝えた。おかげで待機時間がほぼ無くなり、事務スタッフの仕事を行う余裕がなくなってしまったが、それはそれで嬉しい悲鳴だった。




