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あなたの腕の中で性と向き合う  作者: 瀬戸 航帆
第4章 元の生活に戻るために
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第34話 祖母の死

 私は初めて、人の手が加えられていない死んだ人の顔を見た。死んでいるとは思えないほど、安らかで満足そうな顔をしていた。


 冷蔵庫を開閉したことを知らせる通知が朝になっても来ず、私は父とイチ兄と一緒に様子を見に行った。


 最初はただ寝ているだけかと思って、ホッとした。しかし、イチ兄はすぐに祖母に声をかけ、脈拍を確認すると救急車を呼んだ。


 到着した救急隊員にイチ兄はテキパキと応え、病院に付き添った両親の代わりに、自宅で亡くなったため事情聴取に来た警察の対応を行った。私は何を手伝えばいいのかわからず、邪魔にならないよう突っ立ったままその様子を見守っていた。


 私は有給が溜まっているから、と嘘をついて一週間仕事を休んだ。予約をして頂いた本指名の方には、店長からキャンセルの連絡をしてもらった。優太に一言謝りたかったが、連絡先を知らないので仕方がないとはいえ、申し訳なかった。


 光枝叔母さんの到着を待って祖母の家で葬儀を行った。祖母の友人はすでに亡くなっている方も多く、存命の方でも高齢のため施設に入っている人が多かった。それでも訃報を聞きつけた祖母の友人たちが車椅子で、もしくは杖をついて駆けつけてくれた。速やかに祖母の友人知人に連絡ができたのも、イチ兄がこの時に備えて、祖母の友人の連絡先をあらかじめ作成していたことを、葬儀の準備をしている時に知った。


 お坊さんのお経を再び聞きながら、私は祖母を羨ましく思った。


 享年九十三歳。大往生だと思う。


 もちろん、亡くなってしまったことは悲しい。しかし、それ以上に、満足げな顔で永遠の眠り についた祖母の顔が、強烈に印象に残った。祖母は祖父と同じような形で人生の幕を閉じた。長年連れ添った祖父を想い続け、ひ孫達に囲まれて「なんの悔いもない」と言って死んだ私のばあちゃん。どんな人生が理想か、それは人によって答えが違うだろう。でも私にとっては間違いなく祖母の生き方は最高に理想的だった。


 葬儀を終えて遺品整理を手伝った後、日曜の夜に西日暮里の家に帰宅した。


 私はパソコンを開くと、兄達が話していた介護について調べた。介護と言っても様々なものがあり、とりあえず施設と在宅に分けられる、ということが分かった。しかし、そこから先は種類が多すぎてよくわからない。介護職の仕事に多少の興味が湧いたが、それ以上に祖母の家の冷蔵庫についていた見守りセンサーに興味が湧いた。 


 見守りセンサーをネットで調べていくと、驚くほどの種類がヒットした。思った以上に、IT化が進んでいる。介護と言えば、スタッフが手取り足取り介助するイメージしかなかったが、今では実に多種多様な機器が販売されている。


 私は転職エージェントの鈴木さんと松永さんにメールを送った。介護関係のIT商材に興味があります。求人はありますか、と。


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