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魔法のこともっと聞いておけばよかった

 左の羽、右腕、尻尾、左腕、縦横無尽に飛び込み、掠り傷を与えていく。

 速度が上がり、徐々にエリンさんの身体を捉え始める。

 エリンさんの口から光が溢れ、降り注ぐ。

 すべてを焼き尽くす光に真っ直ぐ突っ込んでいく私の両手が、自然と光に向かって刀を突き出す。

 私の両手と一つになった刀が光を斬り裂き、拡散させる。

 驚いたエリンさんが口を閉じ、上に飛んで逃げたのを鉄塊を足場に飛び上がって追い、即座に背後から斬り込み、右の羽を斬り飛ばす。


「グギャアアアアッ!」


 エリンさんが自身で生み出した火の海にくるくると落ちていく。

 宙に浮かぶ盾の上で飛び出してこないか見張っていると、火の海が雄叫びと共に消えていき、炎に焼かれたのか煙を燻らせるエリンさんが姿を現す。

 その背には羽が片方しかない。

 再生していない?

 先程から感じている刀との一体感と手のひらの熱。そしてよく跳ねる靴を履いてるような感覚と足の裏の熱。

 床に降りて刀を構えて盾を出す。

 魔力が出てる?

 裸足なのに熱くない。しかし目には何も見えない。


「グルルアアアアアアアアアアッ!!」


 エリンさんの雄叫びで思考が止まり、一瞬で距離を詰められ、刀を両手でがっしりと掴まれる。


「ギギャアアアアアアアッ!」


 刀身を握ったエリンさんの両手から黒い煙が溢れ出し、エリンさんが更に叫ぶ。しかし刀が怖いのか私から刀を奪おうと手を放さずに必死に引っ張ってくる。

 やっぱり魔力が込められてるみたいだ。

 不思議な両手の延長線上のような一体感のような感覚は私の魔力が刀に流れて繋がっているからなのかもしれない。

 そして足から魔力が出ることで何か鉄塊達との相互作用ようなものが生まれて速度が上がっていたんだろうか。

 耐えきれなくなったエリンさんが両手を放したところを斬ろうとして、咄嗟に後ろに下がる。

 もし本当に再生できなくなるとしたらむやみに手足は斬り落とせない。

 手のひらから溢れ出す魔力の止め方も出し方もわからない。

 何とか出し入れできるようにならないと攻撃出来ない。

 刀に魔力を込めるの止めてしまったら、そもそもかなり硬い魔物なったエリンさんの身体を斬れなくなるかもしれない。

 火傷を覚悟して足の裏で試す。

 思考してる間も鉄塊達がエリンさんに攻撃をしかけ、引っ掻きや蹴りをなんとか避ける。

 想像する。

 足の裏の熱を蓋を閉めるように止めて、内側だけに留める。

 ジュッと熱さを感じて真夏の炎天下の砂浜を思い出し、すぐに足の裏から魔力をもう一度出す。

 びっくりしたけど出し入れはできるみたいだ。

 一度空いた穴はなかなか塞がらないように、一度魔力を出すことが出来れば出し入れは簡単なのかもしれない。

 その重要な一度目の記憶が一切無いのは問題だけど今それを気にしてる場合じゃない。

 手のひらから出る熱に蓋をして内側だけに留める。

 攻撃を避け続けるのを止めて、斬り込む。

 エリンさんの右腕に入った刀傷が黒い糸ですぐに塞がるのを見て、魔力を足にたくさん回して背後に回り込み、今度は魔力を刀に込めて尻尾を脇構えから斬り飛ばす。


「グゲギャッ!」


 驚いたよう声を上げてなぎ払うように振り回す左手を、魔力を込めずに斬り飛ばす。

 黒い糸が伸びて飛ばした左手がくっつく。

 生える時とくっつく時の差はわからないけど、魔力を込めて斬った尻尾は再生しないようだ。

 残った歪な緑色の右の角と左の羽も切り落とす。

 全然魔法を使ってこないのは効かないとわかっているからなのか理性が無いからなのか。

 魔力が減ってきたからだといいのだけれど暴れて動き回り続ける様子からはさっぱりわからない。

 私の魔力が先に尽きる可能性を考えると全解放で角と羽を一気に落とすべきだろうか。

 それでも大人しくなるとは限らない。

 一体どうすれば…。

 おそらく私の魔力が込めらてないと大した攻撃にはなってない。

 右の引っ掻きを避け、蹴ってきた左足に魔力込めて峰打ちをしてみる。

 ギギっと音がして弾かれ、そのまま蹴飛ばされてしまう。


「っ!………やっぱりダメか…」


 師匠の言葉を絞り出す。

 魔力を手のひらに集めて集中する……

 ダメだ。さわりで躓いていたからその先がわからない。

 師匠もお姉さまも手のひらの上に浮くように魔力の玉を作っていた。

 魔力が手のひらと足の裏から出せているのは確かなはず。浮いている魔力の玉と手のひらは見えない魔力で繋がっているんだろうか。

 鉄塊達をエリンさんの周囲に飛ばして撹乱しつつ、刀を消して、走り回りながら手のひらに集中する。

 手のひらから出ているはずの魔力をぎゅっと集めて玉に……

 手のひらから熱…魔力が発せられているのはなんとなく多分これだろうという感覚があるけど、その先は一切わからない。

 必死に力んでみても手のひらにくっついた状態で玉を作ることも出来ない。


「っ!」


 エリンさんから気を反らしすぎた。

 無数の黒い棘にまた身体を貫かれ、濡れた床に膝を突き、そのまま倒れそうになって両手を突く。

 両手を突いたところだけ黒い水が消えていく。

 その光景に気を取られ、腹を蹴り上げられて宙を舞う。

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