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勇者の遺産

「やっぱり見間違いじゃなかったのね」


 レイゼリアさんがそう呟く。


「あなたはここに閉じ込められていたの?」


 私は正直に話す。恐らくそこの棺に閉じ込められていたこと。リネが棺から出してくれたこと。リネのおかげで森で生活していたこと。記憶の手がかりがないかとここにもう一度入ったこと。その時に部屋からナイフと青いケープを持ち出したこと。


「あなたのことを疑うわけじゃないけど、記憶がないにしてはしっかりしてるわね」

「そうなんでしょうか…」


 自分はその場に流されているだけな気がする。


「さっき私を助けてくれた時のことは覚えてる?」

「はい、これですよね」


 私は盾を目の前に出す。空中に現れ、微動だにしない。そしてしまう。


「それはね、この棺に入っていたものなの。十年くらい前にお兄様と二人でここに入った時に見たことがあるわ。ここにはその盾と刀と呼ばれる異国の剣が入っていたわ」

「勇者じゃなくてですか?」

「ええ、勇者の遺骸は無いわ。ここには武器が隠されていたの。勇者が魔王を倒した武器がね」

「じゃあ四人の子供達は?レイゼリアさんが魔物に襲われそうになった時、レイゼリアさんに似た赤い髪の女性が斬られるのが頭に浮かんで、また間に合わないって思ったんです」

「また?」

「はい。でも四人の子供が現れて私を追い越して行って、私じゃ間に合わないから助けてって思ったら皆が任せてって。そしたらこの盾が…」


 私はもう一度盾を出して見せる。

 子供もいないということは私は一体?

 頭が混乱していて変なことを言ってる気がする。


「そうなのね。でも四人の子供についてはあまり伝わっていないわ。ただ勇者が助けられなかった子達だと王女が語っていたらしいわ」

「そうですか。あの、とりあえず盾をどうぞ。御返しします」

「そうね、けど持てるかしら」


 レイゼリアさんが盾に抱きついたのを見て、

宙に浮かせるのをやめる。

 キャっと凛々しい感じとは真逆の声を出して、重さで転びそうになるの見て、咄嗟に盾をしまう。


「大丈夫ですか?」

「ええ、ありがとう」


 レイゼリアさんは腕を組んで何か考えてるのか黙りこんでしまう。


「盾を一度棺に戻してもらってもいい?」

「はい。元々この中にあったんですもんね」


 私は棺の中に寝かせるように盾を出し、助けてくれてありがとうと心の中で呟く。

 レイゼリアさんが石の蓋をなんとか持ち上げて震えながら蓋をする。手伝おうとも思ったけど逆に危ない気がして見てることにした。


「ふう。別荘で少し休暇の予定だったけど、明日には城に戻らないと」


 パンっパンっと両手の埃を払いながら、レイゼリアさんが言う。


「あなたも一緒にね」

「やっぱり、逮捕されるんですか?」

「そんなつもりはないけど、まあ外に出たらわかるわ」

「外に?」

「とりあえず戻りましょう」


 すたすたと部屋を出ていくレイゼリアさんの後をついて部屋を出る。ガゴっと音がして扉が閉められる。

 明かりがついた通路を真っ直ぐ歩いていき、すぐに入口に戻ってくる。

 入口の前には兵士が一人、何かを持って立っていた。


「レイゼリア様、お待ちしておりました。クリフトさんは残りの三人が運んでおります。私は一番軽傷だったのであなたの護衛に残りました」

「そう、ジャン報告ありがとう」


 私の方を見て、ジャンと呼ばれた茶髪の若い兵士が私の方を向いて跪く。


「クリフトさんを助けてくれてありがとう。クリフトさんから伝言を預かってる。今度はたくさんカルル以外のお菓子もプレゼントするから楽しみにしてくれって」


 そう言って綺麗に畳まれた青いケープとどこに落ちたかわからなくなっていたナイフを渡してくれる。


「えっと、こちらこそあのありがとうございます」


 なんだか恥ずかしくなって顔が熱くなる。

 とりあえずナイフを鞘にしまい、借りていた緑のマントを脱いで、青いケープに着替える。なんだかジャンさんが私を見て目を丸くしている。

 下を向いて自分を見てみると、小さい私が引きずっていたからか緑のマントの下半分は埃まみれになっていた。


「いや!あの!これは、ジャンさんごめんなさい!レイゼリアさんもごめんなさい…」

「マントくらい大丈夫よ。それと彼が驚いてるのは多分あなたが服を着ていなかったからよ」


 更に顔が熱くなる。またやってしまった。

 見られたところでなんともないけど、人前で脱がないように気をつけないと。


「もう日が暮れてきてるわね。無理に戻らずどこかで野宿しましょうか。どこかいい場所知ってる?」


 レイゼリアさんが私の顔を覗き込んで微笑みかける。


「いい場所かはわからないですけど、近くの小川に寝泊まりしてました」

「じゃあそこに案内してもらえる?ジャンもそれでいいわよね?」

「えっあっはい!かまいません!」


 私は花畑で丸くなって寝ているリネの鼻先に近づいてそっと話しかける。


「リネも一緒に小川にくる?」


 目を開いてすっと立ち上がりゆっくりと歩き出す。一緒に来てくれるみたいだ。

 途中ブブの実を十個も拾えた。気がつかなかったけど森が揺れたり魔物が木にぶつかったりしていたんだろうか。

 小川に着くと岩の上の焚き火はすっかりと消え、煙も立たず炭と灰だけになっていた。

 もう暗いし火起こしが間に合うだろうか。

 私の隣にレイゼリアさんがしゃがみ込んで、近くに置いてあった薪を焚き火後の上に並べると、手のひらから小さな火を灯し、あっという間に焚き火が復活する。すごい。


「ふふ。ありがとう」


 声に出ていたみたいで恥ずかしい。

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