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本当の森みたい

 沸かしたお湯に切り出したバンカンを入れてスープにして飲み終え、泉のほとりで少し休む。

 いつどこから敵が来るのか、身体は休めているけど気は休まらない。

 緑の薬のおかげか体調はましになったと思う。

 泉には虫も魚もいないみたいで、とりあえずスープを飲んでもお腹を壊すことはないみたいだから水も安全かもしれない。

 瓶に水を入れてまた沸くのを待っている時、迷宮に入ってからついに初めて催し始める。

 土のある今しておかないと後でどうなるか不安だ。

とりあえず試しに今座っているすぐ側をナイフで掘ってみる。

 十センチ程掘ってみたけど石も無く、雑草の根が混じっているだけみたいに見える。

 焚き火に薪を足しておき、鞄は木の根元に置いて、泉から距離を十分に取って穴を掘る。

 念のため四つの鉄塊に周囲を守らせて、周りを確認して注意をしながら三十センチ程掘ったところで、もう催しが通り越して、何も感じてないことに気づく。

 せっかく掘ったし、気配の一切無い今のうちしかないのでパンツを脱いで穴に股がる。

 ………。

 周りが気になるし、なんか緊張するし、更に引っ込んでしまった気がする。

 こんな調子で最後まで行けるんだろうか。


「はぁ………」


 ため息と共に少し脱力したのか、催しが来て、ついに開催する。

 葉っぱでしっかり拭いて、穴を埋め直す。

 そういえば私の催しは魔力になって消えるんだろうか、と考えながらしっかり埋めたのを確認して焚き火のところへ戻る。

 薪を足して、沸いた水をお姉さまの水筒に注ぎ、また水を汲んで沸かす。

 五回程繰り返し水を沸かして、お姉さまの水筒にある程度水が入ったところで焚き火を消して、探索を再開する。

 泉のほとりにいつでも戻れるように木にナイフで傷をつけながら進む。

 そして早速問題にぶつかる。

 真っ直ぐ進んでいるつもりなのに、必ず泉に辿り着く。

 焚き火をしたところへ戻ってくるわけではないけど、その向かい側、左側、と何故か同じ泉に戻ってきてしまう。

 私にも効く魔法があるんだろうか。

 そう思うくらいにわけがわからない。

 けど石の扉はちゃんと動いていたから何か仕掛けか何かなんだろうか。

 考えながら進んでいるとまた泉に戻ってくる。

 泉に何か仕掛けがあるんだろうか。

 泉の縁に沿って歩いて焚き火後に戻り、枝を集め改めて火を起こし、手袋、ブーツ、ケープ、シャツ、パンツを脱ぎ、ナイフを首から下げて、泉の縁に座りまずは足を着ける。

 ひんやりするけど、大丈夫そうだ。

 ゆっくりと滑るようにして、泉に浸かる。足は着かなさそうで息をいっぱい吸い込んで止め、潜る。

 森の明るさに反して水の中は暗く、全然先が見えない。

 なんとなく身体が覚えているから前には進めているけど、速度は遅く、息継ぎも上手く出来ない。

 若干溺れかけ、咄嗟に盾を出して掴まり、事なきを得る。

 盾を四つに分裂させて、その上を歩いて焚き火のところへ戻る。もう出して消すの繰り返すのにも結構慣れてきた気がする。火に当たって少し身体を暖めながら考える。

 よし、上を歩いていこう。

 鉄塊を等間隔に出しては消して、それを足場に泉の上を歩いて行く。

 中心の辺りで泉に入り、何かないか潜ってみる。

 こんな時、魔法が使えたら灯りに困らないんだろうなと思いながら、深く沈んでいく。

 上がる時は梯子のように鉄塊を登っていこう。

 先は見えず、何も見つからないまま底に着いてしまうんじゃないかと思ったところで何か石で出来たものが見えてくる。

 しかしその先はもう完全に光が届いていないようで何も見えない。

 息継ぎのために一度上がり、焚き火のところへ戻って、身体を暖めながらどうするか考える。

 水中での灯りなんてどうしたらいいんだろう。

 裸のまま、鞄の中身を広げ、使えるものはないか考える。

 角灯は油をどうにかできても水中では使えない。

 食糧以外のものは魔物から残った結晶と角、何かの種、何かの粉。

 鹿の魔物は角から魔法を放っていた。どうにか魔力を込められたら光ったりしないだろうか。

 とりあえず真剣に握って魔力を込めようとしてみる。


「んむむむむむむぅ……!っはぁ!ダメだ……」


 無駄に身体強化を使ってしまったようで、白くなった髪が黒に戻っていく。

 上を見上げながら一息つくと、なんだか空が暗くなってきている。

 まさか夜になるんだろうか。

 服を着て、枝を集め、瓶に水を入れて沸かしておき、夜に備える。

 黄昏時は無く、空はただ濃い青になっていき暗くなっていく。

太陽の代わりに雲が見えていた空には月の代わりに星がたくさん瞬いている。

 月明かりが無くとも近くは見えるくらいの明るさは残っているようだ。

 そして泉の中央には大きな石の祠のようなものが浮かんでいる。

 音もなく、夜になるにつれて、ゆっくりと少しずつ浮かんできていたのだろう。

 塩漬け肉とチーズを焚き火で炙って食べ、沸かした水を飲んで準備は万端だ。

 いつの間にか頭痛やら身体の重たさやらは消えている。もしかしたら麻痺してるだけなのかもしれないけれど。

 鞄を担ぎ、焚き火を消して、鉄塊を足場に泉の上を歩いて祠に近づいていく。

 水面に映る星空がとても綺麗だ。

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