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夢の中の子供達

 気がつけば、花畑に座っている。

 階段を一段ずつ降りていたはずなのに、目の前には一面の白い花だ。


「ちょっとしっかりしなさい」

「残ってる薬を飲んで」

「あのねちょねちょ塗りたくっとけば元気になるんじゃね」

「そー思う」


 子供達が私を囲んで一斉に話しかけてくる。


「えっと、久しぶりだね…」

「いつも一緒にいるじゃない」

「そーだよ」

「うん」


 男の子以外が返事をくれる。


「私はまだ生きてるんだよね…?」

「たぶん」

「うん」

「おまえが死んだら俺達も消える」

「そーだよ」


 今度は男の子も答えてくれる。


「私は…どうなってるの?」

「うーん…風邪じゃない?」

「人の魔力から生まれたから人に近いのかも?」

「そーかも」

「とりあえず熱出て倒れてるのは確かだぜ」


 相変わらず姿は真っ黒で影と話しているみたいだけど、怖いとかは少しも思ったことはない。

 ただ未だに顔が見えないのは少し寂しい気がする。


「あの…ほんとにみんなは…その、なんていうか……」

「いないよ」

「勇者と一緒だよ」

「汚れみたいな滓みたいなものだぜ」

「そーそー」


 じゃあ私が一人で空想のお友達と話しているだけ?


「それは少し違うわ」

「私達は記憶を元に生まれたお友達、あなたは私達を元に生まれた妹みたいな感じかな」

「わたしたちの子どもでもいいよ」

「俺は弟がよかったなー」


 私達を元に生まれた?


「私は武器の精霊って言われたけど…違うの?」

「ちがわないよ」

「じゃあ私達を元に生まれたってどういう意味?」

「そのままだよ」

「うん」

「同じ小さな子供の姿でしょ?」

「見た目はにーちゃんに似てるけどな」

「そういえば勇者は?」

「さあな」

「あの人は私達に負い目を感じてるから」

「気にしてないのにね」

「うん、一緒に遊びたいのに」


 勇者は子供達を守れなかったと悔いていたから会わせる顔が無いのかもしれない。


「そろそろ起きなさい」

「残った緑の薬を飲んでね」

「ねちょねちょ塗りたくっとけよ」

「いつでも一緒」


 急に身体が浮き上がり引き放されていく。


「待って!みんな!」


 ガバッと起き上がると、真っ暗で何も見えない。頭も身体もなんだか重たい。

 さっきまでは花の香りと草と土の感触を感じていたのに、今は埃っぽい匂いと冷たい石の感触しか感じない。

 みんなに言われたことを思い出して、鞄から感触を頼りに自分の水筒と薬の瓶を取り出す。

 瓶の蓋を取って匂いを嗅ぐ。草と花の香りがするから緑の薬で間違いない。

 一気に飲み干し、空の瓶をしまう。

 手袋とブーツを脱いで、水筒から粘液を手に出してよく塗り込む。

 感覚のなかった指先が熱めのお湯に触れたみたいにじんじんとする。

 足にも塗り終えた後、お腹に巻いていたシャツを外して右の脇腹にもまた塗っておき、青いケープを脱いでシャツを着直してからケープを羽織る。

 ドライフルーツを食べて、師匠の水筒の水を飲む。魔法道具か何かなのか水はまだ入ってそうだ。

 気を取り直して、階段を一段ずつ降りていく。

 すると段差が無くなって階段が終わったのかもしれない。

 ゆっくりと立ち上がり、手を前に突きだしながら前に進み、石の壁の扉を探す。 

 十歩程進んだところで手が壁にぶつかり、ガガガガガと音を立て、下から光が射し込む。

 扉が開ききると眩しくて、扉の先がよく見えない。

 目が慣れて、ようやく見えてきたのは、木々が生えた森の風景。最初のただ木が生えていた所とは違い、空があり、土がある。エリンさんの魔法なんだろうか。

 驚きで疲れと眠気が吹き飛び、扉を潜り抜ける。

 固い石の床と打って変わり、柔らかい土の感触がある。

 天井ではなく空があり、青空には太陽が浮かんでいるのか、木々の合間から日が射し込んでいる。

 影が通り過ぎて、回りを四つの鉄塊が飛んでいることに気がつく。

 いつからだろう。

 もしかして寝てる時からずっと?


「みんな、ありがとう」


 四つの鉄塊が消える。

 まだよくわからない。結局私は一人なのか、みんなは何なのか。

 ただの生存本能かもしれない。

 私が生まれたみたいにみんなも生まれたのかもしれない。

 答えが出た時、みんなの姿が見えるんだろうか。それともずっと影のままなんだろうか。

 とりあえず奥へと進む。

 師匠が前回挑んだ時と同じなら次が七階層目でエリンさんがいるはずだ。

 師匠から迷宮の中のことをもっと聞いておけばよかった。

 けど師匠も特に話さなかったということは、時間が経つと中の様子が変わるのはよくあることで、あまり参考にならないのかもしれない。

 コーネルさんとお姉さまも迷宮の情報を事前に聞いたりしていなかったから、迷宮あるあるなんだろうか。

 今のところ、魔物の気配も生き物の気配もない。

 茸や花もまだ見ていない。

 鬱蒼と茂る草をかき分けて行くと、大きな泉に出る。

 飲める水なんだろうか。

 泉のほとりに枝を集め、火打石で火を着けようとするけど、乾燥してないからか全然火が着かない。

 とりあえず空の瓶を濯いで、水を汲んでおいた。沸かせば多分飲めるだろう。

 近くの木の樹皮をナイフで削り集め、鉄塊を一つ出して、枝を叩き、繊維状にして、一纏めにして火種にし、火打石で火花を当て続けるとようやく火が着き、枝を重ねて焚き火にする。

 側に水を入れた瓶を蓋を開けて起き、沸くのを待ち続ける。

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