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兄の帰還

「レイゼリア様、今日も元気がないですね」

「別にそんなことないわ。ちゃんとリネ様はナズナに会えてるのか心配なだけよ」


 庭園でレーシャの入れてくれたお茶を飲みながら、森での一件を思い出す。

 森の主のリネ様を送り出した以上、お兄様には勇者の武器のことを隠し通すことは出来ないだろう。

 賢者ガンドルヴァルガ様が預かっていったと言えば素直に引き下がってくれるだろうか。


「失礼します」


 兵士が一人こちらにやってくる。お父様に呼ばれてるのかもしれない。


「大丈夫です。どうかしましたか?」

「レイアルト様がご帰還なされました」


 予定よりも二月程早い。


「すぐにご報告があるので謁見の間に来ていただきたいとのことです」

「お父様だけじゃなくて私にもですか?」

「はい、レイゼリア様をお連れするようにと」

「わかりました。すぐに向かいます」

「は!それでは失礼します」


 早足で兵士が戻っていく。


「はぁ…なんか嫌な予感がするわ…」

「予定よりも早いご帰還なのは良いことなのではないのですか?」

「お兄様が無事なのは嬉しいけれど、なんか面倒事なんじゃないかって思ってしまうわ」

「また外に行けるかもしれませんよ?」

「それは……いいかもしれないわね」


 レーシャのおかげで少し元気が出て、謁見の間に向かう。


「失礼します」


 レーシャは入口で兵士に止められた。中はお父様とお兄様だけなんだろうか。


「レイゼリア、やっときたか」

「お兄様、まずはご無事なようで何よりです」

「ああ、この通り大きな怪我はない」

「それで私達だけを集めてどうした、レイアルト。何かあったのか?」


 玉座に座るお父様が早速切り出す。

 広い謁見の間には私達三人だけのように見える。


「急ぎ報告することがあり、この場をお借りしました。まず一つは魔物の巨大化と変化について、これはまだ数が多いわけではないようですが確実に増えています。この目でしかと確認しました」

「最近各地から被害報告が増えているのはそのためか…」

「はい。以前より大きな個体が現れているだけでなく、黒一色ではない魔物も現れ始めています。赤い角や青い爪を持ち魔法を使う個体です。詳しい資料は後程提出します」

「ふむ、わかった。他には?」

「はい、魔法を使う強力な魔物に対抗するために、勇者の遺産の使用を許可していただきたいのです」


 このための人払いだったんだ。

 どうしよう。無いなんて言ったらどうなるのか予想もつかない。


「残念だが、勇者の遺産は今この国にない」

「それはどういう?……まさか盗まれたのですか!?」

「いいえ、お兄様、違います。今は賢者ガンドルヴァルガ様の元にあるのです」

「なぜイー大陸の大賢者の名前が?いや、そういえばレイゼリアの魔法の先生が…」

「はい、ガンドルヴァルガ様のお弟子のエリュ様です。数ヶ月前に森で異変があり、私が調査に向かったところ、一人の少女が勇者の遺産に選ばれ、リネ様に守られていました。彼女から遺産を回収出来ないか師匠のエリュ様に相談したところ、私達の方で預かって調べて下さるということで、少女を保護して連れていったのです」

「どこの子供が王家の森に…もしや父上……!」

「違う!誓って不貞などはしとらん!ただリネ様が懐いておったと兵士からも報告を承けている。少なくとも悪い子ではない」

「はい、彼女の見た目は私達にはとても似ていない、黒髪に茶色い瞳の子供でした。そして私のことも勇敢に魔物から守ってくれました。ただ本人は何も覚えてない、目が覚めたら墓の中にいたと」

「魔法が効かないという勇者の刀があれば、どんな新種が現れても大丈夫だと思ったのですが…」

「少女はまだ十にも満たない小さな子供でした。遠く離れた賢者様の元なら安心だと思ったのです」

「見つけた者によっては様々な道具にされるだろうな…」

「すまんのう。わしのほうでも他のガンゼツの武器を探してみよう」

「ありがとうございます父上」


 とりあえずお兄様が怒ったりしなくてよかった。


「いいんだ、早速手配しよう。お前も疲れているだろう。また夕食の時にでも話そう。レイゼリアもそれでいいか?」

「はい。お父様」


 お父様がパンパンっと手を叩くと近衛兵達が手足を揃えてぞろぞろと謁見の間に戻ってくる。

 横についた近衛兵にお父様が耳打ちをすると、私とお兄様に一礼して謁見の間を出ていく。


「それでは父上、レイゼリア。私は一度、部屋に戻ります」

「うむ」


 お兄様が私の肩に優しく手を置いて、またあとでと呟いて謁見の間から去っていく。


「お父様。では私も失礼します」

「レイゼリア、急を要するかもしれん。一度エリュ殿に報告を入れておいてくれ」

「はい。文を出しておきます」

「うむ、下がってよい」


 一礼して謁見の間を出る。

 控えていたレーシャと一緒に部屋に戻り、文の用意をする。

 師匠がどこにいるのかわからないから賢者様の城に送っておこう。

 魔物の件、そのために王子が勇者の遺産を求めている旨、ナズナのためにも他のガンゼツの武器の情報があれば教えて欲しいことを書く。

 そしてアルセル王家の印で封をする。

 同じ内容の手紙をガンドルヴァルガ様と師匠へと二通用意した。

 机の奥にしまい込んでいたスクロールを拡げて陣の中心に置き、魔法石を取り出して魔力を流し込める。

 魔法陣が青く輝き、陣の中心に置いた手紙が光となって消える。

 これで賢者様の元へ手紙が移動したはずだ。

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