洞窟
目が覚めると、身体は重たく、右の脇腹はじんじんと痛み、全身の肌がピリピリとする。
息苦しさは治まったみたいだけど、起き上がる力はなく、力むと痛みが走る。
這うようにして、やっとの思いで鞄の元に辿り着き、緑色の薬の瓶を取り出して飲む。
全部飲むのは躊躇われ、半分くらい残しておく。
薬の効果か時間が経ったからか、ようやく起き上がられるようになり、水とドライフルーツを食べた。油っこいバンカンは今はきつそう。
横になってぼーっと身体を休め、また起き上がる。全身筋肉痛で右の脇腹はじんじんと痛み続ける。
見るのが怖くてケープを一度も脱いでない。
改めて、鎧の残骸を調べてみる。
黒煙となって消えた女の人はなんだったんだろう。
これはどこの鎧なんだろう。特に紋章や印みたいなものはないみたいだから何処かの国の兵士さんというわけではないんだろうか。
両手剣を拾って立てようとするけど、重い上に私の身長よりも大きく、上手く突き立てられない。
四つの鉄塊を階段状に出して登り、鎧の残骸の後ろに突き立て、階段を降りて手を合わせる。
腰に物を着け直し、鞄を担ぐ。
もう少し休んでいたいけど時間がさっぱりわからないから急ぐしかない。
奥の扉に触れるとゆっくりと開き、下からへと続く階段が現れる。
そういえば扉は魔法で動いているんだろうか。
素手で触って動くのかなという疑問が浮かぶけど、動かなくなったら大変なので好奇心を押し殺す。
角灯を灯し、暗い階段を歩き続ける。
段差を下りる度に脇腹に響いて痛い。
多分顔をしかめながらやっと階段が終わるとまた石の壁の扉がある。
手を触れるとガガガガガガと上に持ち上がる。
扉の先も暗いみたいだ。ひんやりとした空気が流れ込んでくる。
中に入ると照らされたのは、ごつごつした岩肌に、でこぼこの地面。時折怪しく光る結晶が岩肌や地面から飛び出している。
空気も少し肌寒いし、まるで自然の洞窟みたいだ。
とりあえず足元に気をつけながら進む。
少しうねうねとしていて自然の洞窟みたいな作りになっている。
視線を感じて斜め上の方の天井を照らす。
天井が高いのか真っ黒の中にいくつかの光が見える。石か何かに灯りが反射してるんだろうか。
途中、分かれ道を右に進むと部屋ような空間になっていて行き止まりだ。
魔物がいる様子も何かが置いてある様子もなくすぐにその空間を後にしてもう片方の道を進む。
また視線を感じた気がするけど、先ほどと変わらず真っ暗な天井に点々と光が見える。
前を向き直して進むとまた分かれ道。今度も右に進むとまた広い空間に出る。
光る結晶が多くあるようで部屋の中は他より明るい。
何もないけど地面には何か大きなものを引きずったような跡があり、でこぼこが少し滑らかになっているように感じる。
空間を出て、もう片方の道を通る。こっちの道も滑らかになっているように感じる。
ゴオーンという音が一度だけ奥から響いてくる。
魔物がいるんだろうか。ごつごつした岩肌で狭く感じて出さないでいた刀と盾を出し、更に身長に足を進める。
そしてまた分かれ道、何か物音がした気がして左に進む。
今度は左が行き止まりのようで、広い空間で何か大きな長いものが、光る結晶を丸呑みにする。
さっきの音は結晶を壊した音だったのかもしれない。
またひとつ、大きく口を開いて落ちた結晶を丸呑みにする。
蛇の魔物だ。私なんかはいとも容易く丸呑みできるだろう大きさの大きな蛇だ。
狭い通路で襲われなくてよかった。
白くなったら目立ちそうだと思いフードを被って、集中する。
下腹部から魔力を回す。流石に慣れてきたみたい。
角灯を消して、刀と盾を一度消す。ギリギリ真っ黒い巨体が見えるくらいの明るさはあるみたい。
普通の蛇なら洞窟は寒くて動けなくなりそうだけど魔物だから平気なんだろうか。
ゆっくりと気付かれないように大蛇へと近づく。
砕けた結晶の最後のひとつを丸呑みするために頭を下ろした時に首を斬って倒す。
出来れば半分ほどは斬れるといいけど、戦闘になる覚悟も決める。
大蛇が頭を下ろしてくる。
痛む身体に鞭を打ち、全力で身体強化をかけて大蛇へ一瞬で距離を詰めて跳び、そのままの勢いで居合のように刀を振り抜く。
勢い余って壁にぶつかりそうになり、咄嗟に盾を出して掴み、空中でふんばってぶら下がる。
どすんっという大きな音が鳴り、大蛇の首が落ちる。
斬れるとは思って無かったので、一瞬何事かと盾にぶら下がったまま固まる。
盾を放して地面に着地して、近づく。
大きな縦長の瞳孔がこちらを睨み、閉じた口をがばっと突然大きく開く。
心臓が跳ねて、その場で固まる。
しかし首と胴体が離れているのでそれ以上は何も出来ないのか大蛇の頭も固まる。
しばらくお互い固まり続け、大蛇がついに口を閉じて力尽きる。
私は一応頭を大きく迂回するようにしてその部屋を後にする。
けれど反動的なものなのか、右の脇腹が激しく痛み、大蛇の眠る空間にすぐ戻ってきて、一度休むことにした。




