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焦り始める

 ぱちっとすっきり目が覚める。夢は見なかったのか覚えてないのか。とりあえず頭は冴えていて、身体は軽い。

 部屋の中に二つあった黒い水溜まりは消え、小さな黒い水溜まりと大きな黒い水溜まりが新しく出来ている。食べられていた鹿の魔物と倒した大きな鹿の魔物のものだろう。

 取れた角はそのまま転がっているみたいだ。

 近づいてよく見ると、大きなまん丸の竜の魔物を倒した時に出てきた黒い結晶に似ている。もしかしたら同じ素材で出来ているのかもしれない。

 とりあえず鞄に刺しておく。

 角灯、ナイフ、ドライフルーツの入った巾着袋を腰につけ直し、空になった水筒は鞄に入れておいて、師匠の水筒の水を少し飲んで腰につける。

 しっかり眠って元気いっぱいで、早速部屋を出る。

 暗い通路を角灯の灯りを頼りにゆっくりと進んでいくと、しばらくして次の部屋の扉に辿り着く。

 今回は別れ道はなく、道なりに歩き続けただけだった。

 ドライフルーツを一粒食べて、扉の石の壁に触れる。今回もガガガガガガと大きな音を立てて壁が上へ持ち上がり扉が開く。

 部屋に入ると扉が閉まり、壁に等間隔に火の玉が灯り、敵の姿が浮かび上がる。

 大きな石の塊が二つ。最初の部屋で戦った石のゴーレムだ。

 二体のゴーレムが立ち上がる。私は鞄を下ろし、刀を脇に構えて左肩に盾を浮かせ、集中する。

 下腹部から心臓に、心臓から身体中へ、熱を張り巡らせる。

 床を蹴り上げ、左のゴーレムの懐へ一足で潜り込み、霞の構えから胸に刀を突き刺し、そのまま斬り上げる。

 膝から崩れ落ちるゴーレムを横目に、もう一体のゴーレムが突き出した左の拳を盾で受け止め、間髪入れずに振るわれる右の拳を避けて、

胸を突き、下敷きにならないように刀を消してすぐに下がる。

 小さな私を狙って前屈みになっていたゴーレムがうつ伏せに倒れ、ゴロゴロと音を立てながらバラバラのブロックになる。

 呼吸を整えて身体強化を解く。身体から熱が引いていくのと同時に強い疲労感に襲われる。

 前回のように息苦しくなる程ではないけど、その場に疲れてへたり込む。

 水を少し飲んで、ドライフルーツを一粒食べて少し休み、扉の側の鞄を拾う。

 食べ物はドライフルーツのおかげでまだ余裕があるけど、水の量が心配だ。

 飲み過ぎなんだろうか。

 でもそういえばトイレをしてないし、ちゃんと節約出来ているのでは?

 それともむしろ摂取が足りなすぎるということなんだろうか。

 今のところは体調も生理現象も平気だけど、したくなったらどうしよう。

 みんな通路とかで用を足してるんだろうか。

 師匠から森での仕方は教わったけど迷宮や遺跡でどうするかは教わっていない。盲点だったかもしれない。

 とりあえず飲み水のことを考えるとゆっくりしてる暇はない。

 立ち上がり、部屋を出て先へと進む。

 今までの真っ直ぐな通路と違い、目の前に壁があり、左横へと通路が広がっている。

 途中右へと進む通路があり、曲がらずに真っ直ぐ進んでみると、左側に扉が現れ、試しに触れてみても何も反応しない。

 左の道を選んでもここに辿り着いたということだろうか。

 だとするとさっきの別れた通路の奥にはボス的な奴がいるかもしれない。

 来た道を戻って、今度は曲がって通路に入り、奥へ進む。

 長い通路の先に今までのものよりも一回り大きな扉が現れる。

 すぐに中に入ろうと、手を伸ばし、急いで手を引っ込める。

 しっかり休んでからにしよう。

 隅に腰掛け、角灯の灯りを見つめる。そういえば、油が無くなると使えなくなってしまう。

 やっぱり急いで奥へ進まないといけないかもしれない。

 鞄と角灯を持って立ち上がり、覚悟も決まらぬまま、漠然とした焦燥感で扉に触れる。

 今までの扉と違って中央に真っ直ぐな亀裂が入り石の壁が両開きに動く。

 中に入るとゆっくりと扉が閉まり、円形の広間の壁に等間隔に火の玉が灯る。

 正面には入ってきた扉に似た大きな扉。

 そしてそれを守護するかのように、床に刺した剣の柄に両手を置いて立つ、銀色の鎧の姿がある。

 真っ黒じゃないから魔物ではないと思う。ゴーレムなんだろうか。

 縦に三本の筋の入った頭部の全てを覆う銀色の兜には穴も隙間もなく、首や関節の隙間からは鎖帷子が見え隠れする。

 生気は感じられず、まるで置物のように見える。大きさは二メートルは超えてるだろうか。

 剣は飾り気が無く武骨で、お姉さまのような洗練さはないけど、とても頑丈で強そうな両手剣に見える。

 中身は人ではないと思う。

 でももし人だったらという考えが頭を埋め尽くしそうになる。

 それでも斬らなければならない。

 一切動かない鎧を見て、待っていてくれるならと、鞄を下ろして角灯を消して鞄の横に置き、腰に着けたものを外して、床に置いておく。

 ナイフだけは念のために腰に着けたままにしておく。

 刀を構えるともう自然と死角を守るように盾が現れるようになってきた気がする。

 武器に反応したのか、魔力に反応したのか、鎧の剣士が床に刺さった剣を抜いて構える。

 恐怖を必死に飲み込んで鎧の剣士と対峙する。 

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