少し休憩
「レイゼリア、これガンゼツさんがレイゼリアにって」
勇者が赤髪のレイゼリアに何かを手渡す。
「これは指輪?」
「失敗した奴だけど綺麗だから勿体ないと思って指輪にしたんだって」
「綺麗。角度によって青く見えるのね」
「この刀や盾と同じ素材だけど、魔法を弾けないただの鋼だから戦闘には使えないけど良かったらって」
「そう…後でお礼を言わなきゃね。けどじゃあやっぱり魔法が効かないのはあなたの?」
「そうみたいだ」
「けど他の武器にはユウキの魔力は宿ってないわよね?」
「他のは斬れるだけで、魔法が消えたりはしないらしい」
「斬れるだけで十分おかしなことにガンゼツさんは気づいてないのかしら…」
「この盾がもっと作れたら、みんながもっと助かるはずだって。俺の魔力無しに再現出来ないか試行錯誤を続けてるみたいだよ」
「そう…」
レイゼリアが遠い目をする。何を思っているんだろう。
「二人とも!そろそろ行くってー!」
「ユウキ、先に行ってて!私はガンゼツさんに挨拶してくるから」
「わかった。村の入口で待ってる」
赤い髪を靡かせてレイゼリアが離れていく。
振り返ると四人の子供達が立っている。
「ねえ、みんな…さっきはなんで返事をしてくれなかったの?」
相変わらず真っ黒で表情はわからない。
「もうわかってるでしょ?」
耳元で声がした気がして飛び起きる。
「わかってるって何のこと…?」
お姉さまの水筒の水を飲み、一息つくと身体がぶるっと震える。ちょっと寒い。
まさかまた汁まみれになったんじゃないかと、ケープを脱いでシャツとパンツをぺたぺた触って確認する。
少し湿ってる気がするけどびしょ濡れというわけじゃない。普通に汗をかいた程度だ。
ケープをつけ直す時、首にかけた指輪を見て、これは赤い髪のレイゼリアのものならかなり貴重な物なのではと、ふと何とも言えない不安に襲われ、それ以上考えないことにする。
眠ったからか少し身体が重い気もするけど、大丈夫だろう。
ここなら安全かもしれないと思い、コーネルさんの鞄から何かわからなかった物を出す。
何かの種、何かの粉、何かの瓶。
種は大きな楕円形で縞模様がついている。師匠が前にコーネルさんに持たせていた奴みたいに私の場所が師匠にわかったりするんだろうか。
粉は油脂に包まれていて、開いて見ると結構細かい。塩とか砂糖ではなさそう。匂いも特にしない。
瓶は改めて良く見ると何か見たことある気がする。
木の蓋を開けて匂いを嗅ぐ。緑色の薬だ。
何の怪我に効果があるのかまではわからないけど、もしも酷い怪我をしてしまった時に飲もう。
今のうちに一度しっかりご飯も食べておきたい。チーズと保存食のバンカンと塩漬け肉を並べたところで、器も鍋も薪も無いことに気づき、諦めてバンカンをナイフで切ってそのまま食べる。
そろそろ進まないと。
一応、入ってきた扉に触れてみるけど、反応しない。
ゴーレムだった石達を迂回して向かいの扉の前に立ち、手を触れる。
ガガガガガガと大きな音を立てて石の壁が開き、部屋を出る。
刀と盾を出し、角灯の灯りを頼りに暗闇を進む。
道なりに進んでいくと、また道が左右に別れる。
考えたところで意味がないと思い、また右を選ぶ。もう全部右に行こう。
そしてまた扉の前に辿り着く。次も何かと戦うことになるんだろうか。
魔力は回復出来てるのかな。どう確認したらいいのかもわからない。
へその下に手を当てて、熱を探してみる。
体温とは別の不思議な熱、一度使った後だからなのか、なんとなくだけど感じ取れる。
さっきほどはっきりと感じとれないのは、まだそんなに回復していないってことになるんだろうか。
しっかり眠れる自信はないけど、眠るしかない。中でまたどんな敵が待ち構えているかわからない。
扉の横の隅に膝を抱えて座り、刀と盾を消して、角灯も消す。
真っ黒で何も見えない。出るかもしれない魔物にも何も見えないことを祈る。
指輪を握り締めながら目を瞑る。
緊張で眠れる気配はない。でも目を瞑ってじっと座り、刀も盾も出していなければ少なくとも身体は休まるはずだ。
一人で勝手に入って閉じ込められて師匠怒ってるだろうな。
お姉さまとコーネルさんも怒ってるかもしれない。
リネはまた置いていかれたと思って泣いてるかもしれない。
なんで入口が石の壁で塞がれていたんだろう。
師匠はこんなの無かったって行っていたし、あの様子では壁なんか無くても入れる人なんていない。賢者と呼ばれるすごい人らしいガンドルヴァルガさんでも無理だったというなら尚更だと思うし、そういえばリネは近づくのも嫌だったのか、入口に入らなかった。
あのまん丸の竜の魔物は森みたいなところから飛んで脱出したんだろうか。
けど四角い板がちゃんと上にあったなら穴は塞がっているから外に出てこれない。
私が降りた後どうなったかちゃんと見ておくんだった…。
眠れなくて、延々とあることないことを考えては気持ちが沈む。
このままじゃいけないと思い、立ち上がって大きく伸びをして、へその下に手を当てて集中する。さっきよりも熱を感じる。
少なくとも身体は休めた。角灯に火を灯して鞄を担ぎ、石の壁の扉に触れる。
大きな音を立て、扉が開く。




