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身体強化

 また入口が塞がったりしないか見張りながら、コーネルさんを休ませる。

 コーネルさんはお姉さまの膝の上で眠っている。

 リネも丸くなって寝ている。


「ミーティア、さっきのは何だったの?」

「魔力で身体を強化したのよ。魔族や魔法使いみたいにね。いつもは私と二人がかりで使っているからちょっと疲れる程度で済むんだけど、一人だと反動が大きかったみたいね」

「魔法使いはあんまり使わないわよ」

「それって私もできるんでしょうか?」

「まずは魔力を感じ取れないと難しいわね」

「そうですか…」

「私みたいな生まれつき魔力のある亜人族や魔族は無意識に使ってることの方が多いのよ。コーネルのような魔力のない人族は魔力を体内に流して行き渡らせることで身体を強化するけど、既に魔力があるのが普通のナズナは魔力を一時的に高めることで身体を強化する必要があるわ」

「魔力を高める…」


 どうやればいいんだろうか。


「例えば外部から魔力を取り入れたり、体内に貯めておいた魔力を使ったり、武術家は体内の魔力を気と呼んで流れを操ることができるそうよ」

「とりあえず魔力を感じられないと始まらないってことですね…」

「そうなる」

「エリュがナズナに魔力を送ってあげてみたらいいんじゃないのかしら?」

「残念だけどあなた達がやっていることはかなりの荒業よ。お互いの魔力が混じるようなことはとても危険なの。安全ならとっくにやってあげてる」

「もし別の人同士の魔力が混ざってしまうとどうなるんですか?」

「魔法が使えなくなったり、身体に異物感を覚えて慢性的な痛みを感じる場合もある。少しなら時間が経つと治ったりもするけど酷いと治らない」

「リリクラに魔力を渡せたのはどうやってですか?」

「使い魔として契約しているからよ。魔法で見えない繋がりのような道のようなものが出来ていて、そこを通してお互いの魔力の形に変換することで混ざる危険を防いでるのよ。ベルナドーシカという竜が人間に力を貸すために作ったと言われてる」

「ん?使い魔って人間と契約して魔力が上がるのではなくて?」

「違う。使い魔と契約することで人の魔力が上がる。魔法生物の方が元々の魔力が多い場合がほとんどだもの」

「竜が力を貸すため、というのは魔力をその人に与えるためだったということですか?」

「そうよ。一人の王が戦争を終わらせるために神竜ベルナドーシカと試練の果てに出会い、彼と契約して力を授かり戦争を終わらせて平和を築いたっていう話、ずっと西にある神竜王国の伝説よ」

「すごい話だな」

「コーネル!もう平気?」

「ああ、大丈夫だよ」


 コーネルさんが起きて身体を起こす。


「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だよエリュさん。ちょっと身体がびっくりしただけだよ」

「わかった…じゃあ早速行きましょうか」


 リネがすっと立ち上がる。起きてたんだろうか。お姉さまが剣になってコーネルさんの背に納まる。

 迷宮、落とし穴とか矢が飛んでくるとかあるんだろうか。

 ゆっくりと入って進んでいく。


「ナズナ!」


 呼ばれて振り返るとみんな何故か入口で止まっている。


「どうしたんですか?」


 みんな見えない網か何かに捕まった様に入口でもがき、押し戻される。


「前もこれで入れなかったのよ」


 とりあえず刀出して振り回してみる。


「ダメね…このまとわりついて、跳ね返してくる見えない壁が……ナズナなら通れるっていう予測は当たったみたいだけど…」

「師匠、失礼します…」


 腕を掴んで引いてみるけど、弾力のようなものを感じて中に引き込めない。師匠の顔が少しずつ見えない何かに阻まれて頬が片方凹む。


「ごめん…ナズナ放して…」

「すみません…」


 急に放すと師匠が飛んでいってしまいそうで手を引いて一緒に外に出る。


「てっきり何かの魔法か結界みたいなものでナズナが触れたら解けると思ってた…」

「こんなの初めてだ」


 ふと私はきっとこのために生まれたんじゃないだろうかと考える。


「師匠、少し先を見てきます。何か仕掛けとかあるかもしれません」

「待ちなさいナズナ!」

「ちょっと奥を見てきたらすぐ戻ってきますから!」


 師匠の静止を振り切って迷宮に入る。

 リネとお姉さまが不安そうにこちらを見つめる。


「いってきます!」


 中に入って角灯に火打石で火を灯す。

 綺麗に磨かれた石の壁に天井に床、入口から奥に進んでいくと光源も無いのに少しずつ明るくなってくる。

 壁に囲まれた真っ直ぐな通路だけど外にいるみたいな明るさをしている。奥には開けた部屋のような空間があり、殺風景な部屋の中央だけ段差がついて四角い形に浮かび上がっている。

 とりあえず何か起きそうだから段差には上がらず、周囲をぐるっと歩いてみるけど他には何もない。

 敵も罠もなく、少し拍子抜けだけどみんなが中に入れない状況は変わらない。

 とりあえず戻ろう。

 来た道を戻っていくと今度はどんどん暗くなっていく。天井にも何もないのに不思議だ。

 角灯の光を頼りに暗闇を進む。こんなに暗くはなかった気がする。

 何かを蹴飛ばして下をよく見ると、床に石ころが転がり、木の枝が落ちている。中に入れるものを実験してたんだろうか。コーネルさんの持っていた大きな巾着袋みたいな鞄まで転がっている。

 そして暗かった原因に辿り着く。

 石の壁だ。


「そんな…」


 手袋を脱いで触れるとうっすらと手の跡がつく。さっきの壁だ。

 閉じ込められた。

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