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手紙

 師匠とナズナへ


 怪我は大丈夫でしょうか?二人は仲良くしていますか?あんな出会いになってしまって正直戸惑っていると同時にナズナに申し訳なく思っています。

 師匠にも何か考えがあってのことかと思いますが、二人の仲が悪くなっていないことを願うばかりです。

 こちらはナズナが突然いなくなったことで少し大変でした。賢者の杖が一緒ならと皆さんなんとか引き下がってくださいましたが、レーシャとクリフトはとても残念がっていました。

 そしてこの手紙を読んでいるということはリネ様がそちらにいらっしゃるかと思います。

 リネ様は毎日森を探し回り、夜には遠吠えをし続けました。かつて勇者様にまだ幼いからこの先の戦いに連れていけないと森に置いていかれたと聞いていたので、伝え聞いた勇者の姿に似たナズナが突然消えてしまったことはとても堪えたようでした。

 見かねた私はこの手紙をリネ様に預け、賢者の城の方角を教えて自由にさせることにしました。ナズナ、リネ様のことをよろしくお願いします。

 最後に師匠には今年出来たばかりのワインを、ナズナには友人の印として指輪を入れておきました。今度は王都で会えることを楽しみにしています。


              レイゼリアより


 レイゼリアさんは私のせいで忙しくしているんだろうか。元気だといいな。

 師匠が手紙を読み終えると手紙の入っていた筒を逆さにする。

 すると指輪がころんと出てきて、その後に瓶が出てくる。筒の口と瓶の幅が合ってないのにどうやって入れてどうやって出てきてるんだろう。


「ふぬ…どんな出来か楽しみね。はいこれ」


 指輪を手渡され、着けてみるけどぶかぶかだ。


「後で丈夫な紐に着けてあげるわ」

「ありがとうございます」


 一度師匠に指輪を返す。


「とりあえず戻りましょうか」

「はい、行こうリネ」


 リネが嬉しそうに尻尾を振ってくれる。

 師匠がまた魔法で藪に道を作ってくれて、森を抜け出ると、コーネルさんが知らない男と話をしているようだ。絡まれやすいんだろうか。

 お姉さまは剣になってコーネルさんの背にいるからあまりいい雰囲気ではなさそう。


「私達に何か用?」

「こいつが馬車に乗せろってうるさくて」

「ハシュ村まで乗せてってくれたら金を払おう」

「無理ね。私達そこから出てきたばかりだもの。戻る気はないわね」


 あの大きな村ってそんな名前だったんだ。


「金なら払うって言ってるじゃないか」

「じゃあ今払いなさいよ」

「送ってくれたら払うって言ってるだろ!」

「論外ね。リネうざいからこいつ食べていいわよ」


 リネが私の顔を見上げるので小さな声で、大きくなって脅かしてと伝える。


「リネおやつだって」


 身体がぐんぐんと大きくなったリネが牙を剥き出しにして唸り声をあげる。


「おい冗談だろ…」


 固まる男にリネがゆっくりと顔を近づけ、丸呑みにする勢いで大きく口を開けると、男はひっと短い悲鳴をあげて倒れる。


「リネありがとう、もういいわ」


 リネが身体を小さくすると私はいっぱい撫でてあげる。


「よかったんですか?」

「ええ、怪しすぎるもの。コーネルこいつ隅にでも投げといて」

「わかったよ」

「ふー黙ってるの疲れたわ」


 お姉さまが変身を解くとコーネルさんが男の足を持って雑に隅に引きずる。


「起きる前にさっさと出発しましょう」


 師匠に言われるままリネと一緒に馬車に乗る。

 ポールとトールは布が被せられてたお陰か大丈夫そうだ。

 馬車が動き出し、少し揺れる。


「さっきの男のどこか怪しいか、わかった?」

「いいえ…」

「まず身綺麗過ぎたこと、靴まで全く汚れてないのは変ね。後は着いてからお金を払うしか言わなかったことも変ね。もしお金を盗られたなら今は無いって言うんじゃないかしら」

「あとあと商人ならエリュの正体に気づいてもよかったと思うわ」

「そうね。ミーティアの言うことも一つ。もしかしたらただプライドが高いだけの男だったのかもしれないけどそれはそれよ。ナズナ、ほいほいと可哀想とか思って騙されないように」

「はい…気をつけます…」


 師匠が穴に手を突っ込んで水筒を出して水を飲む。


「ねぇ、それで迷宮まで直行できないのかしら?」


 確かに穴を通って行けたら一瞬で着く。


「私一人なら行けるけど四人通るのは無理ね。他人を通すにはかなり負荷がかかって魔力の消費が大きくなる。一人くらいならいいけど向こうでしばらく魔法が使えなくなるのは危険だからね」

「もしかしてフィシェルさんが暫くお城にいたのって…」

「多分そうね。長距離と更にナズナを運んだので魔力を使いすぎて休んでたのかもしれないわね」


 フィシェルさんに今度会ったら改めてお礼を言おう。


「ねぇその子がリネなのかしら?」

「そうですよ」


 私の足元で丸くなるリネの耳が動く。


「疲れてるのかもしれませんね」

「海を渡ってきたって考えるとそうかもしれないわね。寝かせておいてあげましょ」

「そうですね」


 馬車に揺られてどれだけ時間が立ったのか、途中師匠が賢者の城から貰ってきたサンドイッチを昼食に食べながら進むと遂に森から離れ、左右の窓の外には広い平原広がっていた。

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