首輪
「ナズナ?そんなにそわそわしなくて大丈夫よ?きっとエリュがどうにかしてくれるわ」
「そんなにそわそわしてました?」
「してたわ」
そんなにそわそわしてただろうか。恥ずかしい。
コーネルさんは一応街道の方を見張っていて、私はお姉さまと馬のお世話をしている。
と言ってもブラシで身体を擦ってあげてるのはお姉さまで、小さな私は見ているだけだ。
「なんか手持ち無沙汰で…」
「ナズナじゃ上の方まで届かないから仕方ないわ」
「あっいいこと思いつきました」
盾を出して上に乗る。
「これならどうですか?」
「いいわね。じゃあこれでポールをお願いするわ。私はトールの方ね」
「はいお姉さま」
お姉さまがブラシを渡してくれて、それを受け取りポールの身体を擦ってあげる。
換毛期なのか、長い毛がブラシにたくさん絡まるけどポールは気持ち良さそうだ。
「ねぇそれどうやって浮いてるのかしら?」
「盾ですか?」
「そう!私も出来るのかしら…無理みたいね」
ぽすっとお姉さまが出した剣が地面に落ちる。
「私も刀では出来ないからよくわかんないんです。どうやって浮いてるんでしょうか」
刀を宙に出してみるけどそのままぽすっと地面に落ちる。
「ナズナが操ってるんじゃないの?」
「一応そうですけど」
勝手に出たりもするからまだよくわからない。
「触ってみてもいい?」
「いいですよ」
お姉さまが宙に浮いた盾を少し押すけどびくともしない。
剣で叩かれても動かないしそう簡単には動かないだろう。
「やっぱり触るとちょっと気持ち悪いわ…」
「その気持ち悪いってどういうことなんでしょうか?私は触っても何も感じなくて」
「ぞわぞわ~っとしてなんかくすぐったいみたいなそんな感じがするわ」
「コーネル?今大丈夫?」
「こっちは平和そのものだよ。どうした?」
お姉さまに呼ばれてコーネルさんが馬車の近くにくる。
「コーネルはナズナに触って何か感じる?」
「何も感じないよ。ほら前に武器に変身できるか試しに手を握ったろ?」
「そういえばあの時は手袋をしてました。失礼します…」
盾から降り、試しに手袋を脱いでコーネルさんの手にそっと触ってみる。
「普通の手だよ」
「試しに盾と刀も触ってみてもらっていいですか?」
刀を出して地面に突き立てる。
コーネルさんが盾に手を置いて、ポンポンと叩く。なんとも無さそうだ。
そして刀を抜く。
「盾もなんともないし、刀も初めてだけどなんともないよ。エリュさんなら魔法使いだし、ミーティアと同じで変な感じがするかもしれないけど、俺にはさっぱりだよ」
「魔力とやらが関係してるのかしら?」
「多分…」
三回程素振りをして地面に突き立てる。
「エリュさんもそろそろ戻ってきてもよさそうだけどまだみたいだな」
「今戻ったわよ」
「っびっくりしたぁ…」
「あなたに持たせっぱなしだった種を目印に戻ってきたから」
「なるほど…」
いつの間にか師匠が現れる。
「師匠に貰ってきたわよ。隷獣の首輪よりも安全なやつ。リネの大きな姿を誰かに見られるとめんどくさいから森で着けてから連れてきましょう。ナズナ行くわよ」
「はい!」
宝石の付いた輪を持った師匠と一緒に森へ入っていく。
賢者の城の回りと違ってかなり枝や藪だらけで進みにくい。
「思ったより歩きにくいわね」
師匠が杖を出して掲げると藪が左右に別れて道が出来る。そんな魔法があったなら初めから使って欲しかった。口には出さないけど。
藪を抜け出たところで、師匠がきた道を閉ざして隠す。
「呼んであげなさいナズナ」
「はい。リネー!どこにいるー?」
ざざっと音がして奥からゆっくりと姿を見せてくれる。
「私はナズナの師匠のエリュ。この子と一緒にいたいのなら私の言うことを聞いて」
リネが師匠の前に伏せると、リネに持っていた輪を見せつける。
「これは家族の首輪。貴族達がペットに着けるものだけど、隷獣の首輪と違ってあなたの魔力を封じたり、力を奪ったりする力はないから安心して。これを着けたらあなたは身体を小さくできるようになるわ」
すんすんと匂いを嗅いだ後、再び伏せてじっとする。
「いい子ね。じゃあ着けるからそのままじっとしてて…………あなた何かもう着けてるわね。ナズナに当たりにくいようにやっぱり尻尾にしましょうか」
私に当たりにくいようにってことは魔法道具だろう。触らないようにしよう。
リネは師匠の言うことを聞いて後ろを向いて座る。
「後ろを向いて座ってくれるだなんて言葉が通じるだけじゃなくて頭もいいのね。尻尾の付け根に着けやすい……よし着けたわ。魔力を込めて小さくなってみて」
こちらを向いてじっとしたかと思うとゆっくりと身体が小さくなっていき、普通の狼くらいの大きさになる。私や師匠を背に乗せても平気そうではあるけど。
身体の大きさが変わり地面に落ちている首に着けていたリボンのような紐には何かがくくりつけられているみたいだ。
リネがそれを咥えて、私と師匠をチラチラ見る。
「一応私が預かるわよ」
師匠もリネが迷ってるのに気がついたようで声をかけると師匠元に行って咥えていたものを渡す。
「手紙ね…読んでみるわ」
私はリネをわしゃわしゃしながら師匠の声に耳を傾ける。




