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お尻が痛い

「師匠!コーネルさん!昨日はごめんなさい!」


 箱形の馬車に乗る前に私は二人に頭を下げて謝る。


「別に怒ってないわよ。けど覚悟は出来たってことでいい?」

「いいえ…でも次は迷わず斬ります。師匠やコーネルさんやお姉さまに傷付いて欲しくないから…」

「そう…今はとりあえずそれでいいわ。ほら、早く馬車に乗りなさい」

「耳赤いわぁ」

「ミーティア怒るわよ」

「照れなくていいのに」


 コーネルさんが御者をし、馬車に師匠とお姉さまと私が乗り込む。


「街道が出来たおかげで迷宮のある渓谷の近くの村まで楽チンね」

「もしかしてガンドルヴァルガさんが作ったりしたんでしょうか?」

「ナズナよくわかったわね」

「え?本当なんですか?」

「迷宮の調査に行き来しやすいように長い時間をかけて整備してきたのよ」

「そうだったんですね」

「まあ遅くても一月もすれば迷宮に着く予定よ」


 馬車に揺られながらのんびりとした時間が流れる。

 ただ、きれいに舗装されてるように見えても結構揺れる。お尻が痛い。


「意外と揺れるんですね…」

「これくらいは全然マシな方よ。まさか酔った?」

「いえ、ちょっとお尻が痛くて」

「ミーティアは痛くなさそうね」

「なんか含みがないからしら?私だってお尻痛いわ」

「…ちょっと待ちなさい」


 師匠が三角帽子を脱いで中に腕を突っ込む。


「あれ…確かここら辺に…あったあった」


 師匠が腕を帽子から出すと後に続くように、もこもこと大きな綿が出てくる。それを私とお姉さまに一塊づつ渡して、自分の分も出すと綿の上に座る。


「クッション代わりよ」


 真似して座ってみるとさっきよりかなりましになる。


「師匠、ありがとうございます」

「うん、いい感じだわ」


 コンコンコンと前方の壁が叩かれて、しばらくすると馬車がゆっくりと止まる。


「コーネルも欲しいのかしら?」

「ちょっと話を聞いてくるから二人は座ってなさい」

「わかりました」

「はーい」


 師匠が馬車の扉を開けて外に出る。


「どうしたんでしょうか」

「冗談抜きだと魔物か盗賊か別の馬車が故障して邪魔になってるとかいろいろ考えられるわね」


 扉が開いて師匠が戻ってくる。


「大丈夫でしたか?」

「ええ、ちょっと馬車が立ち往生してたけど退かしたからもう大丈夫よ。けど馬が何かに怯えてる。何か出るかもしれないから念のためにミーティアはコーネルといて」

「わかったわ」


 お姉さまが外に出て、少し間が空いて師匠が中に入る。


「ポールとトールも怯えているんですか?」

「よく馬の名前覚えてたわね。そわそわしてる感じがあったから、とりあえずナックムの実をあげて機嫌を取っておいたからとりあえず大丈夫よ」

「そういえばリリクラは大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。生え変わりの時期が来たの。終わったらまた元気になるわ」

「よかったです。しばらくずっと眠たそうにしてたから」

「心配してくれてありがとう。そうだお昼にしましょ?さっきミーティアにもコーネルの分と渡しておいたから」


 包みを取り出して、一つを私にくれる。

 開いてみるとサンドイッチのようだ。


「いただきます」


 燻製肉と葉野菜に辛いタレが入ってるみたいだ。口の中がちょっと痛い。


「そういえば師匠って、先生とかならまだしも別にナズナに師匠って呼ばれるほどのことはしてないと思うんだけど。私がしたのはあなたの体力作りくらいだし」

「いろんな植物のこととか野営の仕方とか水の探し方とかも教えてくれましたよ?それとも嫌でしたか?」

「嫌ではないけど、魔法を教えてあげれた訳でもないし、私のプライドの問題かしらね…師匠らしく何か教えてあげられることがないか考えておく」

「ありがとうございます」


 サンドイッチを食べ終えると師匠がいつの間にか水の入った木のコップを用意してくれていて、ありがたく飲み干す。


「はいこれ。一応持っておきなさい」


 膨らんだ巾着みたいなものを渡される。


「これはなんですか?」

「水筒よ。忘れないうちに渡しておこうと思って」

「ありがとうございます」


 これで腰にはナイフと水筒と非常食のドライフルーツが揃った。


「ねぇなんか声がしなかった?」

「いえ何も聞こえませんでしたけど」


 腰に水筒を結んでたから何かを聞き逃したんだろうか。


「コーネルも叩いてこないし気のせいかしらね。まだ先は長いから寝ててもいいわよ。眠たくなかったらこれでも読んでおきなさい」


 師匠に綺麗な本を渡される。

 魔物図鑑と書いてある。


「魔物は魔力の多いところに出やすいって言われているわ。洞窟や遺跡や迷宮のような閉鎖的な場所は空気が淀んで魔力が溜まりやすいから魔物が多い言われてる。図鑑に乗ってるのほんの一部だけど一応覚えておくといいわよ」

「わかりました」


 眠たくはなかったので早速開いて読んでみる。

 挿絵に名前と発見場所、魔物の行動などが詳しく書いてある。

 狼みたいなものや魚みたいなものに、鳥や蝙蝠みたいなものまで様々だ。共通の特徴はやはり黒くて硬いということみたいだ。

 途中、全然内容が書いてないページを見つける。

 蝙蝠のような翼の生えた悪魔のような竜のような人型の魔物の挿絵に見つけたらすぐに逃げろとだけ書いてある。

 少なくとも凄く強くて危ない奴ということは読み取れた。

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